0.始まりの日…
この日、俺たちの街は消えた…
世界各地で突発的に起こった謎の災害によって、多くの都市が消滅し、世界の人口のおよそ半分が消えた。謎の球体が街を覆い隠し、中には人ならざる怪物が生まれる。その怪物によって多くの人は惨殺された。奇跡的に中から逃げ出してきた人々も、突如として体が破裂したり、異常な行動を見せたりするようになった。この災害はSNSでさらに拡散され、混乱の時代へと突入した。この世界最悪の災害を、人々は「セロ」と名付けた。
最悪の日から15年がたった今でもセロは各地で突発的に発生している…
俺ことユウキは、あの災害から15年がたった今、最悪の災害セロに立ち向かうために結成された防衛軍、エルピスに所属している。エルピスには世界各地から集まった多くの人々をまとめるいわゆるギルドみたいなものだ。エルピス所属する人々は大きく2つの枠に分けられる。それは、個人でセロを攻略する者たちと、正式にエルピスに所属して攻略する者たちだ。前者の多くは、武芸の家門に所属している者たちだ。それぞれの家門でセロを攻略する力は十分にある。しかし、セロの攻略をするにはエルピスに所属しなければならないというルールがある。そのため、エルピスに所属はするが、名前だけというものが多い。そして後者は、家門に所属せず、セロを攻略したいという者たちである。この者たちは、エルピスの正隊員として各チームに所属する。俺は、特別な力を持つわけではないため、エルピスの正隊員として活動している。
今日は、チームの訓練の日。朝早くに家を出て、俺は大都市セレンの中央にあるエルピスギルドへと向かう。
エレベーターに乗り5階に着くと、「ユウキー!」という声が聞こえると同時に、俺の視界に見える景色は長い廊下から、ライトの眩しい天井へと変わっていた。
「毎度毎度、俺に向かって突進してくるなよメル」
「だって、こうしないと落ち着かないんだもーん!あと、突進じゃなくて、抱きしめてるだけだもーん!」
彼女はメル。俺の所属するチーム、ミーティアのメンバーの1人だ。俺と会うたびにこうして抱擁という名の突進をしてくる。いつも顔を俺の体に埋めてすりすりしてなかなか離れてくれない。そして、
「退きなさい!エレベーターは部屋じゃないんだから、他の人の邪魔になるでしょ!」
「やーだ!離れたくなーいー!」
と班長に引き剥がされるまでが流れである。
班長の名前はディアナ。チームのまとめ役で、この人がいなければメルは今以上にしつこくなっていただろう。
メルを抱えた班長とともに、俺たちのチーム室へと向かう。
「さて、今日は私たちの初めてのセロ攻略に向けて、さらに厳しく訓練をしていくわよ!」
という班長の言葉に
「おー!」
とメルが元気な声を出す。俺も
「お〜」
と続く。
俺たちは明日、初めてセロを攻略する。セロの中には訓練でも何度か入ったことはある。しかし、訓練で使うセロはすでに攻略済みの場所で、怪物が出てくることはほとんどない。セロの攻略は単独チームではなく、複数チームで行われる。今回は10チームが参加する。こういう攻略では、個人活動をしている人たちは参加せず、正隊員のみで攻略することが多い。今回の攻略も正隊員のみで行われる。
「実践に向けて、フォーメーションの復習と予想外の出来事についての対応など、いっぱい詰めていくわよ!」
チーム室には、セロを解析して得た空間拡張された訓練室があり、そこで訓練することが多い。今日も例に漏れず訓練室で行う。明日のセロ攻略に向けて気合が入っているのか、班長の指導はいつもの2,3倍は厳しかった。いつも楽しそうに訓練をしているメルも、今日はとてもきつそうにしている。
「はんちょ〜…ちょっと、ハイペース…すぎません?」
と言うと班長は、
「明日は大事な初任務なんだから、気合が入って当然でしょ!」
と一蹴された。確かに、大事な初任務なので詰め込めることは詰め込んでおきたいのはわかるが、このままでは体が持たない。
「班長、一度休憩しましょう。このままじゃ明日動けなくなっちゃいます…」
と提案する。
「メルも休みたーい!」
とメルも続けて言う。
「確かに、明日の動きが悪くなってしまうのは困る…。よし、とりあえず休憩しよう。」
と休憩をもぎ取ることに成功した。
そして、休憩を挟みながら厳しい訓練をし、遂に初任務の日を迎える…。