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番外編 奪い去るものは
「今は女連れてんだ。帰ってくんなよクソガキが!」
「ご……ごめんなさい!」
男は少年を殴ろうと、拳を振り上げる。びくっとして、身構えた少年は両手を頭の上にクロスして頭を庇う。
「ぼーや大丈夫?」
「うん……」
口調は優しそうで女性らしいものの、男の声をした彼が自身を助けたのだと少年は察した。
目を隠され真っ暗な世界でグシャりという何かの潰される鈍い音だけを聞く。
それが何だったのかを知るのはもう少し先、大人になって誰かを殺める日が来たらのことだ。
翌日の新聞に男が住宅街で殺されたことが乗るが、誰も犯人を目撃していなかった。
「誰その子、かわいー」
「昨日の夕方に殴られそうになってたから保護したの~」