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第二十八話「招待状」

「これは予想以上の成果だな!」


希少存在調査局の所長室に戻った僕たちの報告を聞いて、カミロ所長は満面の笑顔で言った。彼は大きな体を椅子から乗り出すようにして、招待カードを手に取って眺めている。


「チョウ家のプライベートパーティへの招待とは、見事だ。おかげで我々の調査は一気に前進する」


「リンイーさんは思ったより親しみやすい方でした」


アルクが答えた。


「彼女は特にユナギの外見に強い興味を示していました」


カミロ所長は僕を見て眉を上げた。


「当然だ。君の独特な外見は我々の最高の武器だったわけだ」


僕は少し照れて耳を下向きにした。


「彼女は本当に植物研究に情熱を持っているみたいです。特にベリー類について話すときは目が輝いていました」


「青いストロベリーの件も、彼女の情熱から来ているのかもしれないな」


カミロが言った。


「しかし、その情熱の裏に何があるのか、それが我々の調査すべき点だ」


アンソニーがタブレットに何かを表示させながら静かに前に出た。


「失礼します。チョウ・ミンフイ氏についての追加情報があります」


「何か見つかったのか?」


カミロが身を乗り出した。


「はい。非常に興味深い痕跡です」


アンソニーはタブレットを所長に差し出した。


「チョウ氏が過去6ヶ月間に渡り、特殊な通信チャネルを使用していた形跡があります」


「特殊な通信チャネル?」


僕は少し首を傾げた。


「地球のテラ・ガーディアンとの通信痕跡です」


アンソニーは静かに説明した。


「通常、地球との通信は恒星間通信となり、非常に高額な費用がかかります。公式チャネルでは、政府機関やごく一部の大企業のみが許可を持っています」


「一般企業が気軽に使うようなものではない…」


アルクが言葉を継いだ。


「さらに、彼は公式記録に残らない非認可チャネルを使用しています」


カミロ所長は眉をひそめた。


「それは確かに不審だ。テラ・ガーディアンとの通信自体は違法ではないが、非認可チャネルを使った秘密通信は別問題だ」


「テラ・ガーディアンは地球に残って生態系や文明遺産を守っている人たちですよね?」


僕は確認した。


「そうだ」


カミロが頷いた。


「彼らは主に北半球の氷床地帯に住み、残された生物種や文化遺産の保護に努めている。約42万人しかいない希少な存在だ」


「ブルーグロウの原産地はネオ・テラのはずです」


アルクが指摘した。


「地球との通信はどういう意味を持つのでしょうか」


アンソニーが説明を続けた。


「通信内容までは特定できませんが、パターン分析から、主に植物に関するデータ交換であった可能性が高いです。特に、絶滅危惧種や原種の遺伝情報である可能性があります」


「なるほど」


カミロ所長は椅子に深く腰かけた。


「地球の原種植物の遺伝情報を使って、ネオ・テラの技術と組み合わせたということか…」


「青いストロベリーの秘密はそこにあるのかもしれませんね」


アルクが言った。

カミロ所長は立ち上がり、部屋を行ったり来たりし始めた。


「よし、パーティー潜入捜査の目標を整理しよう」


彼は指を折りながら話し始めた。


「まず第一に、ブルーグロウのサンプル入手。実物を研究することで、どのような遺伝子操作が行われているかを特定できる」


「第二に、ブルーグロウの入手経路に関するデータ。彼らがどこからこの果実を入手しているのか、あるいはどうやって自前で栽培しているのかの情報だ」


「第三に、ミンフイの秘密の通信相手を探る。地球のどのテラ・ガーディアンと通信しているのか、何を交換しているのかを知りたい」


僕は熱心に聞きながら頷いていた。


「第四に、プライベート・ガーデンの所在確認。公開情報ではほとんど詳細が明かされていない施設だ。その場所と機能を特定したい」


「そして最後に、可能であればプライベート・ガーデンへの潜入。最も難しいミッションだが、そこでブルーグロウが栽培されている確証が得られれば大きな前進だ」


カミロは一連の目標を説明した後、大きく息を吐いた。


「この中のどれか一つでも達成できれば、今回の潜入捜査は成功だ。無理はせず、怪しまれないように行動することが最優先だ」


「了解しました」


僕とアルクは同時に答えた。


「ところで…」


カミロ所長は急に思いついたように言った。


「君はどんな格好でパーティに行くのだ?」


「え?」


僕は突然の質問に耳が上向きになった。


「そ、それは…」


僕は困惑して答えに詰まった。チョウ家のような高級な場所でのパーティーに適した服装など、持っていないことに今気づいたのだ。

アルクが冷静に言った。


「セミフォーマルドレスコードと招待状にありましたね」


「明日買いに行きたまえ。経費で落として構わない。」


とカミロが指示したが、アルクは首を振った。


「それでは間に合いません。ラゴモーフ用となると、今日中に注文しないと。通常のサイズでは体型に合わず、特に耳の部分に特殊な調整が必要です」


「そうか!」


僕は慌てて立ち上がった。


「すぐに注文しないと!」


カミロ所長は僕たちの慌てぶりを見て、大きく笑い出した。


「いやいや、緊急事態だな。希少存在調査官の最初の大任務が服装で頓挫するとは」


彼は引き出しから何かを取り出し、僕に差し出した。


「特別予算だ。高級店に行って、見栄えのする服を注文してくるといい」


「ありがとうございます!」


僕は感謝しながらカードを受け取った。


「アルク、君も適切な姿になれるように準備しておくように」


カミロはアルクにも指示した。


「はい、バイオシンセティック・フレームの特別な設定で対応します」


アルクは頷いた。


「それじゃ、急いで行ってこよう」


僕はアルクの腕を引いた。


「服がないと潜入捜査も始まらないよ」


所長室を出る時、振り返るとカミロ所長が優しく微笑んでいるのが見えた。彼は父親のような表情で僕たちを見送っていた。


「おい、希少種!」


カミロが呼び止めた。


「パーティーでは堂々としていろよ。君自身が一番希少な存在なんだからな」


僕は笑顔で頷いた。

廊下を走りながら、明後日のパーティーへの期待と緊張が入り混じる感情が湧いてきた。特別な服を着て、高級パーティーに参加し、秘密の調査をする——これが希少存在調査官としての本当の仕事の始まりだ。

耳が少し前傾した。冒険の予感に、体が小さく震えた。

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