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三十三話「海ですよ海」

_○/|_ (無言の土下座

 前回までのあらすじ

 D級昇格試験中、DQNが意外とDQNしないので割かしスムーズに進む一行。

 きもい蜘蛛とか出てきたけど最初の村について一安心したけど村の女性がよく姿を消すという話を聞いて変なフラグを感じるも港町セトノスに向けて出発。





 という訳で ”港町セトノス”にやってきたのだ。


 久しぶりの潮風を感じつつ街中を進んでいく。


「やっと着いたわね……。まずは体を拭いてさっぱりしたいわ」


 ここにつく前の村からまともに体を洗えていないのが気になるのか、イレーヌさんは自分の身体を見回しつつ匂いをチェックしている。


「まずはギルドに報告だぞ、テメーら」

「わかってるわよ。あんたらみたいなガサツな男どもは気にしないだろうけど繊細な女の子の私達は気にするのよ!」

「へっ、女の子……ねぇ?」


 煽るような笑いをする”魔天狼”のリーダー、カールに拳を握るイレーヌさんを見て苦笑いが出てしまう。なんだかんだでうまくやれてるんだよなぁ、こいつら腕は確かだし。こうやって小馬鹿にしてくることはよくあるけど、イレーヌさんが反応してそれを俺達がなだめるというパターンまで出来てしまっている。


「初めて見たけど海ってでっかいわねぇ」

「クロエさんも海見たのは初めてですか。なんというか壮大ですよね」

「私は何度か見たことはあるが何度みても見飽きぬ光景だな」

「今回はお仕事ですけど、またプライベートで来たいですよね。今度はもっと暑くなってからとか」

「ん? 主よ、なぜ暑くなってからなんだ」

「えっ、ほら海水浴とか」

「かいすいよく……?」

「だから海で泳いだりビーチで楽しんだり……とか、ですね……」


 なんだか水着が見たいという風に言っているようで恥ずかしい。イレーヌさんも信じられないみたいな目で見てくるし後半の言葉が小さくなってしまった。


「海で泳ぐなんてあんた自殺願望でもあるの?」

「えっ!?」

「海の中にだって魔物がうようよしているってのにそんな所で泳ぎたいなんて正気の沙汰じゃねぇな」

「えぇー!?」


 海の中にもいんの、魔物……。


「じ、じゃあどうやって泳ぐんですか!?」

「だから泳がねぇつってんだろ」

「あんたほんと時々変なこと言い出すわよね」


 えぇー、泳がないの? 海なのに? そんな海に価値あんの・・・。ちょっと待ってそれじゃあ女の子の水着姿とか波打ち際でキャッキャウフフとかないってこと? なんなの海として恥ずかしくないの? うわー駄目だ、もう一度海を見渡してみたけどもう全然壮大に見えない。ただの水たまりじゃないか


「アホなこと言ってないでさっさとギルド行くぞコラ」






 ギルドに着いて報告を済ますとパーティ毎に個室にて面談をするので順番に待っててほしいと言われた。


「面談って何を話すのかしら? こんなことするなんて聞いてなかったから何も考えてなかったわ」

「事前に話さないということは即座に質疑応答できるか試される、とかですかね……」


 少し不安になりつつ待っていると先に入っていた”満月の森”のメンバーが部屋から出てきた。すぐさまどんな内容だったかを聞いてみるも後の組に教えてはならないと言われたとのことで詳細は分からないまま部屋に入るように呼ばれる。



「失礼します」

「ああ、入りたまえ。そこのソファーに座ってくれ。……さて、私はここのギルドの支部長をしているものだ。面談とはいったがそこまで堅苦しいものをするわけではないから適当に崩してもらってもいい。では聞きたいことがいくつかある」


 そこから旅の感想や家族のこと、なぜ冒険者になったのか、将来の夢等を聞かれ、最後に他のパーティについて聞かれた。


「そうね、”満月の森”はメンバー同士の連携がうまくとれていて一緒に戦っていても安心できる感じかしら。人柄についても信用できるわ」

「では、”魔天狼”はどうかね」

「……あいつらは最初やたら偉そうにしてて正直こんな奴らとやっていけないと思っていたけど、試験に入ったら思ったよりちゃんとしてたわね。試験の開始時にふざけていたけど ”満月の森”のメンバーと私たちで注意したらそれ以降は真面目にやってたみたいだし。時々こっちを小馬鹿にしていてムカつくけど」

「……なるほど。他には? 実力的にはどうかね」

「実力は問題ないわね。問題はないんだけど……」

「なにか疑問が?」

「なんていうのかしら……。剣速とかは私とほとんど変わらないのよ。ただ、立ち回りがやたら丁寧に見えるのよね、一撃一撃に余裕があるように見えたの。それがちょっと気になったわね」

「ふむ……。聞きたいことはこんな所だな。では下がってくれ…………あぁ、次の組にどういった内容を話したか聞かれても答えないでくれ」



 部屋を退室し、”魔天狼”に部屋に入るように伝えてから一息つく。


「他のパーティの評価を聞くのが目的だったみたいですね」

「まぁ、そうみたいね。”満月の森”はともかく”魔天狼”のやつらが私達をどう評価するのか気になるわね……」

「そういえば、さっき言ってた余裕を持ってるって話なんですけど、あの人達初めてみる魔物相手に右往左往してたこと結構あった気がするんですけど」

「言動はね……。その割にはうまく間合いをとってたの。なによりいざ攻勢に出るって時に攻撃の際の焦りが全くなかったのよ。普通、よほど戦い慣れてないと攻撃の際に焦りが顔に出るものだわ。相手の攻撃方法、攻撃速度がわかってないのだもの。間合いをとって防御に徹してるならともかく、攻撃に移るってことは大抵は防御が間に合わないっていうリスキーな行為なのよ。魔物相手じゃ致命打をうけかねない、誰だって有効打を早く与えたいと焦りの気持ちを持つはずだわ。あいつらはその際の行動が無くないんだろうけど、すごく薄かった気がしたわ。戦い慣れてるって感じもするけどなによりこの程度の敵ならどうとでもなるって感じたわ」


 まじか。全然気づかなかった……。というか戦闘中そんなこと確認してる余裕ないし……。


「まぁ私が感じただから確証もないけど……。そんなことより身体を洗ってご飯いくわよ!」





「まぁ座りたまえ。”魔天狼”の諸君」


「…………」


 向かいにあるソファーに踏ん反りかえっている支部長に対し無言で座る。


「さて何から質問しようか。そうだな……将来の夢など答えて貰おうかな」


「そういうのはいいから、とっとと本題に入ってくれ」


 くっくっく、と笑う支部長に対し少し苛立った声で対応する。


「ではまず、”満月の森”のパーティの評価から聞こうか」


「”満月の森”だが個々の実力、連携、人柄も問題ないだろ。元々、同じ村に住んでいた為か連携うまく取れている。Dランクに上げても通用するだろ………もう一度いうが本題に入ってくれ」


「これも一応本題に入るのだがな」


「あんたが聞きたいのはそこじゃないだろう」


「ではもう一組の評価を聞こうか」


「一言でいうと”異質”だな」


「異質?」


「ああ、報告書で経歴、レベル等を見たが内容と合致しない部分がいくつもある。レベルが少しは上がっているかもしれないがその程度では説明できないような動きをする時がある。例えばイレーヌとクロエだ。彼女らは時々、凄まじい瞬発力や怪力を見せる時があった」


「獣人種はもともと怪力だろう」


「彼女は片手で持った剣でオークを縦に両断していたぞ。それが獣人種の標準なら片っ端からスカウトすることを勧めるぜ」


「……ほう。彼女はまだレベルも一桁だったな。確かにそれは異常だ」


「イレーヌの瞬発力も大概おかしいな。俺の目から見ても速い。だが最初に言った通り二人とも常にその状態というわけじゃない。ここぞという時にしか使っていない所を見ると制限があるようだ」


「なるほど……。ではハルトムート、彼はどうだったかね」


「……わからない」


「わからない?」


「ああ、攻撃方法が見ていても全くわからない」


「報告書によると魔術を使うと書いてあるが」


「魔術といっていいのかわからんなあれは。俺は魔術にはそこまで詳しくないが何度か貴族様と組んで狩りに行ったことはある。その時は杖を使い呪文を唱えていたんだが、あいつは杖も使わないし呪文も唱えていないんだよ」


「杖も呪文も使わない……ギマール家か?」


「ギマール家?」


「ああ、王都に杖も呪文も使わないで魔術を使うという秘術を持った大貴族がいたんだが何代か前に当主が急死してな、それ以降衰退し秘術も失われたはずなんだが……」


「でもあいつ平民出だろ。実際にあいつの出身地行って確認してきたから間違いないぜ」


「そもそも何故平民出で魔術が使えるんだ……。報告書では親族共に平民と書いてあったが実は親が高名な冒険者だったとかではないのか?」


「そちらも間違いなく報告書の通りだな」


「わけがわからんな」


「だから、報告としてはわからないとしか言えないんだよ」


「人物としてはどうなんだ」


「子供にしては落ちついてるし知識もある方なんだが時々わけのわからんことはいうな。さっきも海で泳ぐとか言ってたぞ」


「海で泳ぐだと……? 正気か?」


「まぁでも基本はよくできた子供って感じだがな。こっちは最初の方かなりの喧嘩腰で接触したんだがその後も隔たりなく接してくるしな」


「そういえば、最初にずいぶんやらかしたそうじゃないか。両パーティからも最初はひどかったと言われたぞ」


「うっせぇな。加減がわかなかったんだよ! そもそも最初は喧嘩腰で接しろってギルド側からの命令だったじゃねーか!」


「まぁ今回はかなり若い者に偏ったパーティだったからな。昇格する上でそういった場合にもしっかり対応できるか試したかったのだ」


「ったく。その後の演技をどうするかかなり悩んだんだからな……! しかし試験の度に毎回こうやって調べてたりしてたのか?」


「今回は特例だよ。だいたい10歳程度の子供、それも平民の子供がたかだか一年程度でDランク試験に臨む、ましては魔術を使うなんて聞いてもうさん臭さしか感じぬだろう?」


「まぁそりゃそうだろうよ」


「そういえば、正確にはパーティメンバーじゃないがハルトムートの奴隷となっているイリスという女性だが彼女はどうだった?」


「彼女が一番普通だな。その普通なのもおかしいんだが」


「どういう意味だ?」


「奴隷なのに普通に暮らしてるんだよ。仲間からはもちろん主人であるハルトからも雑に扱われていない。普通の家族とか友人みたいに扱われている。後はよくわからないが暇があるとハルトと手をつないでいるイメージだな。ああ、そういえば彼女が使っている剣は普通の剣だったな。イレーヌとクロエのはミスリル製だったが」


「なぜあのランクの者がミスリル製の剣を持っているのだ……」


「ハルト曰く掘ったらしいけど、詳細はわからん」


「まるで意味がわからん。確かにお前の言った通り異質だな……」


「まぁ報告はこんな所だ。なんだかんだで俺達も疲れてるんだ、帰っていいか」


「あぁ、ご苦労だったな。また聞きたい事があった際は呼ばせてもらう」



 やれやれやっと終わったぜ、と思いながらギルドを出る。そこでふと何かを聞き忘れてたような気がするが思い出せない。


 まぁいいか、どうせこの街には3,4日いるんだ。思い出した時に聞けばいい。





待っててくれた方いないと思いますがこれだけ投稿の間を空けてしまい大変申し訳ありません。

今後はどうにか月一レベルでやっていきたいと思います。

相変わらず誤字脱字あると思いますが投稿優先でやらせて頂こうと思います。

いつもご指摘していただきありがとうございます。直さないという訳でもないので今後もご指摘いただけると大変助かります

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