Ruler
ピンポーン
母「今ちょっと手離せないから出てー」
俺「へいへい、面倒くせーな」
俺はPCから離れゆっくりと玄関に向かう。
どうせ隣の爺さんが野菜でも持ってきたんだろうと思いつつ扉に手をかけた。
ガチャリ
その時玄関に立っていたのは見知らぬ男だった。
扉の向こうには、帽子を深く被り、黒い服を来た男がうつむいたまま立っていた。
一目で怪しいと分かる格好をしているため、俺は一瞬警戒した。
男が顔を上げる。死人のように冷たい目だ。
そいつは俺の目を見た瞬間ニヤリと口角が吊り上がる。
男が笑うと同時に、腹部に鈍い痛みが走った。視界がボヤけていく。俺は薄れゆく意識の中、男を見た。握られた拳ともう片方の手には黒く重厚感のある物体が目の端を横切っていった...
「うっ...」
俺は痛みで意識を取り戻した。
はっきりとしない意識の中で気絶する前のことを思い出してみる。
俺がドアを開けると、そこに立っていた男に殴られて...
「っ!」
俺はおふくろと幼い妹、弟のいるリビングへ急いで向かった。
リビングへの扉を開けると、
ドン!!ドン!!ドン!!
鈍い音と共に、俺の顔へ生暖かなにかが飛んできた。
部屋の奥でおふくろが崩れ落ちる。
俺の右目には無惨な姿になった妹が映った。
部屋の奥には返り血で服が真っ赤になった男が薄気味悪い笑みを浮かべたまま、まるで影のようにそこにいた。
男はおふくろに抱えられ守られていた弟に銃口を向ける。
気付くと俺は我を忘れて突撃していた。
「て、てめええええええええ!」
俺は男に向かって片足で飛び込んだ。
俺を迎撃しようと男は拳を突き出してきた。
右頬に激痛が走る。
思わず俺は腰をつく。
もう一度とびかかろうとしたその束の間、
ドン!!
足に激痛が走ると共に、俺の視界には床が迫ってきた。
膝を撃たれたようだ。
俺は横向きに倒れた。
男は狂っているように耳障りな音で笑っていた。
激痛に耐えながらも、男を睨みつけていると
ドン!!ドン!!
二発の銃声が響いた。
「ぐあ!」
右腕と肩にまたもや鋭い痛みが走る。
男は俺を一瞥すると、弟の方をチラリと見た。
すると、男は俺に向けていた銃口を弟の方へ向けた。
「やっ、やめ!!」
パン!パン!パン!
俺の叫びも虚しく、銃声が響く
鮮やかな赤色をした液体が飛び散る。弟の泣き声が止まり、静寂が訪れる。
男の銃口が再度獲物を捕捉するように、こちらに向けられた。
俺は死ぬのか...
このまま家族と一緒に死んでいくのか...
そんな事を考えているうちに男は引き金を引いていた。
パァン!
一発の弾丸が俺の眉間に向かって飛んでくる。
その時、過去の出来事が脳内を駆け巡る。家族とのたくさんの思い出が。
そして俺は思う。
なぜこんなクズが生きていて、家族が死ななくてはいけないんだ...
いや、こいつだけは許さない...
この男だけは絶対に殺す!
絶望と恐怖を刻みつけて!!
生を後悔するような苦痛を与えて!!
罪を償わせ!!
嬲り殺す!!!
そう思った瞬間、弾丸の周囲の空間が一瞬歪んだ。
すると銃弾は横に小さなカーブをえがきながら逸れていった。
なにかが起こった。
俺は現状を理解出来なかった。
男は一瞬不思議そうな顔をしたが、すぐにニヤリと笑い引き金を引いた。
男は三発の銃弾を発射してきた。
ドン!!ドン!!ドン!!
だが、先程と同じように全ての弾丸が横に逸れた。
俺は二度目にしてやっと、自分が何をしたのか気付いた。
俺は激しい憎悪の感情によって、この世のものならざる力に覚醒めたのだろう、、、
[空間を捻じ曲げる力]
恐らくそれが俺の手にした力だ。
男はまた狂ったように笑い叫びながら、何発も発砲してきた。
俺は恐ろしい程冷静だった。
銃弾に向けて手をかざす。
そして逸れた弾が壁に突き刺さる。
俺はもっと自分の力を試してみたくなった。
俺はゆっくりと男に向かって歩みを進める。
男はその間も銃を撃ってきていたが、すべて無意味だ。
俺は男に手を向ける。
すると男の腕があり得ない方向に曲がった。
骨の折れた音と共に。
男は腕を抑えて悶絶していた。
それを見ている内に殺された家族の事を思い出し、またもや激しい憎悪と殺意を感じた。
この男は俺から大切なものを奪っていった...
このぐらいでは許されない...
「立て。」
俺は男に向かって冷たく命令していた。
男は腕を抑えたまま、こちらをみている。
薄気味悪い笑みを絶やさないで。
「立たないのならその足はいらないな。」
俺は男の両足を力を使いへし折っていた。
男はまた苦痛に耐えきれず、悶絶していた。
男は目に涙を浮かべ、痛みを堪えきれない顔で、命乞いをしてくる。
だが、俺が許すわけもない。
お前の犯した罪、死を持って償え...
俺は男の骨を指先から丁寧に、確実に折っていく。
1本、、、2本、、、3本、、、
「何本までいきてられるだろうな」
俺の顔には男と同じ、君の悪い笑みが浮かんでいた。
49本に達したとこで男は気を失う。
だがそんなことは関係ない。
俺は50本目、51本目を折っていく。
男が痛みで跳ね起きる。
「まだまだ終わらないよ」
男の顔には絶望と畏怖が刻まれていた。
そして数時間後には男はもう生きているのかさだかでないような精神状態であった。
だがおれは手を休めない。
そしてついに216本全ての骨を折った。
男は恐らく痛みで死んでいるのか気絶しているのだろう。
そして俺は全ての憎悪を込めて男の首を千切りとばした。
男の首が足元に落ちる。
俺は男の首を蹴り飛ばし、家族の無惨になった姿を一瞥した。
ゆっくりと扉を開け、外を見る。
外はいつの間にか夜になっていた。
俺は夜の闇へと消えて行った...




