二十六話「廃坑掘るよ!」
本日の投稿です。
休みが明けてしまったので基本一日一話くらいの更新になると思います。
たくさんのブクマ、評価、感想をいただきありがとうございます。
今日は依頼を受けずに二人と身体強化魔法の練習をしている。
「魔力をもう詳細に感じられるならその魔力を動かして血液と一緒に巡らせる感覚です」
「・・・血液ってどう巡っているの?」
「・・・えっ」
心臓から左手の方を通ってだっけ?あれ合ってたっけ?
「・・・こう、心臓から左手、左足、右足、右腕、頭で戻ってくる感じ?」
「なんで疑問形なのよ」
「・・・要はイメージですから。実際の血液の流れとは別でも構わないんですよ」
「イメージ、・・・イメージね」
「じゃあいったん、少量の魔力を流し込みますね。出来るだけそれを維持してください」
魔力操作の特訓も効果があったようで二人は少量の魔力を流してもそれを感じられるようになった。ただ、今の所まだ渡した魔力を自力で維持することはできていない。
そんなことを続けて2時間ほど経った時に変化が訪れた。
<魔力付与スキルが上昇しました>
お二人のスキルだと思った?残念。俺でしたー。
「・・・僕の方のスキルが上がっちゃいました」
「ちょっとぉ!なによそれ・・・なんか納得いかないわ」
「いやでも、お二人に魔力を渡すためのスキルなので効率上昇にたぶん繋がりますよ。試しに魔力流してみますね」
「じゃあ、次は私に頼もうかしらー」
「・・・わかりました」
「じゃあ、手借りるね?」
クロエさんの手が俺の手を握る。いや、そんなにしっかりと握らなくても大丈夫ですしこれ恋人繋ぎですよね?
イレーヌさん、なんでジト目でこちらを見てるんでしょうか。訓練のためですよ?
「じゃあ流し込みます」
「・・・んっ」
「・・・・・・・」
もう慣れてきただろうに、なぜそんな吐息を。イレーヌさんはもうそんな反応しないんだけども。ただ、イレーヌさんに比べてクロエさんは魔力の操作が苦手みたいだ。これは種族的なもので獣人族は魔法を使うのに適した体をしてないとのことだ。きっとそのせいだよね。・・・そうだよね?
おっとそんなこと考えてないで自分のスキルで何が変わったか集中しないと。
といっても効果は歴然だ、流し込む際の抵抗が明らかに少なくなっている。流し込む量と受け取った時の魔力量の差がかなり小さくなってきてる感じ。
これならもっと練習時間を増やせるな。
本日はそこでおしまいにし、また2日後に訓練をすることにした。
最近じゃ、午前中で討伐依頼を切り上げることが多くなってきた。理由としてはオークをメインに狩り始めたので、一回の戦闘で荷物がいっぱいになるからだ。
この世界にも魔法の袋的なものはないか探したんだけど、あるにはあったが高価すぎてとても買えない。少なくても金貨数十枚単位とか無理に決まってるだろ。
ということで午前中に1匹仕留めて昼に戻り、もう一度仕留めにいくか魔法の特訓をするかのどちらかになっている。
ここ最近は午後の行動は7:3の割合で魔法特訓:オーク討伐になっている。
二人も早く身体強化を覚えたいらしくかなり必死だ。
そんな活動をさらに一月近く続けたある日、ついにイレーヌさんが流した魔力を維持することに成功した。鑑定で見ると確かに魔力操作Ⅰが増えてたので間違いないだろう。
本人は歓喜をしていたがすぐに問題が判明した。なんと集中力を維持しないといけないのでその場から動けなかったのだ。正確には動けるけど動くと魔力を維持できない。
イレーヌさんは今度は魔力を維持したまま動く訓練をしなくてはならなくなった。ただこの段階までくるとあとは慣れみたいなもんだからすぐ動けるようになるだろう。
自転車とかも乗れるまでが大変でそのあとはすぐ慣れちゃうでしょ?それと一緒一緒。
クロエさんはイレーヌさんから1週間ほど遅れて魔力維持が出来るようになった。そのころにはイレーヌさんは普通に歩く程度なら出来るようになっていた。
それからさらに1か月ほど経つとイレーヌとクロエさんは身体強化の魔法を維持しながら戦えるようになった。
まだ魔力操作が荒いから消費する魔力も多くて長時間利用は無理だけど、俺が魔力を渡せば5分は持つ。
あと、ついでに俺はEランクに上がった。Eランクは試験とかなく普通に功績をあげていけばいいだけだったからいきなり言われて驚いた。
そして今日、ついにEランクに上がったので廃坑を探索しようと思い一日休みをお願いしたらなにをするか聞かれ、面白そうだからと二人もついていくことになった。
「いいんですか?成果0の確率の方が多いんですよ?」
「いいのよ、なんとなく面白いそうだし」
「ふふっ、なら私もね。3人揃ってこそなんでしょう?」
「・・・では出来ればなんですが採掘用の道具を持って一緒に掘ってくれませんか?もちろん何か掘れたときは山分けです」
「もちろんいいわよ、場所はどこなの?」
「ええと、いつもの門から歩いて3時間ほどの所ですね」
「じゃあすぐ出発しないとあまり探索の時間がないわね、とっとと荷物もって行くわよ」
3時間かけて廃坑に移動し、入口の前で準備を整える。
たいまつに火を着け、廃坑の中に進む。たいまつって可燃性のガスが万が一出てた場合危ないよな・・・。
出来れば魔法で光を出せればいいんだけど。でも光の出し方がよくわからん。光は波がどうのこうのって聞いたことあるけど、波ってなんだよ。まぁ今は保留だ。とにかく進みながらソナーを使おう。
んー、今の所だと希少金属の反応はないなぁ。あ、これ魔法鉄っぽい。何も取れなかったら帰り際にとりに行こう。
「なにかみつかった?」
「今の所、魔法鉄くらいですねぇ。それにあんまり量も多くないみたいです」
「まぁ魔法鉄でもそれなりの値段で売れるけど出来ればもっと大物が欲しいわ」
「それにしてもそのソナーという魔法は危険かもしれないわねぇ、こんなことが出来るって知られちゃったら国や貴族がほっとかないと思うから絶対に私たち以外に言っちゃダメだからね?」
やっぱ便利すぎるよなぁこの魔法。廃坑だからこんな感じだけどちゃんとした鉱山なら最小のリスクで最大の成果得られるもんな。
ちょっとソナーの範囲大きくしてみようかな。
ん、んん!?これミスリルじゃね?やたら魔力の伝導率のいい反応がある。
ただ結構掘らないといけないな、どんだけ時間かかるかわかんない。
「お二人とも、たぶんここを斜め下に10メートルほど掘った先にミスリルがあります」
「ミスリル!?ほんとに!?」
「ただやっぱりかなり距離があるので人力だとどれだけ時間がかかるか・・・あっ」
「なによ、どうかした?」
僕はバカか?土魔法があるじゃん。なんで重い道具なんてもってきたんだろう、アホなんじゃないかな。
「魔法で掘ってみます。ソナーで調べた限りそこまで固い物質もなかったですし」
土に手を当て魔法を発動させる。やっぱ畑の土に比べると断然固いけどその分魔力で補えばいけるいける。今回はイメージとしてはドリルだな。ドリルは男のロマン。人が通れるくらいじゃないといけないからかなり大きめのドリルをイメージ。うわ、結構魔力くうなこれ。もう1か所掘れって言われても無理かもしれない。
だいぶ近くまで掘ったのであとは人力で掘っていく。そしてついにミスリルが姿を現す。銀色で大きさはバスケットボールくらいの塊だ。
念のため、ミスリルのとれた場所でソナーを使ったがめぼしい反応はなかった。
そしてクロエさんのテンションがマックスである。これを三等分にしても魔法鉄とミスリルを合金した剣が十分作れるらしく帰ったらさっそく頼みに行くとさっきから珍しく饒舌になっている。
イレーヌさんは剣にするか盾にするかで迷っているようだ。
俺はもちろん売却一択だ。杖とかいらないし、剣だってまだスキル覚えてないし・・・。防具にしたって量が量だからそんなに作れないだろう。
ならここは売却か、もしくは手元に残しておくべきかな。魔法学校のお金が足りなかったら売ればいいし、もしお金が足りてればその時に何かを作ってもらってもいいだろうし。
物が物なので大切にミスリルを布で包み、誰にも見られないように袋の奥の方に入れて、気を付けて街に帰る。
クロエさんはさっそく鍛冶屋に駆け込み剣を作って欲しいと依頼しに行くとのことだったのでみんなで同行した。
魔法鉄も途中で見つけたやつをとってきたから、材料は持ち込み費用は技術料だけとなったようで出費はあまり痛くないようだ。職人さんもミスリルが扱えるということで喜んでいた。
イレーヌさんも結局剣にした。うん、なんとなくわかるよ。ミスリルの剣って憧れるもんね。俺も剣術のスキル覚えてたら頼んじゃってたかもしれない。
残ったミスリルは俺が引き取ることになったんだけど鍛冶屋の人に聞いたら金貨30枚はするとのことだった。なんだかいきなり目標を達成してしまった。
まぁこのまま冒険者の活動も続けるし、あくまでこのミスリルは最後の手段ということにしよう。
2年間の間になにがあるかわからないしね。
「それでミスリルの剣の使い心地はどうなんですか」
「もう最高よ、前より軽くなったのに強度も切れ味も段違い!」
「本当ね。・・・早くオーク切りたいわぁ」
クロエさん怖いッス。刀身見つめてニコニコしないでください。
実際、ミスリルの剣になってからクロエさんの一閃でオークの足が切断できるようになっている。武器を新しくして攻撃力上がるっていいよなぁ。こちとらそんなことがないから魔法の練習をするしかない。杖?ああ、あいつなら俺の腰の杖ホルダーでいつも寝てるよ。
「そういえば、後2,3か月でDランク試験ね・・・。そろそろ夜営の訓練を始めたいんだけど、どう?」
Dランクの試験はこの街から他の街へ移動する馬車の護衛だ。馬車を護衛して一定の基準内になれば合格となるらしい。当然、夜は自分たちで魔物が来ないか見張りをしないといけない。
「いいですけど、3人でやるんですか?」
「・・・そうね。出来れば見張りを二人はつけたいとこよね。そうすると一人当たりの寝る時間がかなり少なくなっちゃうわね」
「ギルドでもう一人パーティメンバー募ってみます?」
「・・・それしかないかしら。じゃあ男以外で募集しましょう!」
「・・・僕も男なんですけど?」
「あんたはまだ子供だから危険はないじゃない。さっそくユリアさんに頼んできましょう」
「ユリアさん、パーティメンバー増やしたいんだけど前と同じような条件で紹介できそうな子いないかしら」
「・・・そんな子ちょうどよくいるわけないでしょう。ただでさえあなた達は異質なのよ。Eランクで3人しかいないのにオークを乱獲してくるパーティに合う実力という上にソロで女性なんて条件の子いるはずないわ」
「ちょっと実力低くてもいいからいないかしら」
「それでもいないわね。それにそんな子あなた達のパーティに入れたらかわいそうよ。そうね・・・奴隷でも買ったらどうかしら?ハルト君、魔法学校に入学したら従者必要でしょ?」
「いえ、必須と言うわけじゃないんなら特にいらないかなって思ってたんですけど」
「そんなの他の子に舐められるわ。ただでさえ平民ってだけで当たりが強くされるのに」
奴隷かぁ。ついにこのワード出来ちゃったか。そうなんですよ、この世界にも奴隷制度があるみたいで街中で時々見てはいたんだけど。
いやでも実際買うとなるとですよ、その人のこと一生責任とらないといけないでしょう?・・・重すぎる。
そんなことを考えてるのは俺だけみたいで二人はとりあえず奴隷商行く?みたいな感じになってる。
ああ、なんかもう買う流れですね。奴隷って高いんだろうなぁ。もうミスリルさんの出番かぁ、と重い足取りで二人の後ろについていく。
いつもお読みいただきありがとうございます。
まさかの日間一桁を経験してプレッシャーがヤバイです。
負けずに頑張りますのでどうぞよろしくお願いします。




