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炯眼のリアン  作者: 霧雨
第一章 黒の少年
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6暗闇にて


暗い森を走るいくつかの影があった。


突然起こった緊急事態。すぐさま現地へ向かった二人に知らせたものの、心配で仕方がない。

一人は後先考えず突っ走る短気な脳筋。もう一人はまともに戦ったところを見たことがないお調子者。二人の相性はいいのか悪いのか微妙なところだ。どちらも強いのは重々承知だが、それでも今は心配だ。

もう少しでたくさんのエレメントが集まったと思われる場所に到着する。皆が二人の無事を祈っていた。


しかし少し開けた場所に出て目に入ったのは、全く予想しなかった光景だった。

黒く大きい狼が数十匹、身体中に切り傷、火傷を負ったものが倒れている。全滅していた。『エレメント』もすでに出ていったようだ。


「あ、やっほー。惜しかったねー、あと少し早かったらもうたっくさんのエレメントが見られたのに。すごかったよーきらきらーって!あれはお金取れると思うなー」


呆然と立ち尽くしていたところに手を振って駆け寄ってきたのはウィズだった。心配していたのが馬鹿らしく思えるほど傷ひとつない。

何があったのか訪ねると、ウィズはいいおもちゃを見つけた子供のように、満面の笑顔で狼達が倒れる中心を指差した。


ライトで照らすと人間が二人横たわっている。あの銀髪はジルだ。服も髪も血に染まっているが狼のものだろう。ウィズによると、また後先考えず突っ走ったらしいが、この能天気さを見れば命に関わるほどの怪我はしていないのだろう。


そしてその隣には、ジルと正反対とも言える真っ黒な髪の男。手に握られた剣もまた月光に照らされ黒く輝いている。

ゆっくり近づいて見ると、幼さが残った少年だった。16、7……ウィズの少し上、ジルよりは下くらいだろう。


ウィズはここに至った経緯を話してくれた。



黒髪の少年の名はリアン。二人が見た葉っぱの竜巻。ジルとの争いに、エレメントについての認識の違い。


そしていつものごとく、ジルのしびれが切れたらしい。

身動きがとれないことと、ウィズとリアンが仲良くしていることに妬いて(それは違うと思うが)何度目かのリアンとの言い合いを始め、二人して風の防護壁から飛び出した……


「もちろん僕は大人しく助けを待ってたけどねー」


それはそれで……どうなんだろうか。しかしウィズも出ていっていれば、こうして状況報告も聞けなかったわけだから、今回は結果オーライだ。


狼の数は多かったが皆物理攻撃型で、ジルは最初いつも通りに殃牙(オウガ)を発動して焼き切っていたらしい。しかししばらくして分が悪くなった際、火力を上げていた。おそらく無意識に。一番凄まじい時は狼を飲み込む程燃え上がっていたとか。


そのことを聞いている間、皆一様に眉間にしわを寄せたり、遠い目をして唸った。『エレメント』は謎が多く戸惑うことばかりだが、とりあえず情報が増えたことは成果だ。


そしてリアンはというと、エレメントを全く使わなかったらしい。

ウィズは何かにこだわっているようにも見えたと言う。


一同はリアンという少年に興味がわいた。

それなくとも今はひとつでも多く情報が欲しいのだ。この少年の知識は捨てがたい。得たいが知れないのは確かだが、どちらにしろこのまま放っておくわけにはいかない。


ウィズを含め動ける数人で後始末をし、ジルとリアンを運んだ。

――――『LEAP』の本拠地へ。




結局ウィズは、飛び出す原因となったのはウィズの面白半分のからかいであり、狼達を全て倒し終わった後、またおっ始めようとした二人を麻酔弾のようなもので(お仕置きを込めてちょっと衝撃が走るもので)撃ったのは自分だということを言わなかった。








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