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第三十話「青い光の誘惑」

パーティーの疲れが残る朝、僕とアルクは希少存在調査局に向かった。カミロ所長への報告は急を要する。チョウ家のパーティーで得た情報、特に「元テラ・ガーディアンの研究者」の存在は、ブルーグロウ研究の鍵を握っているかもしれない。

所長室に入ると、カミロはすでに我々の到着を待ち構えていた。彼の隣には、いつものように完璧なスーツ姿のアンソニーが立っている。


「おはよう、希少種!」


カミロは僕を見るなり、陽気に挨拶した。


「昨夜はどうだった?何か得るものはあったか?」


僕たちは昨夜の出来事を順を追って説明した。ミンフイの態度、動物への親しみ、そしてリンイーのタブレットに映った青い光の映像——そして彼女が「元テラ・ガーディアンの研究者」について言及したことまで。


「元テラ・ガーディアン…」


カミロ所長は眉をひそめた。


「テラ・ガーディアンは通常、一生をかけて地球の保全に従事する人々だ。なぜ誰かがその立場を離れるのか…興味深いな」


アンソニーがタブレットを操作しながら口を挟んだ。


「テラ・ガーディアンが辞職するケースは極めて稀です。過去10年間で記録されているのはわずか12件のみ。その中で植物学の専門家となると、さらに絞られるでしょう」


「それなら見つけるのは容易かもしれないな」


カミロが言った。


「この件については研究者に聞くのが一番だろう。リン・シンジュ教授の方が同業者ということで何か知っているかもしれない」


彼はデスクのスクリーンを操作すると、すぐに通信が確立された。数秒後、リン教授の顔が映し出される。


「カミロ所長、どういったご用件でしょうか?」


彼女は少し驚いた様子だった。


「リン教授、お元気ですか。先日はウチの新人がお世話になりました」


カミロは紳士的に語りかける。


「実は追加で質問があるのですが、今日の午後、ユナギとアルクを再度お伺いさせてもよろしいでしょうか?」


リン教授は少し考えて、カレンダーを確認してから同意した。


「15時ならスケジュールが空いています。構いませんよ」


通信が終わると、カミロは僕たちに向き直った。


「これで予約は取れた。彼女の学術的好奇心をうまく利用するんだ。彼女はラゴモーフ系に強い関心を持っているようだからな」


僕は耳をわずかに動かし、少し気恥ずかしさを感じた。



約束の時間、僕たちは再びオーロラ・セレスティアル大学の生物科学棟を訪れた。リン教授は前回よりも親しげに僕たちを迎え入れてくれた。


「お二人とも、またお会いできて嬉しいです」


彼女は微笑んだ。


「特にユナギさん、あなたのような遺伝子融合型の方の生体データは非常に貴重なんです。もし差し支えなければ、いくつか質問してもよろしいですか?」


僕は頷いた。


「喜んで、お答えします」


次の20分間、リン教授は僕の生物学的特性について様々な質問をした。体温調節の仕組み、感覚の鋭敏さ、代謝の特徴など、非常に専門的な質問だった。アルクは僕のバイタルデータをリアルタイムでモニタリングし、より正確な回答を助けてくれた。


「実に興味深い」


リン教授は熱心にメモを取りながら言った。


「特に、あなたの代謝パターンは通常の人間とは明らかに異なりますね。でも、それはいつか改めて研究させていただければ」


話が一段落したところで、僕たちは本題に入った。


「リン教授、私たちが今調査しているのは、あの青く光るストロベリーの件なんです」


僕はできるだけ自然に切り出した。


「チョウ家のパーティーで、リンイーさんが元テラ・ガーディアンの研究者という方が関わっていると言っていました。植物学者の間では、そういった方について何か聞いたことはありませんか?」


リン教授の表情が一瞬こわばった。彼女はペンを置き、慎重に言葉を選んでいるようだった。


「私は単にゲストとしてチョウ家に招かれただけですよ」


彼女は淡々と答えた。


「あの果実について、私が知っているのは前回お話したこと以上はありません。元テラ・ガーディアンの研究者については…申し訳ありませんが、私にはわかりません」


彼女の声には微かに緊張が混じっていた。そして視線が僕の目から少しだけ逸れる。何か隠しているような気がした。


「もしかして何か心配なことがあるのでしょうか?」


アルクが静かに尋ねた。


「私たちは単に科学的好奇心からこの果実の起源を調べているだけです」


「いいえ、特に何も」


リン教授は少し早口で答えた。


「ただ、私は単なる研究者で、チョウ家の内部事情については本当に詳しくないのです。彼らは一流の実業家で、私のような学者とは交友範囲も違います」


彼女の態度はこれ以上の情報を引き出すのは難しいことを物語っていた。僕たちは礼を言い、失礼することにした。


「またラゴモーフ系の研究でお役に立てることがあれば」


僕は立ち上がりながら言った。


「ええ、ぜひ」


リン教授は少し安堵したように微笑んだ。


「いつでも歓迎します。特に植物との親和性については、いつか詳しく研究したいものです」



大学を後にした僕たちは、キャンパス近くのカフェに立ち寄った。次の一手を考えるためだ。


「どう思う?」


僕はアルクに尋ねた。


「リン教授は何か知っているように感じたけど」


「同感です」


アルクは静かに答えた。


「彼女の生体反応分析によると、特定の質問に対して心拍数の上昇が見られました。何かを隠している可能性が高いですが、恐れているようにも見えました」


「僕たちはこれまでの情報から次に何をすべきか考えないと」


僕は言った。


「チョウ・リンイーには興味を持たれているけど、もう一度彼女に会うと何かを探っていると警戒されるかもしれない。パラダイス・ガーデンにもすでに行ったけど、新しい情報は得られなかった」


アルクは思案した。


「チョウ家の内部情報を得るのは困難です。リンイーさんの友人たちに接触するという手もありますが、効率が良いとは言えません」


「植物学者がいそうなところと言えば…」


僕は空を見上げながら考え、突然思いついた。


「そうだ!ウィンターヘイブン植物園はどうだろう?あそこなら地球の植物について詳しい専門家がいるはずだ」


アルクの目が明るくなった。


「素晴らしい発想です。前回訪問した際、『トリコフィトン・アルボラ』の早期発見でVIP待遇を約束されていましたね」


「そうだった」


僕は少し照れながら耳を動かした。


「植物園なら、テラ・ガーディアンとの交流もありそうだし」


アルクはすぐに通信を開始し、植物園の情報デスクに連絡を取った。少しのやり取りの後、彼は通信を終えて僕に報告した。


「館長が直接会ってくれるとのことです。希少存在調査局からの公式調査ということで、優先的に対応していただけます。ただ、館長のスケジュールの都合で、明日の午前中になるとのことです」


「なんだか上手くいきそうな予感がするよ」


僕は少し安心して言った。明日は何か重要な発見があるに違いない。星空を見上げながら、その予感は確信へと変わりつつあった。

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