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日出づる国、異世界に転移す  作者: ワイアード
第6章 幻狼会編
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第104話 幻狼会の企み

近日、イラスト投稿の予定です。

ーー日本国 東京都内 某所



深夜にも関わらず賑わいを見せる東京都は、好景気に浮かれた人々で溢れかえっていた。


しかし、日本の都市でも少し外れた郊外へ出れば、同じ東京都とは思えない程に静かな場所となる。


そんな郊外の中でも特に人気の少なく、地元の人でも近づく事が殆どないこの廃工場内に数十人の人影が集まっていた。そこに集まっていたのは、幅を利かせている不良グループ達であった。


しかし彼らは喧嘩しに来たわけではない。


紹介を受けてここに来たのだ。



「おい、まだ来ねえのかよ。」


「しらねぇよ、黙ってろ。」


「あー腹減ったァ。」


「ションベンしてぇんだけど。」



下らない雑談をしながら待っていると、数人の黒スーツを着た男達が現れた。



「皆さん、お待たせしてしまって申し訳ありません。」



1人のスーツ姿の男が声を掛ける。全員が彼に注目した。



「私は『小山田おやまだ』と申します。本日は誠にー」


「おいおい、小山田さん…だっけ?…コッチは何十分も待ってたんだゾ?長ったらしい挨拶は抜きにしようや。」



1人の男性が小山田の挨拶を中断し割って入ってきた。



「さっさと聞かせてくれよ。そのゼニまみれになるって話をよう。」


「コッチはソレが楽しみで来とんじゃ!」


「しょうもない話やったらブチ殺すぞ!」



彼の発言がスイッチとなり、段々と喧騒が増してきた。しかし、小山田は特に焦る事なく話を続けた。



「分かりました、では簡潔に言いましょう。私たちは今ではとても貴重な商品を取り扱って、それを顧客に売っているのです。皆さまにはその販売の手伝いをして頂きたいのです。」



周りがざわつき始めた。こんな不良グループを使った販売などまともではない事に全員が理解した。



「その商品ってのはなんだ?」



1人の質問に対し小山田はゆっくりと答えた。



「シャブですよ。大麻、覚せい剤、コカインが主ですね。」



シレッと答えたその内容に不良達は驚いた。



「シャブを売れってのか?」



不良達のざわつきが次第に大きくなった。小山田は手を上げてその喧騒を鎮めていく。まるでオーケストラの指揮者のように。



「落ち着いて下さい。関東の中でも指折りの悪である皆様方が『シャブ』を扱ってないわけないでしょ?何をそんなに騒めくのですか。まさか…臆しているので?」



そこへ1人が前に出てきた。



「お、俺たちもイジって無えわけじゃない。でも今俺たちが扱ってるのは素人でも作ろうと思えば作れるちっぽけなハーブの類だ。」


「今までは中央アジアや中東、東南アジアのルートから仕入れたモノが殆どだったからな。覚せい剤や大麻、コカインは……価値は転移前の10倍以上になってる。」


「ここには同じ様な葉っぱが無えからな。」


「警察の目を誤魔化しながらだと、生産するのも難しくてよゥ。」


小山田は鼻で笑った後に答えた。



「であれば、国は本物の裏組織までは探れないという事ですよ。大麻。覚せい剤にコカインなどの元となるモノは私たちが多量に徹底管理しています。今この日本でそれだけの違法薬物を持っている裏組織は我々だけです。だから、この貴重品を売り出す事で莫大な利益を産もうと考えているのです。」


「ぐ、具体的にはどのくらいだよ?」



恐る恐る質問する。超が付くほど貴重品となっている麻薬を売り捌くとなると、一体どれほどの利益を得ることになるのか、強い興味があった。



「上手くいけば『億』は下らないでしょうね。」


「「ッ!!!」」



小山田がサラッと話した言葉に全員が驚愕した。一端の不良チーム風情が億単位もぼろ儲けが出来る事に周りからは興奮の声が上がる。



「さてと……皆さまの様子からして断る人はいませんね。では先ず各グループに1㎏ずつ渡しますので、しっかりサバいて来てくださいね。」


「「ハイ!!」」



金にしか目がない荒くれ達に小山田はニヤリと怪しく微笑んだ。



ーーー

ーー

ー日本国 某所



先ほどとはまた別の場所。人っ子一人いない荒れ果てた公園荒地にも十数人の不良グループが集まっていた。


そして、彼らに何やら説明をしている黒スーツの男がいる。



「そうだよ。思いっきり暴れたれや。犯罪にしか興味が無いお前らにとっては願ってもねぇ事やろが。」



ニヤつきながら話をしている黒スーツの男。不良グループ達は興味深そうに聞いていた。



「本当に好き勝手やってもいいんだな?長田ながたさん。」



不良グループの1人が長田と呼ばれる黒スーツの男に質問をした。



「もうじきこの地域の警察は機能しなくなる。万が一、警察に絡まれたらここに連絡してくれよ。俺たちが軽くあしらってやるからよ。」



長田は一枚の紙切れを男に手渡した。



「もっと仲間集めて来い。ほんでもって、今までくすぶって来た鬱憤を晴らしてこい。」



ーーー

ーー


日本国 某駐車場


人気の少ない裏路地の小さな駐車場。

その中にポツンと一台だけ止まっている車内にて、黒スーツの男とチンピラ風の男が会話をしていた。



「待たせたな、商品のシャブだ。」



黒スーツの男から袋を手渡されたチンピラは中身を確認する。袋の中には紙に包まれた両手程の大きさの塊が一つあった。



「へへ、アザーッス!」


「確認してみるか?ニセモノかも知れねえぞ、小麦粉とかよ。」


「いいんですかぁ〜〜?そんな事言って?その時はこれっきりにしてー」



すると黒スーツの男の顔が怒りに変わっていく。



「あん?」



黒スーツの男はチンピラの胸ぐらを掴み上げる。



「テメェ…何調子こいてんだ?」


「あ、いやぁ…その…。」


「別にテメェがやりたくねぇって言うんならそれでもかまわねぇんだぜ。俺たちと取引したい奴らは他にもたくさん居るんだからよ。」


「す、すみません……。」



黒スーツの男はチンピラを突き飛ばす様に手を離した。



「ったく、クソ日本人が。調子に乗りやがってよぅ……」





ーーー

ーー

日本国 某所 廃カラオケ店


某街中の裏路地に存在する小さなカラオケ店。そこは何年も前に潰れてから、取り壊しが行われる事なく放置されていた。


中にはまだ使えるテーブルやら椅子やらが残っている為、地元の不良グループにとっては絶好の溜まり場であった。


そこでは地元の不良達と一緒に酒を酌み交わしている1人の黒スーツの男がいた。



「どんどん盗んだれ。人の家に押し入ってよ…車にバイク、金目のもんはなんでもや。あと、中小企業とかが使ってる倉庫もだ。アレこそ宝の山よ。」



この話を聞いていた不良達は目を輝かせながら頷いた。



「任せてくれ!」


「やってやりますよ!!!」



この反応を見た黒スーツの男はニヤリと笑う。



「よーし、ジャンジャン盗めよ。全部俺たちが金に変えてやる。」





ーーー

ーー

日本国 某埠頭


夜の海を薄っすらと光る月が照らしている。


使われているのかいないのかも分からないコンテナが無駄に綺麗に積まれているこの場所では、黒スーツの男と身なりの良いスーツ姿の男性が話をしていた。



「おい、橋本さんヨォ…もう一度言ってみな。」



黒スーツの男が橋本と呼ばれる男性に詰め寄る様に睨みつける。



「…やはり500万が限界かと……」



この言葉を聞いた黒スーツの男は大きなため息を吐いた。男はおもむろに橋本の肩を組み、彼に耳打ちをする。



「俺の口利きがねえと……あの土地に居る占有屋は離れないよ?」


「で、ですが……」


「居座られてるのはあの土地だけじゃ無えだろ?最近はそう言う物騒な輩が増えて大変なのは分かるけどよォ。アイツらはそう簡単に引き下がら無えと思うぜ。」


「し、しかし…た、達川たつかわさんへの御礼金を考えますと…アレ以上は…。」



すると達川と呼ばれる黒スーツの男はフッと鼻で笑った。



「要らねえよ、俺は正義の味方だぜ。アンタらの役に立ちたいだけなんだからサ♡」



ーーー

ーー

日本国 某廃鉱山跡地


裏世界を牛耳る組織の内の一つ『幻狼会』。

彼らのアジトでは、地下で日夜恐ろしいモノが造られている。



〈武器製造工場……麻薬栽培……どちらも現在は予定の50%まで拡大しています。〉



まだ冷たい夜風が入り込むボロボロのコンテナの中で部下の報告を聞く1人の男性。


彼はチャン子豪ジーハオ

幻狼会日本支部の総統である。



〈……まだ遅いなァ。〉


〈え?〉


〈地下の連中はキッチリ働いてんのか?〉



苛立ちを見せるチャンに部下は冷汗をかく。



〈ち、地下の労働者達は良く働いてます。かえって急がせるのは危険かと……いつ政府の諜報機関に見つかるかも分かりませんし。〉



するとチャンはクスクスと笑い始め、意地悪そうな目で口を開く。



〈冗談だよ、冗談。一年ちょいで50%も出来れば上出来だ。地下の連中にちゃんとウマミ与えとけよ。〉


〈はい、そこは抜かりなく。〉



チャンは大きな建物の中へと移動した。



もはや使い物にならない採掘道具や重機、何に使うのかすらも分からないまでに錆びて朽ち果てたモノが沢山散在している。歩けるスペースは少なく、チャン達はそこを慣れたように進んで行く。


すると大きなトタン板が積まれ場所に辿り着いた。チャンはその下を探ると小さなリモコンが出て来た。ボタンを押すと床が開き、地下へと続く小さな階段が現れた。



〈このシステムを作るのに5年も掛かりましたよ。転移前からこの場所に目を付けて正解でした。〉



部下の話など無視し、チャンは階段を降りていった。



ーー


階段を十数メートルほど降りたところで、けたたましい音が少しずつ聞こえて来た。すると部下が現状報告を始めた。最下層まで降りればまともに報告が出来ないほど騒音に包まれるからだろう。



〈現在この工場にいるスタッフは200人程です。多少体調を崩す者もいますが、専属の医療スタッフも配置している為、製造に支障はありません。〉


〈先日新たに入った不法滞在のベトナム人どもはどうしてる?〉


〈奴らはBブロックへ就かせました。〉



そして2人は最下層まで到達した。


案の定、轟音が地下全体に響き渡っている。


そこに広がるのは、地下の割にはかなり広い空間が広がっていた。その空間には様々な重機やベルトコンベアなどがあった。それぞれに作業服を着たスタッフが配置されており、せっせと部品を組み立て、プレスを掛け、溶接していた。


チャン達は一通り工場を見て回る。



〈中国、韓国、北朝鮮、ベトナム、タイ、マレーシア、インド、中東系、欧州系も少しは混じってるな。〉


〈皆が不法滞在者で、路頭に迷っていた所を拾ったのです。〉


〈勿論、働いた分のウマミは与えてるな?〉


〈ハイ、飴と鞭はきちんと守ってますよ。〉



次に2人がついた場所は、厳重な警備の奥になる空間だった。そこは先ほどの工場とは違い静かであった。しかし、その空間一杯に様々な大きさの木箱が積まれていた。


チャンはその木箱のうちの一つを開けた。そして、中身を手に取る。



〈ふむ…出来は上々だな。〉



彼の手に握られているのはこの工場製造された自動小銃であった。それだけではない。ここにはこの地下工場で造られた様々な武器兵器が保管されていた。



〈具体的な生産数は?〉


〈アサルトライフルが500丁、ライフル500丁、手榴弾350個、拳銃750丁。〉


〈シャブは?〉


〈貯蔵されてる分は3tほどです。今現在は各密売ルートに50㎏ずつ送ってあります。〉


〈ククク……また大儲け出来るな。大麻や覚せい剤なんてモンは、今じゃあ殆ど手に入り難い代物だ。それが安易に手に入るルートがある知ったら、顧客は一気増えるぞ。〉



チャンとその部下は満足そうに踵を返した。そして来たるべき時に備えられた悪魔の遺産は、再び薄暗い部屋の中へと閉じ込められた。



ーーー

ーー



地下工場から出たチャンは、外に複数人の人影が居ることに気付いた。しかし、外に居るのは敵ではない。



〈そっちはどうだったんだ?ヤン。〉



彼の名はヤン文海ウェンハイチャンの右腕である。ガッシリとした体格でチャンより頭一つ分も背が高い。



〈今日もいい不動産ブローカーを見つけたぜ。これでウチへの儲けも増えるってもんよ。〉


〈……人選を間違えてねえよな?〉


〈安心しろよ。高い金をはたいて雇った探偵でしっかりと調査済みだ。俺たちの言う通りに儲けを出さないと家族を殺すと脅した……子どもの学校から妻のパート先、行きつけの店の名前も調べた。写真を見せただけで冷や汗を滝の様に流してたぜ!〉



ヤンは楽しそうに喋っていた。彼は組織の資金確保の為、利用できる金融企業や不動産の役員を見つけては脅しをかけて、組織の為に儲けさせる様に仕向けていた。



〈大丈夫です、警察にチクるような奴ではありません。家族や友人を心から大切に思ってる奴ですから、もしそんな事をすれば家族が悲惨な死に方をするって伝えてあります。〉



無論、彼らは適当に相手を選んでいるわけではない。家族関係や友人関係の薄いヤツは選ばないのだ。そんな事をすれば間違いなく、自分たちは追われる身になってしまう。


家族関係の深く裏切る事が出来ない様な相手しか選ばない。


そうすれば、彼らの脅しも『本気』だからこそ通用するのだ。要求に応じられない場合は『死』あるのみ。その為にもしっかりと脅しを掛ける必要がある。



〈もっとだ…もっと金と武器がいる。〉


〈どうする?そろそろ『外』と繋がってる企業を狙って見るか?〉



チャンは少し考え込んだ後、口を開く。



〈そうだな……だが、日本政府の目は意外にも鋭いぞ。そう簡単に上手くはいかねぇ。本国との繋がりがあれば別だが、生憎ここは異世界だ、俺たちしかいない。〉




ーー

首相官邸 会議室


いつもの面子が顔を揃えているこの場所に、今までには居なかった人物がそこに立っていた。


各大臣達がその男に注目している。



「まぁニュースでも分かっているとは思うが……本日から俺の右腕になる男だ。」



官房長官の小清水の説明の後にその男が口を開いた。その男はスラッとした顔立ちをした…いわゆる好青年の印象を受ける男だった。



「私の様な若輩の為に…お集まり頂き誠に感謝いたします。私、本日より副官房長官を務めさせて頂く事になりました…木戸口永一と申します。」



ニッコリと笑顔で挨拶をする木戸口に各大臣達も挨拶を交わす。そんな中、広瀬が彼に声を掛ける。



「なぁ木戸口くん、君の功績は色々と聞いてるよ。中々の支持率じゃないか。身内として非常に心強いよ。」


「ありがとうございます、広瀬総理。私は貴方のような日本の志士に出会えて大変光栄でー」


「それよりも、お前さんに聞きてえ事があんだけど…いいかい?」



いつにも無く真剣な表情に周りは少し動揺する。木戸口だけはニコニコと笑いながら、何か?と尋ねる。



「お酒は強いか?」



呆けた質問に周りがキョトンとする。木戸口も思わぬ質問に口をぽかんと開けてしまっていた。



「え、えぇ…それなりには。」



すると広瀬はニッカリと笑った。椅子から立ち上がり、彼に近づきながら手を差し伸べる。



「じゃあ今夜飲み行こう…ね♡」



いつもの広瀬のノリに周りの大臣達からも笑い声が聞こえてくる。木戸口も周りに合わせて笑うが、困惑もあってか少しぎこちない苦笑いになってしまう。



(コレが広瀬勝……元黒巾木組の組頭くみがしらだった男…読めない人だ。)


出来るだけ幻狼会のところはグダグダにならない様にしたいです。

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