1.終わりの日
今日は、俺たちミーティアの初任務の日だ。
攻略するセロは、セレンから西に少し離れたところにある小さなセロだ。
「セロの攻略を開始する。入り口に集まってくれ。」
開始の合図がかかった。
「じゃあ、ミーティアの初任務、頑張るわよ!」
「「おー!」」
と班長の掛け声に呼応する。
そして、俺たちはセラへと侵入した。
初めて見るセロの中はとても不思議だった。重力がまるでないように、瓦礫が宙を浮いている。しかし、建物が倒れる激しい衝撃で重力が存在することをわからされる。とても不思議な空間だ。
「わぁ〜!ここがセロの中か〜!」
初めて見るセロに、メルは大興奮だった。
「こら、あまりはしゃぐな。みんな移動し始めている。早くいくぞ。」
と言い、班長が走り出した。それに俺たちも続く。
道中、怪物が出てくることはなく、無事に最深部に着いた。
「セロの攻略って、案外簡単だなぁ。」
と、他のチームの人がつぶやいた。
他の人たちも「思ったより簡単だな。」などと余裕の表情を見せた。その時、今までに体験したことのないような地響きに、俺たちは戦慄した。そして、俺たちは気づいた。今までの静けさが全て、罠であったことを…
「ガハッ…」
「来るなぁ!」
「助けてー!」
「いやぁ!ユウヤー!」
大量に襲ってきた怪物によって、他のチームの人たちがどんどん殺されている。俺たちは3人で背を合わせ、一体ずつ慎重に倒していった。
怪物が残り数体になった時、残っていたのは俺たち3人と、他のチームが4人だった。怪物の死体は、塵になって消え、辺り一面には仲間の死体が散らばっている。
吐き気がする。初めての攻略がこんなにも悲惨なものであった。
「うっ…うぅ…。」
班長も嗚咽を漏らしている。
メルは、この状況が飲み込められないのか、天を仰いでいる。しかし、俺たちが混乱している状況の中、先ほどよりも激しい地響きを感じた。そして、目の前に現れたのは、建物よりも大きい怪物であった。その怪物を見て、俺たちは逃げ出した。
「撤退、撤退だー!早く逃げ…」
と班長が撤退の指示を出すと同時に、怪物に踏み潰された。
「班長ー!この野郎、ぶっ殺してやる!」
とメルが怪物に飛びかかる。
「待て!行くなぁ!」
とメルを止めようとした。しかし、メルが怪物を攻撃しようと飛び上がると、怪物の手によってはたき落とされ、メルの体が叩きつけられた。そして、追い打ちをかけるように踏み潰された。
「メルー!」
俺も飛びかかろうとしたが、足が動かなかった。あの怪物を前にして、俺は動くことすらできなかった。そして…
「はぁ…はぁ…はぁ…。夢か。」
俺は3年前のあの出来事をいまだに夢に見ている。班長は、亡くなってしまった。メルはなんとか一命は取り留めたが、あの戦いを経験してからセロを見ると体が震え、セルに入ることができなくなってしまった。俺も、セロを前にすると体がうまく動かなくなる。そして、俺たちミーティアは解散した。
俺の、俺たちの、今までの訓練はいったい…。結局何も守らなかった。当時はそんな罪悪感が俺たちを突き動かしてセロを攻略していたが、次第にセロへの恐怖が身を蝕み、俺たち2人はセロに入ることすらできなくなった。