二十七話「奴隷商にて」
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「この前のミスリル持って行った方がいいんですよね?」
「さすがに手持ちのお金じゃ足りないんじゃない?物々交換できるか分からないけど持って行った方がいいでしょ」
「・・・あれを持っていくのかぁ」
「・・・?どうかしたの?」
「いやちょっと、ミスリルって魔法銀って言われてるじゃないですか。それで魔法関係で何か反応あるかなって色々やってみちゃいまして」
「・・・あんたまさか」
「いや、砕けたり品質が悪くなったとかじゃないんです。まぁたぶん見てもらえばわかりますから部屋にいきましょう」
部屋のカギをあけベッドの下に隠してあるミスリルを取り出す。
「これなんですけど・・・」
「・・・えっ?なんか魔力帯びてない?」
「この前試しに魔力付与を使ってみたんですよ、そしたらあっさり付与が完了しちゃいまして」
どうやらミスリルに魔力を流し込むとある程度その魔力を内に入れて保存できるようだ。このミスリルはだいたい大人のこぶし二個分くらいの大きさで20MP分くらい保存できる。たかが20MPと思うかもしれないけど成人男性の2倍の魔力を内包していると思うと結構すごいんじゃないかな。
試しに鑑定してみたけど
魔力を内包したミスリル
まんまやで。
物質に対しての鑑定はもう期待してない。ちょくちょく使ってるのに全然スキルレベル上がらないし。
「このまま持っていった方がいいんですかね、それとも適当に魔法使って空にします?」
「・・・このまま持っていきましょう。この魔力量が入っているなら一般人でも何かを感じるんじゃないかしら。適当いって値段を釣り上げましょう」
クロエさん意外と黒い。言い様によっては詐欺になりますぜ。
だがその考えはありだな。
「とりあえず、適当な商店で見てもらいますか。ちょっと釣り上げる自信があるので僕に任せて貰っていいですか」
二人に待っててもらうように頼み、ギルドの近くにある大きめの商店に入りミスリルを取り出して買取査定をお願いする。商会長を呼んでくるのでそこのソファに座って待ってくださいと言われたのでおとなしくソファに座る。
わざわざ商会長が出てくるあたり、期待が出来る。
「貴方が・・・?いや失礼。どうも、ここの長をしております、ベンノです。こんなにお若い方だと思わず驚いてしまいまして」
「どうも、ベンノさん。冒険者のハルトです。まぁ色んな方に驚かれているので慣れっこです」
「なんでも、ミスリルを売ってくれるのだとか」
「はい。・・・こちらです」
「・・・なるほど。この大きさですと金貨30枚といった所でしょうか」
「え?30枚ですか?」
明らかに適正価格だがあえてとぼけてみる。
これは普通のミスリルではない。魔力を内包したミスリルなのだ。
よく小説でみる「こいつ・・・これの本当の価値を知っている!」みたいなアレだ。
「子供だと思っていましたが・・・なかなか勉強していらっしゃるようですな」
よっしゃきたこれ。このミスリルどのくらいの値段になるんだろう。期待大だ!
「そうですな。では金貨32枚でどうでしょうか」
「・・・え?32枚ですか?」
そんな本気の声がでた。えっ?たった二枚増えただけ?ナンデ!?
「・・・すみませんが、いくら今ミスリルの需要が高まっていると言っても32枚が限界ですな。これで納得できないようなら他の店に言ってください。では、私はこれで」
そういって商会長が立ち上がり去っていくがそれをボーっとしながら見送る事しかできない。
へー、今ミスリルの需要上がってるんだ。へぇー。
立ち上がり、商会を出て二人の元に戻ってくる。
「ダメでした」
イレーヌさんが無言のチョップを放った。
「というわけでミスリルの需要は上がってるみたいですけど、このミスリルに対しては特に反応は無かったです」
「反応あるかと思ったけど予想外ね・・・。とりあえず、先に奴隷商いってみない?具体的にどれくらいかかるか見てからでも遅くないわよ」
確かに。手持ちは金貨4枚ほどしかないけど買える可能性がないわけじゃない!
「一番安いので金貨5枚かね」
ダメでした。
なんでも教育の出来ていない人族の男の子で金貨5枚らしい。そこから容姿等が良くなればもっと高くなるということだ。
というかみんな目が死んでいる。人を売買している場所というだけでメンタルに響くのにこんな死んだような目で見つめられたら正気でいられなくなりそうだ。
そんな中、一人の女性に目が行く。銀色の髪をしていてピシッと立っている。その人は目が死んでいなく不敵な笑みをしている。ちょっと気になるな。傍で立っている奴隷商の人に聞いてみよう。
「・・・すみません、あの女性は?」
「ああ、最近入った没落貴族の元騎士さ、なんでも親父に借金の代わりに売られたようだ」
元騎士・・・。なるほど、確かにそんな感じするな。
「あの女性はいくらでしょうか」
「そうだな、金貨80枚ってとこか」
「た、たかっ。そんなにするの?」
あまりの値段にイレーヌさんが反応する。
「剣術Ⅱのスキルを持っているからな。見た目も申し分ない」
なるほど。剣術持ちなのか。
人族:女性
イリス・ヒルフェ(15)
Lv2 奴隷
HP 81/81
MP 18/18
STR・・・17
VIT・・・16
INT・・・7
DEX・・・11
AGI・・・16
LUC・・・5
スキル: 剣術Ⅱ 盾術Ⅰ 火属性適正
なるほど。貴族だったからかMPが高いな。
ステータス全体も申し分ないし、剣術だけでなく盾術もあるし即戦力だな。
だけど金貨80枚か。
・・・でもなんとかなるかもしれない。
「エルマーさん」
「なんだ?・・・なぜ名前を?教えていたか?」
「そんなことどうでもいいです。これを買いとってほしいんです。貴方なら価値がわかるでしょう?」
そういってミスリルを取り出す。
「ミスリルか・・・なぜ急に?」
「よく見てください。・・・いいですか。よく、ですよ」
「・・・なるほど。君も鑑定持ちか」
「僕を鑑定すればわかるでしょう?」
「なんだ・・・・知らないのか?同じ鑑定持ち同士だとスキルレベルが上の人物に対しては鑑定が出来ないんだ」
マジかよ。同じ鑑定持ちにMPのこといつバレるかヒヤヒヤしてたのに。
「しかし、魔力の内包されたミスリルか。どこで手に入れた?」
「ちょっと言えないですけど、正規の入手法ですよ。・・・それでいくらになります?」
「・・・俺には判断がつかんな。知り合いの商人を連れてきていいか?」
「もちろん、どうぞ」
20分ほどして小太りで白髪の入ったおっさんが部屋に入ってきた。
「・・・これだ。カール、どうだ?」
「・・・正直、判断つきませんな。魔力が内包されたミスリルの原石など初めて聞きますので」
「お前でもダメか・・・。相談だがこのミスリルとあの娘を交換でどうだ?俺としてもこのミスリルが金貨80枚以上になるかは賭けだが、少なくとも今の相場で31枚以上にはなる。だが、万が一このミスリルが金貨80枚以上で売れてもお前たちに差額を渡すつもりはない。ま、これは当然だがな」
なるほど・・・。相手からしたら最悪でも金貨49枚で済んでかつ万が一のデメリットより期待値の方が大きいと考えている感じか。
そう考えるとこちらのデメリットってあんま無いんだよね。元々が金貨31枚程度のものだったのがもっと高くなる可能性の物になったというだけで必ず高くなるわけじゃない。それを金貨80枚相当と扱ってくれるんだ。
一発狙いもいいけどやっぱり確実な利益がとれるならそちらにしたい。
「わかりました。その提案でお願いします」
商談はまとまり、没落貴族の元騎士を新たなパーティメンバーに加えることとなった。
感想でいろいろな指摘をして頂きましたので順々に直していこうと思います。
出来れば明日までに各話のタイトルを番号からわかりやすいものに変更して行く予定です。文章の方もともと酷かったのが指摘でもっと酷かったのに気づきましたのでそちらも順に直していこうと思います。
感想に対しても必ず返信をしたいと思っているのですがいかんせん時間が足りず、間に合っておりません。大変申し訳ないです。
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。