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一章 ‘探偵’雨田清斗

私は雷鳴我門らいめいがもん月歌げっか16歳。

歴史の古い名家に生まれた私は、曾お爺様の言いつけで、中学を卒業してから半軟禁生活をおくっていた。


それから行きたかった高校に行けずヤケになった私は、夜中に推理小説を読み、好きな時間に寝て好きな時間に起きる。

など、ダメな生活をおくっていた。


しかし、突然曾お爺様が何者かに殺されてしまい、それを切っ掛けに私の閉じた人生は開き始める。

ひょんなことから、偽探偵の雨田さんと共に、探偵をやることになったのだ―――――。


■■


長い黒髪を、一つに結い上げて、小袖を着た若干十六の少女、雷鳴我門月歌(らいめいがもんげっか)は左手に万年筆を持ち右手で紙をおさえる。

小説を書くわけではないが、原稿用紙の裏に縦で文字を書いている。


彼女が書いているのは、推理小説のトリックや、犯人を当てる為の推理。

机に向かって小一時間は、犯人が誰なのか、解けずに苦悩していた。



雷鳴我門は旧華族である。

義務である中学を卒業して、高校へ進学は禁じられて以来、月歌は部屋で塞ぎ込んでいた。

女は学べない、時代錯誤な家庭に生まれた彼女は、外に出て知識を得たいと嘆いていた。


推理小説のような、とびきり素敵な探偵になり謎を解き明かしたい。月歌はそう考えていた。

次の日、そんな彼女の願いを皮肉にも叶えるに至る事件は起きた。



「お嬢様、大旦那様が亡くなりになりました」


月歌の曾祖父、雷鳴我門源之助が、今朝方何者かに殺害されていた。

月歌の自由を制限していたのは家内の実権を握る源之助である。身内が亡くなって、悲しむよりも先に、自由を得られたと月歌は感じた。


しかし、月歌は同時に恐怖した。まだ人を殺して名乗りでない犯人が、屋敷にいる可能性がある。

そうなれば、次に狙われるのは父親の雅裄まさゆきか末裔の月歌自身。


彼女の不安をかきけすように警察が訪れ、邸内を捜索し始める。

事情を聴取され、月歌は警部の片瀬雪雄かたせゆきお、警部補の雲松太郎(うんまつたろう)

に取り調べを受けることになった。


「貴女は曾お爺様である源之助氏に、生活を制限されていたそうですね! ズバリ、貴女が一番犯人の可能性が…」


雲松の推論に、月歌は痛くもない腹を探られる気分になった様子。間違ってはいない後ろめたさに、目線を下げる。


「お前は黙っていろ。取り調べをややこしくするから」


片瀬は雲松を手で追い払い、聴取を始めた。


「つまり曾祖父を殺す動機はあるわけだね」


片瀬の確認に、月歌はこくりと頷く。


「じゃあ彼女が犯人で決まりっすよはい逮捕!」


手錠をかけられそうになった月歌を、何者かが引き寄せた。


「そうはさせないよ」


青年のせせら笑う声が和室に響く。


「誰だ貴様!?」

「その間の抜けた推理、やはり警察は探偵に及ばない」


たった一言で、周囲は彼を視点にとらえた。


「お前は…」


正体のわからない彼の人を知っている様子を見せる片瀬。



月歌は自身を抱き寄せた人物に振り返る。


良く整った綺麗な顔立ち、長めの黒髪、探偵風のコートと帽子の青年。

月歌は姿をじっくり見て、好きな推理小説の主人公を思い浮かべた。


月歌が愛読する小説作者、狂魔四郎くるいましろう。彼が公言している主人公の元になった人物に酷似していたからだ。

否、月歌の中にあるイメージ通りであった。


「あの…もしかして貴方は探偵の雨田清斗(あまだきよと)さんですか?」


思いきって、月歌は青年に小説の人物かを尋ねた。


「珍しい、僕を知っているのかい?」


青年はまさか自分を知る人物に会えるとは思わなかった。そう言いたげな表情を見せる。


「誰なんだこいつは?」


雲松は面白くなさそうに、青年を見据えた。


「奴の名は雨田清斗、活動拠点の事務所はなく、法人無所属であり正式な探偵ではない。

その筋では知る人ぞ知る物書きの狂魔四郎からオファーを受け、小説【偽探偵フェイクミステリー】の原案に関わった人物。」


片瀬はメモも何もない状態で、事細かに青年の情報を話した。


「警察にも案外まともなのがいるんだね」


感心したよ、と雨田はわらった。


「それで、どうして貴方はここにいらしたんですか?」


今は警察がいて、雨田には依頼もしていなはずであった。

ここにいる理由が見当たらない。それは月歌だけでなく片瀬や雲松も気になっていたであろうことだ。


「では経緯いきさつを説明しましょうか、今日は天気がいいですよね」

「ああもう!ご託はいいから!!」


雲松は雨田の芝居かがった言い回しに、苛立ちを見せる。月歌も同じく、苦笑いを浮かべる他なかった。


「雨田君、これは人の命が奪われた事件なんだ。探偵気取りがお遊びで参加するような謎解きじゃない」

「それに犯人からわずかに遠い立場の君に裂く時間はない、しかし君が犯人でない証拠もないんだ」


これは“親しい友人との会話”ではない。故に簡潔に説明すればいいものだ。二人は片瀬の発言の意味をそう捉えた。

片瀬はのため息をつき、雨田の聴取を開始した。


「僕のアリバイですか…僕は暇をもてあましていたので、散歩をしていましたよ。それからたまたま、この屋敷の前を通りかかったのですが……」


相変わらず一つの事をを説明するのが長い雨田。話の終わりは誰にも見えない。三人は追求するのを諦めた。

尋ねずとも自ら余計な事まで話すので、聞く必要がないと判断したからだ。

しかし、一見長いだけで意味などないような感情まじりの日記のような説明にも、重要な言葉は隠されているのではないか、と月歌は考察した。


「事件のことが身内内で起きただけならまだしも、胡散臭い探偵気取りが現れて……もうわけがわからない! 簡単にまとめてくれ!」


雲松は混乱のあまり、ちゃんと聞いていれば理解できることも、苛立ちでまともに聞けなくなったようだ。

混乱の発端である雨田は“わかりやすく話したつもりだったのに……”などというが乱心する雲松を観て、あからさまに楽しんでいた。


そして本家の親族、分家親戚一同は、皆口を閉ざしたまま。取り調べを受けただけで、事件の謎を暴くことには少しも関わりを見せない。



「片瀬さん、私が雲松さんの代わりにお話をまとめてもいいでしょうか?」


早急な事件の解決のために人力したい。それと同時に探偵になれる機会だと直感して、月歌は名乗りを上げた。

平成の世に古い考えをもった源之助の健在であった頃なら、女である月歌は発言することは出来なかった。

しかし、この場に彼女の行動に口を出す者は存在しない。


「頼むよ、現状じゃ誰が推理をやっても変わらないし」


本来なら探偵を名乗る雨田が推理を始める場面なのだが、彼はただ笑みを浮かべたままだった。


「雨田さん、先程の話を続けてください」


「えー…警察の車があり、事件が起きたのだとすぐに理解しました。

ただの民間人に起きた事件なら、僕はこの場には現れません。

これが普通ではないとても奇妙な重大な事件の匂いがするので、僕はこの事件を解きに来たのです」


推理を開始した月歌。まず彼が偶然屋敷の前を通った経緯けいいを話したこと。

“普段はこの屋敷前を通らない”そう証言した。彼が犯人だと仮説を立てれば犯人らしくも見える言葉。

しかし、容疑者は彼を除き、親族八名に加え月歌自身、外部犯もいるのだ。


月歌は推理小説の主人公になったつもりで考える。まず雨田を犯人と仮定した際、矛盾を感じた。



雨田が犯人ならば訳もなく現場には近づかない。そればかりか、周辺を避け、近づかない筈だ。

仮にも探偵を気取りたい人間が、わかりやすい行動で、自ら犯人だと名乗る真似はしない。

反対に雨田を犯人だと仮定すれば、このタイミングで自ら屋敷に訪れたのは、小説の犯人らしい行動。


「あの一つ伺っても?」

「なんだい?」


月歌は一先ずはこの家と雨田の繋がりの有無で、判断をつけることにした。


「この家を知っていますか?」

「有名だからテレビで名前を聞いたくらいかな…あとは知らないね。ちなみにここに来たときに初めてこの家の場所を知って…」


雨田がまたもや話を延ばす。


「ええ、あとは…、今日亡くなった曾祖父の雷鳴我門源之助をご存じですか?」


家に恨みがなくとも、当人が恨みを買う。それは富と地位のある屋敷の当主であれば尚更ありうる。


「さあね……」


雨田は“知らない”と言って目をそらす。


「父様は雨田さんをご存じですか?」


月歌は父に確認を取る。


「いや、私は入り婿だからこの家系のことは…陽歌さんは知っているか?」

「いいえ、私も聞いたことがないわ」


分家の伯父夫妻も、はっきり、雨田家に雷鳴我門家とつながりはない筈だと頷いた。

となればつながりのないと自他共に認めた雨田が、この屋敷に意図的に現れることはない。

そして犯人として名が上がることもまずないだろう。


月歌はあくまで頭にある仮説ではあるがと前置いて、全員に推理した内容を話す。


「確かに現時点で雨田は犯人ではないとわかった」


もちろん鑑識捜査などで雨田のDNAが見つかれば話は別だ。

それはこの場にいる誰にでも言えることではある。


「雨田のことは解決したとして、犯人はまだ見つかっていないんだが…」

「そうですね…それは刑事さんにお任せします」


月歌はあくまで雨田について解っただけで、他の親族のアリバイは聞いていない。

なにより月歌自身も容疑者と仮定される立場なのだ。


「君、よかったら僕の助手になりなよ」


雨田はまだ事件の捜査も終らぬ間に、月歌を助手にスカウトした。


片瀬や雲松、親戚一同は唖然としている。もちろん、月歌も開いた口が塞がらない。


「助手…ですか?」


月歌は一度冷静になって考えた。推理小説を初めて読んだその日から探偵に憧れている。

そして相手はその小説の登場人物のモデルで、自分にとってはまたとない良い話である。


「月歌、私達は反対はしないよ」

「ええ、止める人は多分いないから、これからは好きなことをやっていいのよ」


全員に反対されると考えていた月歌は両親の言葉に驚く。


「儂らも認めるわけではないが、不良になられるよりはマシだからな」


伯父夫婦達も反対はしていない。


「いえお誘いはとても嬉しいのですが…」


月歌は首を横にふり、きっぱり断った。

雨田について行こうと、身内に咎めるものはいない。ただ彼女は助手になりたいわけではなかった。


「いやしかし、君をこのままにしておくのは勿体ない!」


雨田は新たな条件で月歌に詰め寄る。


「あの…?」

「もう助手でなくても構わないさ、君も探偵になればいいよ」


雨田は自分のところで探偵になるべく知識を学べば良いと告げた。

月歌は探偵になれるなら、と雨田の提案に快く了承する。


「盛り上がってるトコロ悪いんだが、まだ取り調べの最中なんだよね…パトカーに入りきらないくらい、大所帯すぎるけど」


片瀬は屋敷内にいる者ののアリバイや犯人が解るまでは、この家から人を出したくない様子だ。


「片瀬さん、餡パンと牛乳です!!」


先ほどから姿の見えなかった雲松は、片瀬の頼んだ物を買い出しに行っていたようで、それを袋ごと渡した。


「僕としては早く彼女を連れて事務所に帰りたいのだけどね」

「は?何を馬鹿なことを言ってるんだ! そんなに帰りたいなら完全なアリバイを証明してから言え」


雨田の無実は断片的に証明されたものの……雲松は買い出しに行っていたので、そのくだりは見ていない。


「雲松、お前が頼んでもいない物を買い出しに行っていた最中に、偽探偵雨田は無実になった」

「え?」


片瀬の話に雲松は衝撃を受け、雨田のほうを見る。


「しかたがない、あとは彼女の無実を証明したら良いんだね?」

「…もうそれでいいよ!」


自棄やけになった雲松は雨田に反論することも諦めた。


「では、今度は僕が君の無実を証明しよう」


雨田は顎の下に手をやり、探偵のようなポーズを決める。取り調べを始めるために、和室の大部屋から洋間の客室へ移動する。

室内は片瀬と雲松、月歌の四人のみで、四方に置かれたソファに、雨田と月歌、片瀬と雲松がそれぞれ向かい合う。


「えー君はたしか…殺害された源之助氏の曾孫、月歌さんで、君の年はいくつかな?」


雨田は手帳を開き、質問内容を確認しながら話を進めていく。


「16です」


雨田が頷きながら左手にペンを持つと、証言を手帳に書き綴る。


「君は驚かないんだね」

「何をですか…?」


次の質問を待っていた月歌に、聴取とは関係のない話をし始める。


「いや、君は作法に煩そうな家庭に生まれた子だから」

「あの…意味がよくわからないのですが」


言葉の意味がわからない月歌は、首をかしげる。片瀬と雲松もまた無駄な会話が始まるのだと、呆れながら様子を見ていた。


「まず僕は左手でペンを持ったね」

「そうだったか?」


片瀬と雲松はその動作に少しだけ反応を見せた。月歌は何も変わらなかったのだと説明する。


「人間には右利きが多く、左利きは少数。だから無意識的に相手は右利きだと認識している」


雨田の言うことは極論のようであり、確かにその通りだとも言える。

断言しているようにも見えて、相手に判断させる余地もあるのだ。


「そうなのですか?」


月歌は左利きなので、右利きの意見はよくわからない。その為、向かって右の片瀬に問いかけた。

片瀬は普通に答えにくい質問をされたと言わんばかりに考え込む。


「これまで聞かれたこともなかったから、わからないな」


月歌は雲松にも同様に尋ねるが、彼も明確に答えられなかった。


「単刀直入に聞くけど、君は左利きなのかな?」


雨田は突拍子もない問いを月歌に投げ掛けた。


「はい」


雨田の推察した通り月歌は左利きである。


「彼女はペンを持っていたわけでもないのに、どうしてそう気がついたんだ?」

「偶然ですよ、月歌さんが右利きならわざわざ片瀬さんに意見を聞きませんよね?」

「それは、確かに」


雲松は初めて雨田の言葉に同意した。


「話がそれたが…君はどうしてそうも冷静で、表情を変化させないのか、気になってしまったんだ」


曾祖父が亡くなっても涙一つ見せないのは、月歌だけではない。現に誰一人として涙を流してはいなかったのだ。


「最初に刑事さんに話した通り、曾祖父にはいい思い出がありません」


月歌は自分が犯人だと疑われても、証言を偽ることなく正確に語った。


「年齢をふまえれば、いつか屋敷から解放されると思っていました。ですが、殺意を抱く程の強い憎しみではありませんでした」


月歌はただ屋敷に閉じ籠り、曾祖父が亡くなることで解放される日を待っていた。


「解放って…死体を視たわけではないが、曾お爺さんならボケてヨボヨボになっているだろ」


月歌は源之助が床に伏せてから、一度も姿を見ていない。呆けたと断言はできないが、恐らくそうだろうと推測して月歌は頷く。


「まあ普通なら世代交代してる年だろうし、そんなお年寄りに君の自由を制限する実権があるのかな?」


ただ曾祖父からの命令に従ってきた月歌にはわからなかった。


「その話は後にして、今日の最初の行動は?」


片瀬、雲松は“ようやく取り調べらしい話が出た”と安堵する。


「時間はわかりませんが…私が眠っていた頃に屋敷のお手伝いさんが慌ただしく走って来て、曾祖父が亡くなったことをききました」


月歌は起きがけに訃報を聞いて、時計を確認する時間などなかったと、納得できる理由を述べた。


「たしかに起きたばかりでそんなことになれば、時計を見ている余裕はないね」


推理小説では登場人物が行動していた時間をきっちり話すが、現実の人間に物語のような正確さを求めるのは不可能だ。


「ではまだ時間は確認していないね?」


雨田は右腕を月歌に差し出して内側についた腕時計を指さす。月歌は反射的に文字盤の時刻を見る。


「あら、まだ一時なんですね」

「まだ?」


片瀬と雲松は唖然とする。月歌はいつも午後の2時に起床する。

そのため一時は早い時間だと感じたのだと言った。


「少しお手伝いさんに聞いてくるよ」


雨田は一度席を外し、月歌の起床時間を確認を取りにいった。


「君は学校には行っていないのか」


片瀬にとって月歌は出会ったばかりの他人ではある。


「ええ、曾祖父が女に勉学は必要ないと」


しかし、こうも世間と違う人並みではない生活を送っている月歌は、憐れにうつった。


「大佐、確認してきましたよ」

「雨田君、いつから俺の部下になったんだ」

「しかも大佐じゃねーし」


雨田は二人を無視して、聞き込みの結果を話す。


「まず女中さんが9時に月歌さんの部屋に行き、彼女はその時間に起床したことが確定しました」


雨田は手帳を見て話す。


「俺達は事件の発覚から10時30分52秒には着いた」

「成る程…結論から言うと、月歌さんが犯人の可能性はないね」


月歌はどうして自分の起床時間と、警察の到着した時間で推理が出来たのかを尋ねた。


「まず女中さんが言っていたのは月歌さんはほぼ毎日、朝方の四時まで小説を読んでいる。

だから一度寝ると10時間は睡眠をとるのか、そういう生活、まさにパラダイスだね!」


客観的に見て、月歌は常人ならば呆れる生活をしている。それを雨田は楽観的に考えた。

月歌は彼が何を考えているのか、まったく予想できない。それがとても気になった。


「もうこれ以上ダラダラ話をややこしくしなくていい犯人なのか?犯人じゃないのか?」

「結論からのべると、彼女は犯人ではないですね」


「わかりやすく説明するとひいお爺さんは朝の8時頃に殺害されていたから月歌さんが起きている筈がないんだ。

証拠に複数の女中が部屋で本を読んでいるのを、部屋の隙間から確認していた」


月歌はとても驚き、大きな声を発する。部屋を覗かれていたことに、気がついていなかったからだ。


「さすがにこの反応で犯人じゃないとわかりますよね?」

「そりゃ…いや、まだ断言はできない!!」


結論は出たのに、話を継続させる雲松に、片瀬はため息をつく。


「はあ…。たった今入手した検察の方の調査によると、遺体は仰向け、室内に飾られていた日本刀で一突き」


雨田は二人の代わりに検察からも話を聞いたと、高笑いする。


「二人は遺体を見ていなかったのですね」

「俺達は鑑識が済むまで現場には行けないんだから仕方ないだろ。刑事ドラマじゃねーんだからな」


月歌は雲松に強く言われ、‘すみません’と肩を落とす。


「恐らく、いや確実に外出はしていないであろうグウタラの月歌さんが、相手がお年寄りとは言え、一髪で急所を狙えますか?」


雨田の発言に、片瀬や雲松は納得せざるを得なかった。


「これで君の無実は証明されたね」


雨田清斗、彼は胡散臭く信用ならない、怪しげな雰囲気を持つ男。それでいて宣言した通り、納得できる推理で無実を証明した。


雲を掴むかのように、彼の思考は読み取れない。

それほどの実力を持ちながら雨田はなぜ正式な探偵ではないのか、なぜ主人公の秋火愁のモデルとなったのか、月歌は彼という人間に興味をひかれるのだった。

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