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第1話 走馬灯
西日が差す放課後の校舎。
3階から2階へ階段を下ろうと足を踏み出す。
ガシッ
気づいたら宙に体が浮いていた。
「あ、終わった」
よりにもよって最上段でつまづくなんて。
ゆっくりと時が過ぎていく。
落ちている間にこれまでのことが頭の中を流れていく。
これが走馬灯というやつか。
15年の間に色々あったよな。
・・・あったよね?
あっという間に走馬灯が終わっていた。
もう終わり?
ん?ガシッ?
気づくとカーテンに囲われたベッドの上にいた。
「あれ、生きてる?」
「気がついたようね」
カーテンが開き保健室の先生がベッドサイドに腰掛ける。
「君、階段から落ちたんだよ」
「落ちた・・・」
「何か腑に落ちない顔しているね」
「走馬灯が思ったよりもショボくて」
「それはどうしようもない」
いや、違う。
走馬灯のショボさじゃない。
走馬灯の内容に違和感がある。
走馬灯の最後になにか気になることが。
・・・ダメだ、思い出せない。
まあいい、これからは走馬灯が充実した人生を送るんだ。
「んー、それは無理かな」
「え、それってどういう・・・」
「だって」
「君もう死んでるもの」