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三十一話「Dランク試験開始」

前回のあらすじ


Dランク試験の打ち合わせに向かったらすっごい罵倒されて幸先が不安に。

満月の森のリーダーは親馬鹿だったり忍者が忍んでたりした。

「では、行ってきますね」

「おう、気を付けてな。命あっての物種だぞ」


 お前らが帰ってこないと宿屋としての収入が無くなっちまうからなと冗談を言うオイゲンさんに笑って答え、横にいるアマーリエちゃんに目を向けるとイレーヌさん達と会えなくなるのが寂しいのか涙目になっていた。


 クロエさんはそんなアマーリエちゃんを抱きしめ、イレーヌさんは大丈夫よ、と言いながら頭を撫でている。


「僕らは無事に帰ってきますから大丈夫ですよ。心配しないで待っててごふっ」


 なんでや! 心配させないように頭撫でようとしただけじゃん! そういう流れだったよね? 他意とか全くなく接したというのにひどくない? あといつもは覚悟しながらだからまだ対応できるけど今回は喋っている最中にくらったからマジ痛い。


「あんた出発前だっていうのに何やってるのよ。……締まらないわね」

「俺のせいなの!? 安心させようとしただけじゃん!」

「……素が出てるわよ」


 おっといけない。腹パンのせいで口調が雑になってしまった。


「もうバレバレなんだからそっちの方で通せば?」

「いや、最初からこっちで通してたから今更なんか恥ずかしくてですね……。あと僕の紳士的なイメージも崩れてしまいますし」


 無言で有り得ねーよ、みたいな視線くれるのやめてくれませんかねぇ。思考はともかく発言は紳士を意識するよう頑張っているんですよ、一応。ただ脳直で発言しちゃったり行動することが稀によくあるだけで。


「ともかく、僕らは無事に帰ってきますから心配しないでください」


 アマーリエちゃんに微笑みながらそう言うと笑顔で頷いてくれた。可愛い。思わず手が伸びかけたけどオイゲンさんの右足に重心が移っていくのが見え踏みとどまる。


 しかし帰ってくるか……。すっかり忘れてたけど実家帰ってないな。年一で帰ってこいとか言われてたっけ。そうだな……この試験が無事に終わったら一度帰ってみるかな。みんな元気でやっているだろうか。


「そろそろ行かなければいけない時間ではないか、主よ」

「おっと、ではそろそろ行きますか」


 オイゲンさん達に最後の挨拶をしてギルドに向かう。夜営道具などの荷物はすでに昨日、護衛する馬車に詰め込ませて貰っていたので小物が揃っているか確認しながら歩く。ギルドに到着するとすでに”満月の森”の面子は揃っていてあちらも小物や武具の最終チェックをしていた。


「おはようございます。ちょっと遅かったですかね」

「おはよう。いや、そんなことはない。まだ護衛対象の商人も、もう一つのパーティ”魔天狼”の彼らも来てないしな」


 彼らはまだ来てないのか。しっかし何度聞いてもすごい名前だな。


「そういえば、彼らの名前なんでしたっけ? 打ち合わせ中に聞いたはずなんですけど覚えられなくて……」


 正直、人の名前覚えるの苦手なんだよね。”満月の森”のメンバーの名前覚えるのが精いっぱいだったし彼らのパーティ”魔天狼”の名前が印象的過ぎて聞いたはずなのにまるで覚えていないっていう。


「リーダー格の奴がカールで少しぽっちゃりした奴がマルクでひょろっとしてるのがセドリックね」


 言われた名前と記憶の中の彼らの姿を照会しているとユリアさんが男性と並んでこちらに歩いてくる。


「今回、あなた達の護衛対象になる商人のアルバンさんよ」

「護衛をさせて頂くパーティの一つ ”満月の森” のリーダーをしているクルトです。まだEランクの身ですが必ず護衛を完遂させますので任せてください」


 クルトさんに続きユリアさんの横に立っている40代くらいのぽっちゃりした体型で温和そうな顔をしている商人さんによろしくお願いしますと挨拶をする。見た目とかで嫌な顔されないか心配だったけどアルバンさんは笑顔を崩さず、こちらこそよろしくお願いしますと返事を返してくれた。


「三組のパーティと聞いておりましたがまだ一つパーティが来てないようですな」

「申し訳ありません。後でこちらから注意を致しますので……」

「いえいえ、まだ時間まで若干ありますので大丈夫ですよ」


 5分ほど経つと”魔天狼”のメンバーがギルドに入ってきた。


「カールさん、もう護衛対象の方が着いていますのでご挨拶をお願いします。こちらが商人のアルバン様です」

「”魔天狼”のカールだ。俺たち”魔天狼”がいる限り安全だ。むしろ俺たちだけの方がいいくらいだろう」

「これは頼もしい言葉だ。カールさんよろしくお願いします」


 ”魔天狼”の面子は商人の言葉に気分を良くしたのか、こちらにはそれ以上何も言わずに得意げにしている。


「では全員そろったようなので出発してください。先日伝えた通り今回は、三つの村を経由した後に港町セトノスに向かい港町に着いた後は同じルートで戻ってきてください。村での滞在の際ははすでに各村と町のギルドに連絡が言っておりますのでギルドの方で宿泊施設を用意してあります」


 道中の飲食もアルバンさんが用意してくれるので俺たちにかかる費用はほとんどない。あるとしたら武具のメンテナンス代くらいで、あとは飲食を用意して貰えるけど一定の量を用意して貰えるだけだから非常用とか物足りなかったりした場合の追加の飲食代ぐらいらしい。


「ではユリアさん行ってきますね」

「クルトさん達もイレーヌさん達もご無事に戻ってきてくださいね」



 荷物を積んだ馬車にアルバンさんが乗り正面から右側に”満月の森”、左側に”魔天狼”、馬車の後ろに俺達という配置につく。最初の村まではこの配置で進み、村に着くたびに右回りに交代していくことになっている。夜営の見張り番も3時間ごとの交代制となっていて順番も一日ごとにズレて公平にしている。


「後ろの配置ってどう歩けばいいんですかね。やっぱり後ろを警戒しないといけないし後ろ向きで進むんですか?」

「そんなこと器用に出来るならいいけど出来るの……? 転んで無駄な怪我する可能性もあるし普通に定期的に後ろの様子を見ながら歩けばいいんじゃない? そもそも護衛以外で森行くときでも後ろ警戒しながら普通に歩いてるじゃない」


 そういえばそうだ。護衛しないといけないという意識が強すぎて余計な事考えちゃうな。


「あまり気を張っていると最後までもたないからもっと気を抜いてもいいと思うわ」

「そうねぇ。まぁでも今日は少し力入ってもいいかもしれないわねぇ。一日目は経験がなくて慣れてないから力が入ってもしょうがないわ。二日目に入ればいい感じに力抜けるんじゃないかしら」

「そうだぞ主よ、あまり気を張らないでいつも通りでいいのだぞ。他のパーティを見てみろ、”魔天狼”なんか本当に護衛する気があるのかというレベルだぞ」


 右側を見てみると”魔天狼”の面子が談笑しながら会話に夢中になっている。しかもジャンケンをして武器を誰か一人に持たすということをしている。それで咄嗟に動けるのか? 護衛しろお前ら。左側を見ると”満月の森”の面子は会話はしているが視線は軽く全体を見渡すようにしている。


 ”魔天狼”はともかく”満月の森”くらいの感じでいいのかな。むしろ”魔天狼”あれはダメだろ。全体の評価を下げられる可能性もあるしクルトさんに後で報告しておこう。俺らが言っても反発くらうことは目に見えてるからね。決して奴らと関わることが面倒とかそういうことではないよ。


 ゴブリンとの遭遇戦を3回ほど行いつつ3時間ほど進み、昼休憩の時間となった。俺らの食事はアルバンさんから支給されるのだが、これはパンなのだろうか・・・? 

 ものすごく固いんですが。それと少量の野菜が入ったスープなのだけど味がほとんどしない……。

 支給されてるものだしアルバンさんも同じ食事をとっているので文句は言えないがこれで栄養とか足りるんだろうか……。毎食これなんだろうか。くそぅ、道中でウルフが出れば肉がゲットできたというのに。しかしながら、うちのメンバーで料理が出来る人がいない。女性が3人もいるのになぁ。


「懐かしいな。小さい頃はこういった食事だったものだ」

「……え? クルトさんの村はこれが普通だったんですか?」

「冒険者登録する前はこれが普通だったな。稼げるようになってからはもっとマシになったが」


 そういえば俺の家でも土魔法で畑仕事する前はこんな感じだったかも。そう思うと今はだいぶ良い食事をしてるんだなぁ。オーク肉食い飽きたとか村のみんなに言ったら恨まれそうだ。



 食事が終わり、残りの休憩時間中にのんびりしていると女性3名が少し外すわと言って森の奥に向かっていく。どうしたんだろ・・・あ、あーそうだよね。ここ森だもんね。女性陣が外している最中、男性陣がそちらに向かわないように見張りつつ俺も今のうちに済ませとこうかな、と考えていると女性陣が戻ってきた。でも、ここですぐ自分も外すと言ったらマナー違反かなぁとなんとなく思い我慢することに。


 本日の昼休憩前半の見張り当番”魔天狼”と交代をする。”魔天狼”の面子は食事の内容にあからさまに不機嫌になっている。さすがに口に出しては言わないが文句がありそうにアルバンさんを見ている。


 昼休憩が終わり何度か戦闘と小休止を繰り返しつつ進んでいると日が沈んできたので夜営の準備を始める。

 本日は一番目の見張り当番となっているので多めに焚き火用の薪を用意する。これは2番目の見張り当番が、6時間連続で休める1番目と3番目に対し3時間休憩してから3時間見張りをした後、また3時間休みになっているため負担軽減のための措置になっている。


「一日目、無事に終わりましたね」

「そうね……。最初はどうなるかと思ったけど意外とあいつらと接することも少ないし、このままなら問題なさそうね」


 焚き火を囲みながら今日の感想と反省点をおさらいしていく。


「でもちょっとご飯が食べたりないわぁ」

「護衛依頼中にこんなことを言うのはあれですけど途中でオークかウルフが出てくれたら助かったんですけどね」

「出たとしても誰か捌けるのか? ちなみに私は無理だぞ」

「僕も料理はちょっと無理そうですね……。単に熱することはできますけど」

「私も料理は嗜んでないわねぇ」

「なんで4人もいるのに一人も料理できないのよ……」

「そもそも調味料と調理器具なくないですか」

「次の町で買おうかしら。料理にチャレンジしてみたい人、挙手!」

「……」

「……」

「……」

「なんで誰も上げないのよ!」

「イレーヌさんはどうなんですか」

「……一度みんなで順番にやってみることにしましょう」


 いいけど前世でもあんまり料理したことなかったし、今世でも手伝いとかはしてたけど料理自体はしたことないんだよね。前世の料理内容だって醤油ありきだったからなぁ……。あと他3人の料理に対しての知識が気になる所だ。試験中に自分たちの作った料理で食中毒になるとか恥ずかしすぎる。出来によっては最悪、この試験中は我慢した方がいいかもね。


「まぁ料理はともかく、今後のことね。この後、見張り番が終わった後、自分たちのテントで寝るわけだけど私としては寝てる最中に襲われないかまだ不安ね」

「えっと、それはどっちの意味でですか?」

「人間と魔物、両方よ。ああ、誤解しないで。あんたのことはもう信頼してるわよ」


 確かに他人に自分の命を任せるだけでこれだけ不安なのに男性の割合が高い中で寝るのは相当不安に思うだろう。


「最悪、クルトさん達の番の時だけ寝ることにします? 妻帯者のあの人たちならたぶん大丈夫でしょうし」

「どうかしら……。妻帯者と言っても男だし。それに私達みんな美人だから安心はできないわね」

「誰ですかイレーヌさんにお酒飲ませたのは。見張り中なのに全く……酔うとめんどくさいんですからやめて下さいよ」

「酔ってないわよ! 今のはちょっとした冗談に決まってるでしょ! というか誰がめんどくさいですって!」


 イレーヌさんからのチョップをガードし、疑問に思ってたことを質問する。


「というか僕が同じテントで寝るのは本当にいいんですか」

「……信頼してるって言ってるでしょ。外で寝かすわけにもいかないし私達全員が問題ないって言ってるんだからいいのよ」


 外で寝る以外にもクルトさん達のテントに混ぜてもらうという案もあると思うけど無粋なので言わないでおく。というかそこまで信頼して貰えると照れるぜ。


「男性云々はともかく”魔天狼”の人たちはちゃんと見張りしてくれるんですかね。今日一日のことを考えるとあんまり安心できないんですけど」

「さすがにあいつらも試験落ちたくないだろうし、そこはちゃんとやると思うけど……」

「だが警戒は必要だろう。なんなら今日は私が念のため寝ずの番をしようか」

「イリスの申し出は嬉しいけどさすがに悪いわ。貴方はハルトの奴隷なんだしこいつの為に働きなさいよ」

「僕としてもイリスさんだけに任せるのはちょっと……」

「私は奴隷なのだしこれくらいは普通だと思うがな。それに一日は寝なくても問題ない」

「それでも無しの方向で」

「……主は甘すぎる。失礼な発言をするがそんなことではこの先苦労すると思うぞ」

「それでどうします? 順番で見張ります?」


 まさか見張りを見張ることになるとはな。


「……いえ、初めから躓きたくないわ。ここは奴らを信じて寝ましょう。ただ武器だけは寝る場所の近くに必ず置くこと」

「わかりました。じゃあ念のためテントの入口の前に後で土魔法で落とし穴作っておきます。何もないよりはマシでしょうし」


 周りを警戒をしつつ雑談をしていると”満月の森”のメンバーが起きてきて交代の時間となった。


「じゃあ、覚悟を決めて寝ましょう。一応警告のためにテントの前にナイフを刺しといたしナイフの前には大きめの落とし穴をハルトに作ってもらったわ」


 みんな覚悟は出来たみたいでテントの中で横になる。俺も覚悟を決めないとな……。隅っこにいるが女性のいる中で眠るのはなかなかに緊張する。

 とりあえず意識しないで羊でも数えてよう。寝れなかったら寝れなかったで見張りになるしね……。











あらすじ適当すぎぃ!

いつも読んで頂きありがとうございます。


あらすじはもっとちゃんとしたのを考える予定です。

作者の目が節穴すぎて何度見直しても誤字が減らないという

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