出会ったのは黒の魔術師
その日私は出会ってしまった
この世を統べる魔術師の一人に
突然の出来事だった。
いや突然と言うにはあまりにも必然だったのかもしれない。
親が離婚したのだ。
まぁ世の中色んな事があるし、離婚だなんてよく聞く話でもある。
父親もよく耐えたと思う。
母は数年前からおかしくなっていた。
お酒を飲むと豹変するのだ。
普段は普通なのだが、お酒を飲むと一変して、すぐにキレだしたり幻覚や幻聴を見たり聴いたりするのだ。父はそれでも介抱していだが、それも耐えきれなくなったのだろう。
ついに離婚という結末を選んだのだ。
私はまだ未成年(高校生)なので独り暮らしするには、あまりに貯金が無かった。バイトは校則によって禁止されてたのでどちらかに付いていくしかなかった。色々両親と話した結果、私は母に付いていく事にした。父からは「無理して母に付いていく必要は無い。俺の方に来てもいいんだよ」と言われたが、こんな状態の母を一人にしたらどうなるかは火を見るよりも明らかだったので「ごめんね」と言い母と暮らすことにした。普段は普通で、仕事もちゃんとしている母だったのでお金は心配しなかった。家事はどちらに付いていってもやることにはなっていたので、そこも特に不安はなかった。家を出ていくときに父から「辛くなったらいつでもおいで」と言われた。
「ありがとう」と伝えて母との二人暮らしが始まった。最初のうちは普通に暮らせたが、案の定母の酒癖は治っておらず1ヶ月たった頃、ついに私に対してキレるようになってきた。
「学生は楽でいいよね」「毎日毎日貴女を養う為に働いてるんだよ」というような嫌みから始まり、段々と「服にしわがある」や「部屋にほこりがある」など、重箱の隅をつつくような事も言われ始めた。そして三ヶ月がたった辺りから幻覚や幻聴も出てきた。「大きな虫がいるから早くとって!!」と何もないところを指差したり、「誰かが耳元で悪口を言っている!」と誰もいないのに言い始めたりなど。そして4ヶ月がたった頃、私に暴力をふるい始めた。日に日に私は痣が増えていった。勿論最初は抵抗したが、抵抗すると暴言を吐いたり、よりエスカレートするので、段々抵抗する気も失せていた。
そして半年がたった頃もう駄目だと思い父に連絡を入れようと思った。しかし出来なかった。街で偶然父を見たときに、知らない女性と子供の三人で幸せそうに歩いている姿を見つけたからだ。幸せな所に今更、私のようなお荷物を預ける事は出来なかった。
気がついたら夜はいつも一人で公園にいるのが日課になっていた。母は心配しないので、それが寝るのを待ってから帰宅していた。
そんなある日、見るからに酔っている知らないおじさんに話しかけられた。
「君今一人?いつもここにいるよね」
正直とても怖かったが何も言えなかった。「うちにおいで」そう言われ腕を引っ張られたが怖かったので振り払ったら「お前、抵抗するんじゃねぇ!!」と怒鳴られ無理やり連れていかれそうになった。助けを呼ぼうと思ったが声が出ず、泣いていた。どうすればいいのかわからなかった。
そしたら突然
「おじさん、その辺にしときな。その子俺の連れだからさ」と黒い服に身を纏った青年が話しかけてきた。連れだと言ったが、私は彼の事を全く知らなかった。しかし、私はそのおじさんから逃げたくて彼に助けを求めた。
「なんだてめぇ、ガキが調子のるんじゃねぇぞ!」
おじさんは怒鳴り声をあげながら彼に殴りかかろうとした。
なぜ、今殴ったではなく殴りかかろうとした、という表現をしたかと言うと、結論から言うと彼を殴れなかったからだ。青年が手をおじさんに向け何か一言呟いた瞬間に、おじさんは倒れたのだ。
「えっ…?」
私は、やっと声が出たが状況が理解できなかった。あまりにも不可解だった。確かにおじさんは酔っていたが突然、しかもこんなにタイミングよく眠りにつくか?しかし、助かったのも事実だった。
「ここは僕の管轄なんだ。変に問題を起こされると迷惑なんだよ。だから酔っぱらいは大嫌いなんだ。」
と青年は倒れて眠っているおじさんに向けて言っている。
私はか細い声で
「あの、ありがとうございます」
と言うと
「君も災難だったね、こんなのに絡まれて。でも、君も悪いよ。こんな時間に一人でこんな所にいたら絡まれるに決まってるじゃないか。君、いつもこの時間ここにいるよね、駄目だよ、家に帰りな。」
青年はこちらを見ながら気だるそうに言う。
「ごめんなさい。でも、家には帰りたくなくて…」
青年は何かを察したような感じだったが
「君にも理由があるのかもしれないが、さっきも言ったけどここは僕の管轄エリアなんだ。面倒を起こされると後処理が大変だから迷惑なんだよ」
と少し苛立ったように言う。
「でも…」
彼には彼の理由があるが、私には私の理由がある。なんとしても帰りたくなかった。
「あっそ、じゃあどうするの?」
彼は突き放すように言う。
私は何も言い返せなかった。
「何も言え無いのか。」
彼は言う。
そして少し考えた後ため息をついて彼は話す。
「じゃあ僕の家にでも来るか。この時間はいつも一応この辺を見張るために散歩してるんだ。僕は独り暮らしだから襲われる心配もないと思うけど、どうする?」
驚いたし、正直戸惑った。
それでも、この人からはさっきのおじさんみたいな邪な考えのようなものは感じられなかった。
どちらかと言うと面倒事を早く解決してしまいたいというような感情が感じられた。
「でも、いいんですか?」
私が聞くと
「別にいいよ、はっきり言ってまた今回みたいな事が起きるよりかは楽だし」
そして私は彼の提案にのることにした。
それから彼の家に向かった。
公園から歩いて10分程で、大きなマンションに着いた。そこの最上階の一番端の部屋が彼の部屋だった。
最上階はほとんど誰も住んでいないらしい。ちなみに着くまでの道中、ほとんど会話はなかった。
「どうぞ」
彼はドアを開けて中に案内してくれた。
「…お邪魔します」
私は軽く会釈をして中に入った。
「僕はまた街を見てくるから適当に過ごして。」
「わかりました。」
彼は、あっそれと、と言い
「黒い扉の部屋には絶対入らないでね。入ったら許さないよ」
彼はそう言い残し、出ていった。
彼がいなくなってから数分は立ったままぼーっとしていたが少したってから、はっとして部屋を見渡してみた。
彼の部屋は必要最低限の家具家電しかなかった。マンガやゲームなどの娯楽類は一切なく、こじんまりとしていた。
彼はどんな生活をしているのだろうかと思いながら、部屋を少しだけ探索してみた。そしたらすぐ、彼の言っていた黒い扉の部屋を見つけた。中から機械音のような音が聞こえたが入るなと言われていたので中は見なかった。
冷蔵庫があったのでなかを見てみたが、特に変わったものはなく、独り暮らしの男性といった印象だった。喉が渇いたのでコップを一つ借りて水を飲みながら、1つだけあったソファーに腰かけた。
冷静になって考えると、なかなか変な状況であるのはすぐに気付いた。変なおじさんに絡まれて助けてくれた人の家に一人でいる。
これからどうしようか、などと考えていたら眠ってしまったみたいだ。
「おい、起きろ。そろそろ家に帰りな」
その声を聞き目を覚ますと、夜の2時を越えていた。
「ああ、すみません。もう帰ります。」
この時間だとさすがにあの人も眠りに着いているので大丈夫だろう。
「こんな時間まですみません」
「別にいいけど。これからも来るでしょ?連絡先だけ交換しとこう」
「ああ、はい」
私は連絡先を交換した。これからも来ても大丈夫なのかと何故か少し安心していた。
「一つ聞いていいかい」
彼の声には少し不安な感情が読み取れた。
「なんですか?」
「家にいる間、誰か来なかったか?インターホンをならされたとかでもいいんだけど」
「特に誰も来なかったと思います。寝てたのでわからないですけど」
「そうか…」
彼はうつむいたままどこかまだ不安そうだった。
「引き留めて悪かったね。それじゃあまた明日。」
「ありがとうございました。それじゃあ」
私は軽く会釈して家を出た。
自宅に着くと案の定、母はすでに眠りに着いていたので安心して私も眠りに着いた。
次の日学校に行っていつも通りの生活をしていたら突然、
「八代さーん、黒瀬っていう子が呼んでるよー」
はて、誰だろうか。知り合いや友達にそんな名前の人はいなかったので、不思議に思いつつ教室のドアに向かった。
「なんでしょうか?」
向かうと全く知らない青年が立っていた。
「僕もまさか同じ学校の人とは思わなかったよ。一応確認したいことがあったから」
…誰だろうか
「誰かわからない?昨日家に来たのに?」
…まさか昨晩の彼か?
夜の彼とは雰囲気が違ったのでわからなかった
「あぁ、昨日の人?」
「そうだよ、忘れるなんて酷いなぁ」
昨日は顔がよく見えなかったので、本当に気付かなかった。
「ごめん、昨日は顔がよく見えなかったから。」
「まぁいいや、放課後ちょっとこの教室でいいから残っててもらってもいいかい?」
「うん大丈夫だよ、わかった」
「それじゃあまた放課後に」
彼はそう言って自分のクラスに向かった。
「ねぇねぇ今の人友達?めっちゃイケメンじゃん!!まさか彼氏か?」
そんな事を言ってくる彼女は、私の友達の豊穣めぐみ、親友だ。
「違うよ、まぁ友達?なのかな」
「ほんとー?でもいいなぁあんなイケメンの友達がいて。今度紹介してよ」
「出来たらね」
その会話の後、他の友達とも話をしたらどうやら彼はちょっとした有名人だったらしい。
成績は常にトップにいて運動神経もかなりいいらしい。
部活には所属してなく、そして他の人と絡むことは少ないらしい。わかったのはそのくらいだった。
「なんだか不思議な人だなぁ」
「それがいいんじゃん!男はちょっとミステリアスくらいがいいんだよ」
めぐみは興奮冷めやらぬ感じで話してくる。どうやらタイプだったらしい。
しかし噂によると色んな人からの告白を断っているらしい。なんでも、少し前まで凄い美人の人と付き合っていたらしい。一緒にいるところを見た人が多々いた。最近はみないらしいが…
そんなこんなで気がついたら放課後になっていた。
私は言われた通りに教室で待っていると、彼がやって来た。
「ここだと他に人がいるから家に向かいながら話をしよう。」
「わかった」
私は彼の言うとおりに学校を後にした。
「…ちょっと回り道するよ、君のお友達が見ているみたいだし。」
「えっ、あぁうん」
振り返るとめぐみが遠くの方でこっそり後をつけていた。
「あまり他の人に家をばれたくないんだ、前それで色々あったから」
そういうと彼は、狭い裏路地に入り何かを言うと二人して不思議な光に包まれて、次の瞬間彼の家にいた。
「えっ、なに今の?」
「転移魔法、簡易式のやつだから飛べる範囲は狭かったけど、ギリギリ家には飛べたから」
「ま、魔法?ホントに言ってる?」
「じゃあ今起きた事象をなんて君は言うんだい?」
「えっ、」
「自己紹介が遅れたね。僕の名前は黒瀬凛、魔法使いだ。」
「ホントに魔法ってあるんだ…」
「君の名前は?」
「あっ、あぁ、私は八代水樹」
「まさか同じ学校だったとはね。朝、君を見たときに驚いたよ。まぁでも都合が良い」
都合がいい…?
ああ、そっか、今日から夜は彼の家で匿ってもらうから、その話をしやすいということか。
「これ、家のカギ。僕がいないときはこれで出入りして。悪用はしないでね」
彼はポケットからカギを出し、渡してきた。
「えっ、いいの?」
「別に。変なことしなければね、した時は君の記憶を消すだけだし」
記憶を消すって、そんな事も出来るのか
「あ、ありがと」
「それじゃあ僕は夜また巡回するからちょっと寝るね。好きにしてて、家に一旦帰ってもいいし、ここにあるものはあの部屋のもの以外は何してもいいし、使ってもいいよ。」
「わかった、ありがとう」
「それじゃあ」
彼は黒い扉の部屋に入っていった。
「どうしようか…」
私は呆然としていた。何をしようか悩んだ結果、とりあえず勉強することにした。やることもなかったし、家にも帰りたくなかった。
それから数時間経ったときに彼が部屋の中から出てきた。
「それじゃあ僕はまた町の警戒してくるから。帰りたくなったら勝手に帰ってね。」
彼は昨夜と同じく大きめのマントを羽織、フードを被って言う。
「うん、わかった。」
「あっそれと、」
彼は少し眉間にシワを寄せて
「誰か来ても無視で良いんだけど、もし、白髪の髪の長い女性が来たら連絡してね」
「わかった」
彼はそれからすぐに家を出た。
パトロールも大変なんだなぁと感じた。
その日から何日かはそんな日々が続いた。
学校が休みの日でも彼はいつも通りに迎えてくれた。
私はその優しさに甘えることにした。
そんなある時、ふと入っては駄目と言われていた黒い扉の部屋が気になり始めた。
最初は何とも思わなかったが、駄目と言われたら気になるのが人だろう。
私は彼がいつも通り家を出た後、こっそり中を覗いてしまった。
そこには想像もしていなかった物が沢山あった。
見たこともない実験道具や機械、積み重なった大量の魔法について書かれた本や謎の資料、棚に置いてあるホルマリン漬けの目玉や人間の臓器、そして一番驚いたのが部屋の中央にあった巨大な水槽の様なもの。中身は空だったが、何かがそこに居たような痕跡があった。髪の毛の様なものが浮いていたのだ。そしてその水槽の大きさがちょうど人一人入れる大きさで、浮かんでいたのは白髪だった。
「えっ…何これ?」
私は少しの間呆然と立ち尽くしていた。感覚てきには数時間だが、実際は数秒程してハッと気がついた。
すぐに部屋からでてソファーに座って考えた。
あの部屋は一体なんだ?
真ん中にあった水槽は?
浮かんでいた白髪は?
凄く嫌なことが頭に浮かんだ。
噂にしか聞いたことがない。
『人体錬成』…
いわゆるホムンクルス。人造人間だ。
だが、それこそおとぎ話の中の話だし、そんな事が可能なのか?
そして、それは禁忌と呼ばれる物ではないのか?
彼は一体何をあの部屋でしているんだ?
様々な憶測が頭の中を駆け巡った。
だが、一番の問題はそこではなかった。
その事を知ってしまった事だ。
もし、知ってしまった事を知られたら、記憶を消されるどころでは無いかもしれない。
怖かった、とても。
しかし、そんな状況にも関わらず私は何故かとても落ち着いていた。
どうすればいいのか、すぐに浮かんだ。
隠そう。知ったことを、知られてはいけない。そして、誰にも告げてはならない。
私は、いつも通り過ごす事にした。
それからも私はいつも通りの生活を続けた。
学校に行き、そして夜は彼の家に行った。
彼は気づいていないのか、または気づいた上で知らないふりをしているのかはわからなかった。
そんなある日、彼の家に行ったら彼が珍しくため息をついていた。
「どうしたの?」
私が問いかけると
「今日はこの後管理者集会があるんだよ…めんどくさい…」
見るからにだるそうで本当に嫌そうなのが伝わってきた。
「その管理者ってそういえば何なの?」
私はふとした疑問を問いかけた。
「管理者…ちょっと長くなっちゃうけど良い?」
「別に大丈夫だよ」
私は管理者と言うのが気になっていたので聞きたかった。
「まず管理者は名前の通り、管理する人、なんだよ。管理するものは担当する土地の治安。人によっては国だったり、県だったりする。僕はまだ若いからこの県全域を担当してるよ。」
「へー、でもなんで管理しないといけないの?」
「理由は、まぁ平和の為かな?僕みたいな魔法使いっていうのは知られてないだけでたくさんいるし、中にはバーサーカーと呼ばれる狂戦士や魔女、ドラゴンライダーや悪魔使い、人によっては天使の加護を受けた人もいる。そういうやつらが悪さしないように見張るためだね。あとは君みたいに変に絡まれてる人を助ける為。」
「へー、秘密結社みたいなものなんだね、管理者っていうのは」
「まぁ、ざっくり言うとそうだね。」
「大変なんだねぇ」
「全くだよ、でも本来、魔法は使用禁止だから、その組織に入らないと使えない。だから仕方なく僕は入ってるんだけどね」
「免許とかいるの?」
「そうだね、一応ライセンスはそれぞれにあって、階級も別れてる」
彼はそういうと時計を見て
「時間だからそろそろ支度するから、この話はまた今度ね」
そういうと彼は研究室に行った。
世の中色んな人がいるんだなぁと思った。
少し経った後、インターホンが部屋のなかに鳴り響いた。
「黒瀬様お迎えに上がりました」
「今行く」
そう言って扉を開けるとスーツの人と見た目がチャラい男の人がいた。
「黒瀬ぇぇぇ!!!久しぶりだな!!」
「うわっ…」
「うわってなんだよぉぉぉ!!!お前なかなか来ないから今回は俺様が直々にむかえにきてやったぜぇぇぇ!!!」
普段なかなか感情を表に出さない彼が明らかに嫌そうな顔をしていた。
「相変わらずうるさい奴だ…」
彼はボソッと呟く、とてもめんどくさそうな顔で。
「そんな顔すんなよ、はっはっはっ!!!」
彼は爆笑していたが、ふっとこちらに気づいたのか
「おっ、なんだお前!ついに彼女でも作ったのか?!お嬢さん名前は?」
「あの子は彼女じゃない、訳あって今は匿ってるだけだ。」
彼は訂正するが、質問は止まらなかった
「ねぇねぇお嬢さん名前は?年はいくつだい?ぱっとみ黒瀬とおなじくらいかな?こんなつまんねー部屋でなにしてんの?」
「つまらん部屋で悪かったな」
私は慌てながら答える
「え、えっと、わたし八代水城って言います。今は色々あって黒瀬君の家に匿ってもらってます。年は黒瀬君と同い年で同じ高校にいます。クラスは違うけど。」
チャラい彼はうんうんと頷きながいう
「いいねぇ、やっぱり若い女の子は。黒瀬きゅんも遂にまた青春し始めたのかぁ。お兄さん嬉しいよ!」
「うるさい、もう行くぞ馬鹿」
「馬鹿ってなんだよ!!相変わらずだなぁおまえも!」
黒瀬君は早くこの場から去りたい様子だったが
「良かったらお嬢さんも集会行くか?てか行こうぜ!どいつもこいつもつまらんやつとかむさ苦しい奴しかいなからさぁ!頼むよ!」
突然の事に困惑してしまった
「えっ、あのっ、てかそれってわたしみたいな一般人も行って大丈夫なんですか?」
「厳密に言うと駄目だけどさぁ、でももう世界の管理者とかの話はさすがに黒瀬から聞いてるっしょ?だったら一応来て話聞くだけでも自衛にはなるからさ!」
私は困って黒瀬君に聞く
「えっと、黒瀬君、私も行って大丈夫?」
黒瀬君は少し考えたのちに
「好きにすれば良い。」
と質素に答える
えぇ、どうしようか。
「ほらっ、黒瀬もこう言ってることだしさ!さっさっ!もう時間もないから行くよ!!」
チャラい彼は私の手を引っ張り連れていく。
黒瀬君は少しため息をつきながらも「しょうがないな」と言い。家のカギを閉めてついてくる。
マンションの下まで降りると田舎町に似つかわしくない高級そうな車が止まっていてスーツの人が一人立って待っていた。
「どうぞ、お乗りください皆様」
スーツの人はすっと、扉を開けると皆して乗り込んだ。
中は普通の車だったが、高級な車なのでそれ相応の綺麗なものだった。
「あの、そういえばあなたの名前って?」
「あああ!自己紹介が遅れたな!俺の名前は今はシン・スーっていうんだ!一応これでもエクソシスト兼バーサーカーだよ!宜しくね!」
エクソシストは確か悪魔払いで、バーサーカー!?この人狂戦士なのか…
「あっ、今頭のなかで気を付けないとって思ったでしよ!!安心して!狂戦士化は戦うときだけで普段は優しい優しいエクソシストだから!」
そうなのか?
「まぁ、それは本当だけど、いつもうるさいし、見ての通りチャラいから連絡先とか教えちゃ駄目だよ」
隣の黒瀬君が言う
「なんだよ!!黒瀬!!つれねぇなぁ!!」
「ほらね、うるさいでしょ?」
「ハハハッ…」
私は苦笑いしか出来なかった
そんな会話を続けていたら、あっという間に集会の会場に着いた。
空気が少しピリピリしているが、とても静かで誰もいないような雰囲気だった。
しかもあったのは、小さな小さなプレハブ小屋だった。
「えっ、ここが会場ですか?」
私は思わず聞いてしまった。
「まぁ来ればわかるよ」
黒瀬君はまた質素に言う。
「まぁそりゃあ日本中の管理者が一同に集まるからな!あえてよくわかんねーよぅにしてんだとよ!!まぁお嬢さんついてきな、驚くぜ!」
こんな空気の中でも大きな声でハツラツに言う彼はもはや空気が読め無いのではなく意図的に読んでないのかと思ってしまった。
「まぁまぁお嬢さん、俺はしんみりした空気が嫌いなんだよ!明るくいこうぜぇ!!」
彼は笑いながら歩いていった。
彼らの後を着いて行き、プレハブの扉をくぐるとそこには地下に通じているであろう階段が一つだけあった。
少しドキドキしながらもその階段を降りていくと、次第に目の前に大きく、まるでマンガやアニメでよく見るテーブルと椅子があった。
すでに何人もの人がそれぞれの椅子に鎮座して待っていた。
見た目が普通の人もいれば、不思議な衣装を身に纏った人、人なのかもよくわからない人もいた。
ここに自分はいても良いものだろうかと不安になった矢先に
「その女はだれ?」
といわゆるゴスロリという衣装の女性が問いかけてきた。
とても美しかったが、その言葉には少し敵意のようなものが感じ取れた。
「僕の連れです。気にしないで下さい」
黒瀬君が淡々と話す。そこには感情らしきものは読み取れなかった。
私はここにいてもいいのだろうか、と考えた瞬間
「俺が無理やり連れてきたんだよ!もう管理者については知ってるから一応連れてきた!悪かったなぁマチお嬢!はっはっはっ!!!」
とシンさんが笑いながらいう。
この人はなんでさっきから私が考えた矢先からその疑問や不安を取り除こうと出来るのか少しこわくなった。
「まぁ、良いじゃないか。久しぶりの客人だ。しかも、あの黒瀬殿の客人とあればもてなしましょう。黒服や、そのお嬢さんにも椅子を持ってきたまえ」
一番奥の中央に座る白髪のおじいさんが笑顔でそう言うと、スーツの人がどこからともなく椅子を取り出した。
「差し支えなければ、宜しかったらこちらにどうぞ」
「あっ、どうもありがとうございます…」
私は軽く会釈をして椅子に座る。
「さぁお二人とも座りなさいな。もう皆揃っておるからな」
おじいさんがそう言うと二人も椅子に座った。
少し静まりかえった後、おじいさんが話始める。
「さて、今日も集会を始めようと思う。それぞれの管理地域にて何か問題はあったかな」
おじいさんは淡々と話す。
その後は私にはよく理解の出来ない話が続いた。
最近小さなヤクザの組ができたから一応潰しておいたとか、妖精の森の結界が弱くなったから強化しといたとか、珍しい謎の生命体が何処か生まれて、さ迷っているだとか。
どれもお伽噺を聞いているような、冗談のような話が続いた。
黒瀬君は相変わらず何も話すことはなく、シンさんは良く笑っていた。
時間にしたら約二時間程たった頃だろうか、話が一段落着いたらしく、おじいさんが解散と言い各々が帰路につき始めた。
「八代ちゃん!集会も終わったし帰ろうか!!!」
シンさんが笑いながら近づいてきた。
「相変わらずめんどくさい集会だよ」
黒瀬君は疲れた様子で話す。
「黒瀬殿や、少しだけ時間があるかな?」
おじいさんが黒瀬君に話しかける
「少しだけ良いかな?」
その様子からは良くない話のような雰囲気が感じ取れた。
「なんでしょうか?」
黒瀬君が聞くと
「ここじゃ人が多い、少しだけ二人っきりで話したいことがある」
そう言うとおじいさんは黒瀬君を連れて何処かに消える。
どうしたのだろうか…
「まぁ、黒瀬は特例だからな。じいさんも色々と気になることが多いんだろう」
シンさんが言う。
「特例?ってなんですか?」
私が聞くと
「あれ?黒瀬から聞いてない?まぁあいつが自分から言うわけ無いか」
なんだかあまり言い話では無さそうだけど、気になってしまった
「教えてもらってもいいですか?駄目なら大丈夫ですけど…」
「まぁ、別に言ったところで何もないからいいか」
そう言うとシンさんは黒瀬君について話始めた。
「普通は管理者ってのはそれ相応の能力を持ったやつしかなれないんだよ。単純な力もそうだし、頭が良いとか、強力な魔法が使えるとか。そして、それ相応の階級が必要なんだよ。その階級は勿論上になればなるほど難しい。だけど黒瀬は、たかだか数ヶ月、半年もいかないうちに最高ランクの魔法使いのライセンスを手にいれて、あり得ない早さで管理者になった。普通は何年、人によっては何十年かけるものをあいつはたかだか半年でそこまで上り詰めた。はっきり言って異常だよ」
そうなのか…
「多分見たことあると思うけど、あいつ空間転移の魔法とか普通に使うだろ?」
「あっはい。何度かご一緒させてもらったときがあります。あれってそんなに凄いんですか?黒瀬君は普通に使うけど…」
「空間転移魔法は最上クラスの魔法のひとつだよ。出来るようになるまで普通は数年、しかも手のひらサイズの物でだよ。人を一人飛ばすのにどれだけの計算能力がいるのか計り知れない。しかも二人同時になんて狂気の沙汰だよ。スーパーコンピューター使っても出来ないんじゃないか?」
そんなに凄いのか…
「そんだけ凄い魔法使いだからこそ、じいさんも心配してるんだろうな。」
シンさんは真面目な顔で言う。
「努力家は常に崩壊と隣り合わせだと思ってた方が良い、頑張る反面、その努力の裏にどんな思いがあるかわからない。目的が必ずある。そしてそれが叶わない物だと気づいたとき、それは人であろうと無かろうと脆くなり、壊れやすくなるものだからな。」
私はうなずくことしか出来なかった。
「だからあいつが誰かと一緒にいることが俺は本当に嬉しかった。あいつは今まで感情の無いロボットのような人間だったからな。昔は違ったけど、あるときからおかしくなっちまった。」
昔は違ったのか?
「あの、昔って?」
「ああ、もう数年前かな、あいつが魔法を覚え始めた頃の話だよ。
その時は良く笑って、幼い少年みたいな印象だったな、魔法もまだちぐはぐで可愛らしい程度だったんだけど。」
そう言うとシンさんの顔が曇り始めた
「去年くらいからかな?急に魔法が上達し始めて、そんでいつも目の下に隈が出来てたんだ。その辺りから感情を表に出せなくなってもきてたんだよ。」
去年くらいか…
私の知らない彼がそこにはいた。
「そんでまぁ、今に至るよ。あいつは最近自分から誰かと一緒にいようとしなくなったけど、八代ちゃんが一緒に居てくれるのは本当に嬉しいんだ」
そう言うとシンさんは改まってこちらを向き、
「八代さん、どうかあいつが間違った道にいかないよう見てて欲しい。頼む」
シンさんはそう言うと深々と頭を下げていう。
「いや、私なんかがなにか出来る訳じゃないし…」
シンさんは頭をあげてこちらを真っ直ぐ見つめていう
「何かできなくてもいい、誰かがそばにいなくちゃいけないんだ。あいつは幼い頃に両親を事故で無くしてる。彼女もいたが今は死んじまってる。俺達管理者は自分の地域を管理しないといけないからずっと一緒にはいてあげられない。あいつに今必要なのは人の温もりだ。頼む。」
シンさんはまた頭を深々と下げていう。
「私に出来ることだったら…」
私がそう言うと
「ありがとう、頼んだよ」
とシンさんは笑顔で言う。
「そう言えば、黒瀬君の彼女さんってどんな方だったんですか?」
私はふとした疑問を問いかけてみる。
「ん?あぁ。彼女さんも確か魔法使いで、とびきり可愛くて優しい子だったなぁ、それと…」
その次の言葉を聞いて私はぞっとしてしまったのと同時に、忘れていた事を思い出した。
「背は高くなくて髪の毛が白髪の珍しい子だったな。長くて綺麗な髪だったよ」
「…え?」
「え?だから、白髪ロングの可愛らしい子だったよって」
あの実験室の水槽は小さな子が一人入れるだけの大きさで、そして
『長い白髪が浮いていた』
「…八代さん、それは本当かい?」
「え?どういうことですか?」
「その水槽の話詳しく聞かせてもらってもいいかな?」
私は話していないのになんで考えた事がわかるんだ。
「俺はエクソシストをしているといったね。時には悪魔の心を読み解かなくてはならないから、能力なんだけど、相手が何を考えてるかわかるんだ。」
相手の考えが読める…
そんなことも出来るのか。
「それは一旦置いといてその水槽の話、わかってる範囲でいいから教えてくれ。場合によっては、あいつはこの世の理を破っている可能性がある。そうなると、あいつに罰を与えないといけない」
「わかりました…わかる範囲でなら…」
もし評価数や感想、ブクマ等が多かったら続きを書こうと思います。
よろしくお願いします。




