第100話 休戦に向けて…
お待たせしました。
今年一番の投稿です!
戦後処理って本当に難しあるのでかなり時間は掛かりましたm(_ _)m
ーー時は少し遡り アルフヘイム神聖国
皇国によるアルフヘイム侵攻作戦が行われる前日、外務局員のとあるエルフ族がパイプ草を吹かしながら暗い森の夜道を歩いていた。
「フー……まさか本格的に皇国がイール王国に対して侵略を行おうとするなんて。この世界のバランスはどうなってしまったんだ?」
この短期間で、大きな戦争が世界で起きて始めている事に対する不安を口にする彼は、一本の大木に腰を掛けた。そして、深々とパイプ草を吸った。
「すーーハァ~~ん? あぁ、いつの間にかダークエルフが居る森の境まで来てたのか」
彼は仕事を終えた後、人気の少ないこの場所付近に来てはパイプ草を吸う事が日課であった。しかし今回は悩み事もあってか、いつの間にか普段でもあまり訪れない『黒森の境目』まで来てしまっていた。
『黒森の境目』とはハイエルフ族とダークエルフ族の境目の事であり、その境には粗末で長い柵が連なって建っていた。因みにダークエルフ族は『白森の境目』と呼んでいる。
互いに目を合わせることすら毛嫌いする両種族は、日に数回の僅かな見廻り以外、滅多なことではこの境付近まで来る事は無い。
「ヤバイヤバイ……まぁ、連中がコッチ側に来ることなんて殆ど無いから別に構わないか」
彼は、どうせなら普段見ない黒森を軽く眺めてから帰ろうと考えながら柵に沿ってゆっくりと歩き始めた。
(薄気味悪い。昔は清く美しい森であったのに、奴らがやって来て、我々の森を奪ったせいでこんな……ん? 何か聴こえるぞ?)
すると何処からか声が聞こえ始めた。
「本当にコレでお前達と連絡が出来るのか? 魔伝石を使った方が良くないか?」
「まぁあんた達にとってはそっちの方が使い勝手が良いのやも知れないが、魔力のある者しか扱えない魔伝石は、ヒト族にとっては使える者が限られる」
「そうなのか……全く、ヒト族とは難儀な種族よ。まぁ下手に魔力を消費しない点では便利かもな。列強国の中には魔力を探知する魔導機械があるらしいからな」
『黒森の境目』側の木陰に複数人のダークエルフ族と、黒いフードを羽織った者数人が何やら会話をしているのに気が付いた。少し距離があり会話の内容は上手く聞き取れい為、彼は気付かれないよう身を屈めながらゆっくり近づいて聞き耳を立てる。
(な、何だ? ダークエルフ族達は何を話してる? そもそもあのフードの奴らは誰だ?)
何とか会話が聞こえる距離まで近づいた彼は、息を殺しながら大木に隠れ、会話の中身を聞いた。
「……っとまぁ、コレが無線機の使い方だ。分かったか?」
「あ、あぁ……理解したよ。それにしても原理は不明だが、魔鉱石も無しにこんな摩訶不思議なモノを造れるとは…貴国の技術力と文明の高さには驚かされるよ。いつかニホンヘ行きたいものだね」
「その時が来たら、私がニホンをご案内致しましょう」
「ふふ、期待しないでおくよ」
ダークエルフ族と話しているフードを羽織った者は、ニホン国の者である事は分かった。
(に、ニホン人かアレは? だが、何故ニホン人が此処に?)
ダークエルフ族が日本と繋がりがある事は当然分かってはいた。しかし、向こう側に行くにはハイエルフ族の案内無しでは不可能に近い。そもそも、日本の使者がダークエルフ族と会うという話は聞いていない。
(それにしてもエルフ族ですら滅多に近寄らない場所まで来るなんて……何を話してるんだ?)
彼は再び会話に耳を傾ける。
「ところで、さっきの話は本当かい? 皇国がアルフヘイムへ向けて侵攻を開始してるってのは」
この言葉を聞いた彼は驚愕した。
(は、ハァ⁉︎ な、何を言ってるんだ!)
高鳴る動悸を胸に手で抑え会話に集中する。
「あぁ事実だ。今から約マルロ……6時間後に皇国の艦隊がこの国へやって来る」
「……私たちの集落への危険は?」
「奴らの侵攻方向から見て、先ずダークエルフ族の集落への攻撃は無いだろう。多少なりとも騒しくはなるけどな」
ダークエルフ族の女性は、「それなら別に良い」と言った雰囲気で頷く。
「あらそう? でもアルフヘイムとは同盟国でしよ? 援軍は間に合わないにしても、危険を知らせる事ぐらいは出来るだろう? やらないのかい?」
「あぁ、我々は頃合いまで傍観させてもらう。多くの犠牲者は出るだろうが……そうならなければ我が国は動けないんだ。まぁ今後の為にも必要な犠牲なんだがな」
「ふーん。本当にあんた達の法律は理解出来ない事ばかりだね。そうならない為の軍隊だろ?」
「軍隊じゃない。自衛隊だ」
「ジエイタイねぇ。まぁ私達に被害が無ければ何だっていいさね」
「兎に角、手筈通りで頼むぞ。地の利に長けた君達にしか出来ない仕事……報酬は君達がずっと望み続けていたモノだ」
「ふふふふふ……勿論よ」
彼は聞いていた会話の内容がとても信じられなかった。
(え? そ、それはつまり裏切り⁉︎)
するとフードを羽織った者の1人が、ダークエルフ族の女性と話していた仲間に耳打ちをした。
(隊長……柵の向こう側、11時の方向にー)
(あぁ分かってる……丸聞こえだよ。任せろ。)
2人のコソコソとした行動にダークエルフ族達は首を傾げる。すると隊長と呼ばれる男が口を開いた。
「今回の件は、聖王ウェンドゥイル殿やその他上官達からの協力の元行われる作戦だ。全て万事上手くいく。仮に『誰かが盗み聞きをし、それを報告しようものならそれは全く無意味』と言う事になる」
「「ッ!」」
(⁉︎)
ダークエルフ族が素早く弓を構えながら、後ろを振り向く。その視線の先…柵の向こう側には必死に逃げる1人のハイエルフ族が居た。
「や、奴を仕留めー」
「放っておいて下さい」
ダークエルフ族の女性が部下たちに射殺すよう命令を下そうとしたとき、隊長と呼ばる男がそれを制止させた。
ハイエルフ族の男性は振り返る事なく、姿が見えなくなった。
「な、何故逃した! 話を聞かれたのだぞ⁉︎」
「いいんですよ。ここで矢を放ってもし仕留め損ねでもしたら、『報告されてはマズイ』という認識を与えてしまいます。まぁ、報告しても無駄という認識は、彼の心音や呼吸音から察するに、さっきのデタラメで与える事はできましたが」
「ッ⁉︎ さっきの意味の分からないワザとらしい話はその為か?」
「それにこの国と日本は強い信頼関係が出来ている。姫君であるフレイヤ様をテスタニア帝国の魔の手から保護したと言う事実もある。万が一、奴が報告したとしても誰も信じるものはいないでしょう」
「む、むぅ……確かにそうだが」
男はフードを外し、その姿を露わにする。
彼は『鈴木』。日本の隠密特殊部隊『別班』と隊長である。
「だが念には念をと言います。向こう側にいる隊員にも連絡しておきましょう。事が済み次第消すようにね」
そして6時間後、ハルディーク皇国はアルフヘイム神聖国への侵攻作戦を開始した。
ーー時は戻り 日本国
日本の自衛隊とハルディーク皇国との戦争。日本のテレビは、某局を除いて一日中この話題で持ちきりであった。
ーー日本は今戦争をしているーー
この状況を全ての国民が認知はしていた。しかし、さほど彼らの生活に影響を与えていない為か、認知はしていてもその実感が感じている者はほとんどいなかった。
ただいつも通りの日常を過ごすだけであった。
『戦争ヤメろ! 平和を守れ!』
『広瀬の軍事政権を許すな!』
『戦争反対、戦争反対!』
『直ぐに自衛隊は引きあげろ! 人の命を何だと思ってる!!』
国会議事堂前や都内各所では、自称平和主義を掲げる団体が警察官達の監視の元、昼間からスピーカーの音を大にして抗議の声を発していた。無論、今回の戦争と広瀬政権に対する抗議である。
だが、彼らの声に耳を貸す者は殆ど居ない。
この光景も人々にとっては何も変わらない、何時もの光景でしかなかった。
ーー首相官邸 会議室
広瀬総理を始めとする各大臣が、椅子に腰掛けていた。
まず始まに南原副総理が声を出した。
「今回の自衛隊創設以降初の敵国本土への爆撃作戦。今現在確認されている情報では、作戦は無事成功されたとの事でした。そして、我が方の被害はー」
「ま、まさかッ! 殉職者が⁉︎」
渋川大臣が身を乗り出す勢いで問い掛けた。しかし、南原副総理は特に焦る事なく質問に答えた。
「いえ、幸いな事に殉職者は居らず、負傷者も居ません。強いて言うなら、敵機から放たれた流れ弾が幾らかが、戦闘機の機体に少なからずのキズをつけたくらいでしょうか」
この言葉を聞いた渋川大臣を始めとする各大臣がホッと胸を撫で下ろす。
南原副総理は話を続けた。
「えーあの作戦の狙いは、最小限の犠牲で皇国の戦力を削ぐことでした。そして、ネイハム氏の証言と衛星からの地図を照らし合わせたお陰で、より正確な軍事基地への爆撃は成功しました」
「爆撃の成功ねぇ」
この南原副総理の言葉に対し、腕を組みながらあまり納得していない様子で渋川大臣が声を漏らした。
「まぁそのぉー敵の戦力を無力化したと言えば聞こえは良いですよ。しかし少なくとも5千人近くの命を奪ったのですよ? メディアもこぞってコレを報道しています。『戦後平和を保って来た日本。その自衛隊が5千人近くの人命を奪った!』、『誤りの選択⁉︎戦闘回避の手段は本当に無かったのか⁉︎』…これの連日報道ですよ? 野党からの追求の件も考えると頭が痛い」
この言葉に小清水官房長官が反論する。その表情は渋川大臣を鋭く睨みつけるものだった。
「渋川ぁ、お前さんは何か勘違いしてねぇかい? 先に仕掛けて来たのは向こうだ。それに同盟国であるアルフヘイムやイール王国に対する一方的な大量虐殺、イール王国自衛隊駐屯地への奇襲やウンベカントでの工作行為。只でさえ予測が難しい異世界だ。このまま早期に決着をつけなければならない。ココは地球じゃねぇ……下手な平和主義が却って命取りになる」
小清水官房長官の言葉に渋川大臣はオドオドしく身を引いた。僅かな沈黙の後、安住大臣が静かに手を上げ質問を投げかけた。
「ちょっと宜しいですか? 資料を見る限りでは、爆撃対象は『全ての基地ではない』ですよね? すみませんが、確認の為もう一度説明を求めま。」
質問に答えたのは久瀬大臣だった。
「このハルディーク皇国の軍事基地が記されている地図……見てわかる通り、今回爆撃した所と爆撃していない所の大きな違いがある」
南原副総理が久世大臣の説明に合わせ、急いでリモコンを操作し、衛星で撮影されたハルディーク皇国の立体写真を表示させた。その写真には、いくつもの小さな赤い丸印があった。その赤い丸印の殆どにバツ印が重なっていた。しかし、バツが掛かっていない赤い丸印がハルディーク皇国とその傘下国群との国境に複数表示されている。
「ふむ……国境ですかね?」
「そうだ。皇国の軍事基地は、爆撃対象外基地の殆どが東側の国境……つまり傘下国側をカバーする様に建てられている。大雑把に例えるなら、ちょいと万里の長城を思わせるような感じだな。爆撃の対象外にした理由は、皇国が敗けた際、傘下の国々から攻め込まれないようにする為さ」
久瀬大臣の話した通り、ハルディーク皇国の東側は自国の傘下国が密集している。皇国は今まで傘下の国々に対し行ってきた非道の数々……もし、彼の国々に皇国が敗戦し、大きく弱体化したと言う情報が耳に入れば、皇国に攻め込むのは火を見るより明らかであった。
そうなれば、夥しい数の犠牲者は勿論、戦後処理の不始末とその責任で国内から非難の声が上がり、最悪マグネイド大陸は内戦地獄と化すだろう。
テスタニア帝国の時は、侵略した国々を解放する事とカーネギー公の拝領によって、現在まで大きな武力衝突は発生していない。しかし、ハルディーク皇国の場合は違う。
そうならない為にも、ハルディーク皇国にはある程度の自国防衛力を保持してもらう必要があった。
「ふむ……改めて理解しました。ありがとうございます」
「なぁに確認は大事さ。ところで今回の件で協力してくれたサヘナンティス帝国は、今どの様に?」
南原副総理は口を開く。
「サヘナンティス帝国は、皇国により占領された『レーバ諸国連盟』、通称『低文明諸国連合』を解放後は、諸国連合の保護を名目に軍を待機させているとの事です。しかし、諸国連合の皇国に対する恨みは激しいみたいです。今は何とかサヘナンティス帝国が宥めてますが……あまり時間はありません」
此処で官房長官の小清水が話し始める。
「つまりだ……俺たちは此れから皇国に対し『降伏勧告』を出す。もう奴さんも戦える状況では無いのは分かってるはずだ。直ぐにでも使節を派遣する必要がある」
この言葉に渋川大臣が口を開いた。
「しかし、日本とハルディーク皇国との直接的連絡手段はありませんよ?」
小清水官房長官は落ち着いて質問に答える。
「そこはサヘナンティス帝国に協力してもらう。ハルディーク皇国への直接的な連絡手段を持ってる友好国は帝国以外に存在しない。扱いとしてはあまり宜しくはないが、早く済ませるにはコレしかない。向こうも納得してくれるだろう」
「では早速サヘナンティス帝国の皇帝に連絡をしなければなりませんね」
「安住、此処からはお前さん達の仕事だ……最重要だぞ」
外務大臣の言葉に対し、安住大臣らゆっくりと頭を下げて応えた。広瀬総理は身体を伸ばし口を開く。
「まぁこの件はこれで良しとしようや。小清水さんの言う通り、早くこの戦争を終わらせにゃあならない。あと次の国会で野党からボロクソ言われそうだからな」
広瀬総理の言葉に各大臣達は頷く。そして、南原副総理が持っていた資料をめくり次の議題に移った。
「では……次に議題ですが、今後のことを考えてやはり『実行する』べきかと」
いつにも以上に真剣な表情で話す南原副総理に、各大臣も気が引き締まる。無論、広瀬総理も同じであった。
「今回のハルディーク皇国の戦争……ネイハム氏の話が正しければ、第2世界に皇国を嗾けている国が存在する事になるかと。これは放っておけば、後々何かしらの脅威が我が国にもそれを防ぐ為にも決断する時が来ました」
広瀬総理は軽く鼻で溜息を吐きながら、窓から見える空を眺めながら呟いた。
「第2世界への調査隊派遣……か。面倒な事にならなければ良いけど……そうも言ってられない感じだね」
広瀬総理が眺める晴れ晴れとした空は、次第に曇天へと変わり始めた。
ーー数時間後 首相官邸内 某部屋
コーン……コーン……
ししおどしの音が広い和室に響き渡る。電気は付いておらず、開けた縁側から差し込む月光と日本庭園の淡いライトの光だけが照らしていた。
広い和室の中央で、座布団に座り1人酒を飲む広瀬の姿がそこにはあった。彼の前にはもう1人分の酒が用意されていた。
「ん……プハァ……ここから見える庭園は最高の酒の肴じゃねぇか。そう思うだろ? 田中」
広瀬が薄暗い奥の襖に向かい話し掛けた。すると襖がゆっくりと開き、そこから1人の男が現れた。その男は服装こそは薄汚れた作業服であったが、今日は顔だけは整っていた。
「ありゃ? お前さんその顔ぉー」
所々クセ毛があるツーブロックヘアーで顎髭を蓄えた男。身長は180㎝以上はあり、襟元から見える僅かな身体だけでもかなり鍛えこんでいるのが分かる。明らかに只者ではない雰囲気であったが、一番特徴的であったのが目だった。
灰色だ。
「スンマセン。小清水の叔父貴から『偶には身なりを何とかしろ』と言われたもので……顔だけ直しました。服装は勘弁して下さい。身体部分の方が、何時もの状態に戻すのに一番苦労するんで」
片手で頭を抱え、ヘラヘラと笑う彼の目は笑ってはいなかった。外国人と言っても違和感の無いこの男が言わずもがな『田中一朗』である。
「いやいや〜懐かしきイケメンが見れて嬉しいよぉ〜」
「へへへ、どうも」
「んじゃあ……教えてくれるかな? アルフヘイムでの業務報告を♡」
「ハイ、例のエルフ族は始末しました。それにダークエルフ族との信頼関係も良い方向へと向かってます。後は我々がしっかりと約束を守るだけですね」
彼の報告を聞いた広瀬は満足そうに頷いた。しかし、その顔をどこか悲しそうなもの見えた。
「それは良かった。でも、アルフヘイムには悪い事したと思うよ。そのエルフ族もさ」
「いや、仕方ないでしょう」
そんな広瀬の言葉に対し、田中は表情を変える事なく答える。
「皇国によるアルフヘイム侵攻は、我が国が大々的に自衛隊を動かす為に『必要な事』でした。お陰で世論も予想していたよりかは、広瀬政権に対する批判が少なかったです。まぁ小煩く喚き散らす輩もいますが、それは仕方無いでしょう」
「まぁそうだけどね」
「侵攻終息後に暗殺したあのエルフ族の件も、彼は消されて当然でしょう。ハルディーク皇国がアルフヘイム侵攻を企てていた情報を我が国が掴んでた事を彼は知ってしまった。それがもしアルフヘイム全体に知れ渡り、不信を買われたらそれこそ面倒になります」
「確かにねぇ……しかしまさか、あの時の会話を聞かれてたとあっては……下手に口止めするより始末した方が確実だし、しょうがないかな♡」
日本は、皇国の大艦隊がアルフヘイムへ向けて侵攻を開始していた事は、既に戦略型人工衛星から情報を得ていた。しかし、広瀬は敢えてコレを黙認し、皇国のアルフヘイム侵攻を黙って見ていたのだった。
目的は、自衛隊を敵地である皇国への大々的な攻撃を実施する為の口実を得る事である。最初は、侵攻を未然に防ぐと言う案も出ていたが、何かしらの被害が出てからの方が世論からの理解が得られると考慮したからである。
そして、その事実を知っているのは外部の者は一部のダークエルフ族だけであった。しかし、その打ち合わせの際、そのエルフ族に会話の一部を聞かれていたのだった。
流石の広瀬もこの極秘裏の決断に少なからず負い目を感じていた。しかし、これも日本がこの世界で生きていく為に必要な礎であると捉えた。
「あとぉ、皇国の息のかかったジーギス氏を敢えて泳がせて置いたのも正解でしたね。彼自身気付いていない事ですが、結果的に我が国にとって都合のいい方向へと導いてくれました」
「まぁ取り敢えずはだ! 事は上々に進んでいるようで良かったよ。国内はどうだ?」
突如ドスの聞いた低い声で質問してくる広瀬に、田中は臆する事なく答える。
「アメリカの件は問題無いかと……しかし、中国の工作員に何やら不穏な動きが見られます」
「具体的には?」
「進民党や協産党の幹部が工作員やその息のかかった者と接触をしているのは確認されてます。ですが、ハッキリとしたその目的までは……」
「うーん、そうかぁ。一応、臼井ちゃんに気をつけるよう伝えておいてくれ」
「分かりました」
田中が席を立ちその場を去ろうと背を向けると、広瀬が声を掛けた。
「お前も気を付けろよ……譲二」
田中もゆっくりと振り返り、広瀬に向かい口を開く。
「分かってるよ……親父」
ーー同時刻 東京都 某所
黒塗りベンツの車が夜の公道を走る。
その車内には、進民党代表の臼井が乗っていた。臼井は携帯を眺めながらボソッと呟く。
「次の与党への質問……何にするか。元民自党議員の賄賂疑惑か? それとも公盟党某議員の不倫騒動か? 悩むな」
次の国会に対する野党への質問について考えていた。しかし、臼井は広瀬総理と裏で繋がりを持つ人物……広瀬が指揮する謎の組織『黒巾木組』の人間である。
(うーん……次の与党が提案する政策内容を下手に世間から誤魔化して、スムーズに与党内で進めさせる為とはいえ、どうでもいい事を国会論議に出すのって地味に難しいんだよなぁ)
彼が表には出さずともどうしようかな悩んでいた。そこへ彼の運転手が声を掛けて来た。
「あ、あのぉ……う、臼井さん?」
「ん? どうした?」
「あぁ! いえ……そのぉ……お、お疲れでしたら……少し休憩できる場所をと……考えていたのですが……ど、どうしましょう?」
「あ、あぁ……そうねぇ、まぁ別に良いよ。そのまま本部に向かって。どうもね、ヤマちゃん」
彼の名前は山崎良夫。臼井専属の運転手である。彼が職を失い、多額の借金を抱え露頭に迷っているところを臼井に拾われ、以来彼の専属運転手として働いている。
「い、いえ……そのぉ……臼井さん?」
「どうした?」
「わ、私は……臼井さんの事尊敬してます! 今の力の強い与党に対する怯まない姿勢が! た、確かに戦争は向こう側から始めたことではありますが、それでも日本の外交官がもう少し頑張れば……」
「まぁなってしまったことを今更変える事は出来ないが、それ以上悪化させない為にも、我々野党が結託して与党の暴走を止めねばならない。分かるな?」
「は、ハイッ! はい」
そして暫く道を走らせていると、公道から人通りの少ない脇道へと入って行った。本部へ向かう道とは違う道路を突然走り始めた事に、臼井は違和感を感じた。
「ん?……ヤマちゃん? 此処は何時もの道じゃあないよ?」
「え、えぇ……ちょっと渋滞になりそうだったので……こ、コッチからでも本部には着きますよ。ち、ち、近道にもなりますし」
「そうか……」
明らかにいつもとは様子が違う事に臼井は気付いていた。常にオドオドしている山崎が、何時もとは違う……怯えや不安、緊張に近い感情を抱いている事に臼井は勘付いた。
「おいおいヤマちゃん、何を考えてんだ?」
「え? な、何がでしょうか?」
「お前らしくねぇな? 小心者のお前さんは普段通らない道は使わない。こんな場所に移動して何するつもりだい?」
「へ? あ、あぁいや、そのぉ……ハハッ、えっとぉそのぉ……」
すると車はとある建設現場近くへと停車した。車の周りには鉄パイプの骨組みにブルーシートが粗末に掛けられた囲いがあった。
明らかに不自然極まり無いこの状況。臼井は不意に懐の小型拳銃にゆっくりと手を伸ばす。
「おいおいヤマちゃん! マジでどういうー」
「う、臼井……さん。か、か、堪忍して下さいッ」
山崎が車の後部座席の窓を開け始めた。
ウィーーーンッ
臼井は開いた側の窓に顔を向けると、工事作業員の服装とヘルメットをした1人の男が、消音器付きの拳銃を構えていた。その表情は恐ろしい程に無表情だった。
(なッ⁉︎ 何だこの男はッ!)
男が口を開く。
「あなたに恨みハ無いヨ。……サヨナラ」
不自然な迄の日本語の発音を聴き、臼井は気付いた。
(ッ!コイツはー)
プシュッ! プシュッ!
掠れたような空気音が数回小さく響いた。そして、数秒間の静寂の後、謎の男が粗末なブルーシートの囲いから出てきた。外には同じような工事作業員の服装をした男達が、待機していた。手には清掃道具や黒いビニール袋を持っている。
〈……『処理』は任せた〉
〈〈了解しました〉〉
謎の男は少し服装の埃を払った後、その場を後にする。そして、懐から携帯を取り出すと、電話を掛け始める。
「終わったヨ」
『ご苦労だったな……抜かりはないな?』
「大丈夫だヨ。その為に準備した場所ダから、遺体はどうとでも処理は可能ダ。バレはしない」
『本当だな? おたくらには高い金払ってるんだぞ? 頼むぜ』
「フフフフ……問題無いヨ、信用して。こちら側としても貴方が上に立った方が都合が良い。お互いの利益の為。それ以上もそれ以下も無イ。『上』からも惜しみ無く協力しろと命令を受けてルシ。さぁさぁ後は貴方達の仕事でショ? ……キドグチさん」
『分かってるよ…張さん』
ーー同時刻 ハルディーク皇国 皇国防本部 議事堂
「皆さま揃いましたね? ではこれより、緊急御前会議を開始します」
ドーム型の建物、その中の大きな円卓には、現時点で生き残っている皇国の重役達が顔を揃えていた。目的は、日本との休戦協定と今後のハルディーク皇国についてである。
◇
皇国の皇女
キャサリアス・ガピオラ
皇国防部最高責任者兼軍務局長代行補佐官
ロイエス・バルガー
皇国外務局長
シリウス・マルクッチ
皇国情報局副局長
ナザラ・マルザ
彼らの他にも多数の上級政務官達が気難しい表情でその場にいた。この場にいる者の中で、楽観的な表情をする者は1人もいなかった。
最初に口を開いたのはキャサリアス だった。
「ロイエス本部長、現状報告をお願いします」
「は、はい!」
ロイエスは椅子から立ち上がり、資料の紙を見ながら説明を始めた。そんな彼の様子を周りは固唾を飲んで見ていた。
「ま、まず現時点での我が軍の被害状況は歴史上最悪の状態で、特に一番被害が大きいのが海軍です」
「の、残りの艦や基地は?」
「残っている艦は僅か100隻足らず。無事な海軍基地は傘下国国境付近にある3ヶ所のみ」
「つまり、海軍はほぼ壊滅」
イーサンが質問する。
「では他の軍、陸軍と飛行軍はどうですか?」
ロイエスは説明を続けた。
「陸軍の残存兵力は10万足らず。飛行軍に至っては、時代遅れな翼龍しか残っておらず、複葉戦闘機や飛行戦艦は、全て破壊されています。修復しようにも、資材や技術者が全く足りていません。陸軍も皇都やその他地域に手一杯である為、進軍するなどもってのほかです」
「つ、つまりだ……また先日の様な攻撃を受ければ、軍は全滅ということか」
「軍だけで済めば良いですがね」
全員に戦慄が走った。
日本の力は先日の空爆で嫌という程思い知った。もしこのまま戦いを続けると言うのであれば、皇国は間違い無く滅びる。
しかし、この中で日本からの更なる攻撃よりも恐ろしい事態が迫ってくる事に怯える1人の男がいた。
「ぐ、軍の状況については分かった。ニホンとの休戦協定の前に、私からも報告したい事がある」
皇国情報局副局長のナザラであった。彼は震える声で話を続ける。
「我々の情報によれば、傘下国間で何やら不穏な動きがあるとの情報が入りました。こ、これは私の憶測なのですが、連中は気づき始めました。我が国がニホンとの戦争で疲弊しきっている事に……」
場が一気にざわつき始めた。
「な、ナザラ副局長! なぜ情報流出を防がなかったですか⁉︎」
「情報局は何をしている⁉︎」
数人の上級政務官達が声を張り上げ、ナザラを非難した。しかしナザラもそれに反論する。
「い、いくら我々でもこの状況下で全ての情報流出を防ぐのは不可能だ! 国としての機能が殆ど機能されていない!」
周りの高官から次々怒声が聞こえる。
「ふざけるな! 情報局の幹部達は全ての責任を取れ!」
「今はそんな事を話すためでは無い! この未曾有の国家存亡の危機をどう乗り越えるかをー」
「いや違う!」
人一倍声を張り上げたのは、ドミーク・エンラと言う名の男で、皇国の軍務副局長である。彼はスッと立ち上がり高らかに叫び始めた。
「皇女様に皆様方! 今我々が行うべきは、ニホンとの休戦や講和ではありません! 徹底抗戦あるのみ! 直ぐにでも戦えるだけの兵を掻き集め再軍備を行う! そして、上陸して来るニホン軍を水際で迎え討つ!」
呆れた発言に周りの高官達は、呆然とした。しかし、彼の発言は止まらない。
「戦争に負けた国はどうなるか⁉︎ 男どもは労働力として死ぬまで休みなく働かされ、女は凌辱される! そして役に立たない子どもや老人は殺される! そんな人生を歩みたいか⁉︎ 私は御免だ! そんな運命を受けるくらいなら偉大なる皇国民らしく、戦場で死ぬ道を選ぶ! 他の者たちも同じだろう⁉︎」
最早話にならない。彼の目を見ると血走り、マトモとは思えない状態であった。するとおもむろに彼は腰の剣を抜き始める。
「わ、私は……嫌だ! 我々が今までに行ってきたことが全て返ってくるのは……そうなるくらないなら一層の事ー」
次の瞬間ーー
彼の首が宙を舞った。
残された胴体の首元からはピュッピュッと血が吹き出ている。宙を舞った首はダンッ! と床に落ちた後、彼の身体がゆっくりと倒れていった。
「「ッ⁉︎」」
あまりの出来事に皆が驚愕していた。そして、誰が彼の首を刎ねたのかすぐに気付いた。
「あ、アリエスッ!」
先程まで皇女の隣に座っていたアリエスがいつの間にかドミークの死体の近くに立っていた。彼女が握る剣の刃には、鮮血が滴り落ちていた。
「下手すれば姫様にも危険が及んでいた。それにこの場は世迷言を垂れる所では無い」
「あ、アリエスー」
すると周りの暗幕裏から複数人の王族護衛兵がゆらりと現れた。彼らの手には血が滴る剣が握られていた。
「アリエス副隊長、ドミークの息のかかった連中は始末しました」
「ご苦労」
一同は驚愕した。ドミークは自身の部下達を使い、反乱を企てていたのだった。
「な、何故ドミークがッ⁉︎」
シリウスが静かに答えた。
「彼は軍人時代の頃、敗戦国の兵や民に対して非道な行為が目立つ人でした。それは上層部としても目に余るほどの。しかし、彼自身優秀な男であった為に、ヴァルゴ皇帝の代からその蛮行は問題にしない事となっていました。ですが、いざ自国が敗戦国となった時、今まで自身が行って来た行いがそのまま返ってくる事を考え、狂気にのまれたのでしょう。今回の招集をかけた時に、なにやら不穏な動きがあったので、念のため監視をつけていました。どうやら正解だったみたいですね」
アリエスは剣を鞘に収め、そのまま元の席へと座った。
(国の為に敗戦を選ぶ……しかし、敗戦と言うのはここまで人を狂わせるのでしょうか?)
キャサリアスは目の前に起きた惨劇を見て、衝撃が走った。しかし、この様な事態になったのは、父や兄が行って来た蛮行の結果であると受け止めて、自身がその責任を請け負う事を改めて強く決意を固めた。
ロイエスはざわつきが大きくなる場内を鎮めるために声を上げて説明する。
「お、落ち着いて下さい! 話を戻しましょう……も、もし傘下国の連中が我が国に対し牙を向ける様な事があっても、不幸中の幸い傘下国付近の軍事基地は無事! その残存兵力を結集させれば、何とか持ち堪える事は可能です! ですがやはりその間に策を練る必要があります」
すると1人の政務官が手を挙げた。彼は椅子から立ち上がり話し始める。
「皇女様! そろそろハッキリと教えて頂きたい! 今回の戦争……どのように終わらせるおつもりですか?」
「左様! 失礼を百も承知で言わせていただきすが、此度の戦争を引き起こした兄上様が全ての原因ですぞ!」
「この様な事はあまり言いたくはありませんが……今までの暴走を止められなかった貴女様にも責任があるのでは?」
「この危機的状況で国民の安全をどう保障するのか? 是非とも皇女様の御考えをお聴きしたいです。無論、我々が納得いく形で」
周りの政務官達が、今回の戦争の責任をキャサリアスに押し付けようとしてた。ヴァルゴやオリオンが死に、彼女の気が弱い事をいい事に保身に走り始めたのだ。彼らの周りに居た他の政務官達が態度と発言を改めるよう声を掛けるが、彼らの態度が変わることは無かった。
(そうか……コイツら)
シリウスは彼らを見て確信した。
(亡命先にツテがあるな)
イール王国沖合での大敗後、皇国の政務官内で外国と極秘裏にコンタクトを取っている者が複数いるという話を聞いていた。保身の為に国を棄てる道を早々に決断した彼らには、最早皇国に対する未練は何もないのだろう。
キャサリアスはゆっくりと立ち上がり話し始める。
「ニホン国からの降伏勧告が届き次第、その求めに応じる考えです。その時はシリウス……貴方も宜しくお願いします」
「は、はい!」
すると1人の政務官が驚いた様に声を上げる。
「な、何故降伏勧告が来るとお考えなのですか⁉︎ 敵は侵略宣言をした我が国を決して許すはずがありません! 徹底的かつ無慈悲な攻撃がこれから起きる可能性の方が大きいのでは⁉︎」
「そもそも安易に降伏を宣言すると言うのも……我らを含め皆が奴隷になるのは目に見えております!」
「わ、私も同意見です! も、もっと他に現実的な考えがあるはー」
「静かにせんか!!」
アリエスの怒鳴り声に場が一瞬で静寂に包まれた。
キャサリアスは話を続ける。
「情報によれば、ニホン国は誰よりも平和を愛する平和主義国家と聞いております。その様な国が、降伏をした国の民を無闇矢鱈と奴隷にする事は無いと考えています。テスタニア帝国の件でも、ニホン国は彼の国の民を奴隷にしたと言う情報を聞いた者は居ますか? 彼の国は今も主権を脅かされる事なく、新しい国に生まれ変わろうとしています」
暫く静寂が続いた後、1人の政務官が口を開く。
「し、しかし……我が国もそうなると言う保障はどこにもー」
「ニホン国は我が国へ攻撃を仕掛けた際、何故傘下国付近の基地や皇都内の基地へは攻撃しなかったのでしょうか?」
「そ、それは……」
「彼の国も無駄な犠牲を望んでいない。我が国の兵力を下手に削いでしまうと傘下国が牙を剥き、戦争の収拾が付かなくなる。そして国内から多くの非難がニホン国政府に向けられる。彼の国の望みは、出来るだけ必要最小限の犠牲で降伏を迫り、尚且つ自力で自分たちの国を守り、我々の主権が脅かされない様に済ませる事。その証拠に、傘下国との国境付近にある軍事基地は無傷です」
場が再びざわつき始めた。
「た、確かにそうですね」
「もし、テスタニアと同じ待遇を受けることが出来るのであれば……」
周りから次々と望みの見えた発言が聞かれる。中にはニホン国を奇妙とすら感じる者も少なくなかった。
「だが随分と不思議な国ですな。侵略して来た敵を叩き潰すのに、何故国内から非難を受けなければならないのか」
「理解に苦しむ」
数秒の沈黙の後、シリウスが口を開いた。
「兎に角、今の状況が長続きするとニホンだけでは無く、サヘナンティスやレイス…その他国々から何か仕掛けられるかも知れない。早急に使者を送る必要がある。」
「ですが行動を起こすとしても大きな問題があります。我が方には何の外交カードを持っていないと言う事実です。コレは非常に厄介な現状です」
場の空気が一気に重くなった。彼の話す通り、我が国には、切り札となるモノが存在していなかったのである。何も無い敗戦国が、この状況で少しでも有利に事が進む事など不可能に等しいからであった。
「待ってください! もしかしたら、ニホン国との交渉における我が国の切り札があります!」
彼女の言葉に周りがざわつき始めた。
「そ、それは事実ですか?」
「か、確証は持てませんが……。し、シリウス局長、『例の資料』を持ってきて下さい!」
「は、はい!只今ー」
バタァン!!
急に開かれたドアからは、青ざめた顔をした職員の姿があった。
「さ、サヘナンティス帝国の飛行艦隊が接近中です!」
「「ッ⁉︎」」
全員に戦慄が走る。
日本との休戦協定を結ぶ前に、サヘナンティス帝国が攻め込んで来るとは誰も想像していなかったからである。
「な、何故サヘナンティス帝国が⁉︎低文明諸国地方で待機していたはずではッ⁉︎」
「偵察部隊は何をしていた!」
「誰の責任だ!!」
「落ち着け! 今はこの状況をどうするかをー」
「どうしようもない! 早くこの国を捨てて逃げるしかー」
「何処へ逃げるというのだ⁉︎ 周りは敵だらけだぞ⁉︎」
そこへまた別の職員が現れた。
「サヘナンティス帝国の艦隊から通信が入りました!……ニホンからの言伝で我が国に対し降伏勧告を申し出すとの事です!」
この言葉を聞いた瞬間、周りは数秒の沈黙の後に再びざわつき始めた。サヘナンティス帝国は侵略ではなく、我が国への直接的な連絡が出来ない日本の代わりにサヘナンティス帝国を使って、降伏勧告を勧めに来たのだった。
「サヘナンティス帝国を……まるで伝令兵の様に……ま、まぁ兎に角直ぐに出迎えの準備をしましょう」
「姫様、こうなってしまっては最早会議は中断となりますが、本当にニホン国との交渉においての切り札となるモノがあるのでしょうか!」
1人の政務官が声を上げて問い掛けると、彼女は静かに頷いたのち、その場を後にした。
ペンタブ難しい。




