第3話 13段
体が思うように動かない。
保健室の先生に引きずられてやっと歩いている。
まるで自分の体じゃないみたいに重い。
「起きたばかりだしね、
前の体の様にはまだいかないよ」
前の体?
「未練があるのか、さまよっている魂があったからね。
仮の体に入れさせてもらったの。
定着するのに思いのほか時間がかかってしまってね。
残念だけど、君の前の体はもうこの世にはないよ。
お葬式もすでに終わっている」
保健室の先生はさも当たり前のように言い放った。
思考が停止し、理解が追い付かない。
さっきの死んでる発言はマジだったのか?
死んでる?
魂?
急にそんなこと言われても・・・
冗談で死体蹴りとか言ったけどさ・・・
なにかの間違いだよな・・・
しかし、廊下の窓ガラスに映る姿を見て現実を突きつけられた。
「まじかよ」
そこには知らない顔があった。
引きずられながら歩いて着いた場所は件の階段だった。
2階から3階へ向かう階段を見上げる。
あそこから落ちたのか。
「ここから段数を数えてみて」
「1、2、3・・・12」
保健室の先生に言われるがまま下から数えて12段。
「そろそろ時間かな」
保健室の先生が呟くと同時に西日が差してきた。
眩しい。
「3階に行くよ」
一緒に数えながら上る。
「1、2、3・・・」
「8、9、10・・・」
「・・・13」