七ー3
「早く金出して、さもないとあることないこと新聞社にバラしてやる」
招かれざる客人という言葉のよく似合う、不躾な態度の女の登場に、非現実的な光景だな……と気が遠くなる。
「あいつ……とーとーやらかしたのね!」
本当に光雄の子とも限らないのに、誰も息子の愛人が嘘をついていると思わないあたり、この場に居らずとも彼の素行が日ごろから悪いのが窺い知れる。
「あんなのが実の弟だと思うと反吐が出るよ」
本当に子供がいるとして、育てる気がないのはともかく、この手のタイプは是が非でも子をダシに結婚する印象があった為、よほど嫌な男なのだろうと顔も知らないのに想像してしまった雨田と月歌は、ぽかんと彼らのゴタゴタを眺める。
「……わかった。金は用意する……来週の0時まで待ってくれ」
これでは生前贈与どころではなさそうだと思っているところに、秘書から雨田へメールが届く。
あんな事があったとはいえ、調査を止める事はしないで貰いたいとの旨を伝える文面だった。
「お茶をお持ちしまし……きゃあああああ!」
素朴そうな風貌の代表ともいえるソバカスに茶髪、三つ編みのいかにもな新人のメイドが帰ろうとしていた愛人にお茶を零した。
「何すんのよ!」
とっさに腹部をかばった愛人の右手は軽く火傷した。
「あたし帰る!」
「でも、火傷ひどくなっちゃいますよ……!」
愛人は余計に苛立っている。さすがにそのまま帰すわけにもいかないのではと、車椅子の子が言った後、外から轟音が聞こえた。
「嵐……」
「11月も終わりますし、天気も荒れますわね……」
月歌達も、これでは帰れなくなってしまった。
「改めて……」
中年男性は当主の弟である双助、そして、落ち着いている女性、番子の父親にあたる。
そして光雄をよく思っていないのが当主の長男である宗、長女の続子、年の離れた次女の終恋だ。
過去に二度結婚して、初めの妻とは子供がおらず死別、すぐに再婚するも数年前に離婚しているらしい。
「そういえば、愛人は?」
「部屋にでもいるんじゃないか?さすがにバツが悪いんだろう」




