史上最悪の侵略!小百合・ザ・ジャイアント登場
さて、あと15匹のワニの兵士はどうなるのか?
そして、小百合たちは無事に国王たちを救えるのか……。
それはともかく、久々に小百合が戦います。
前作:スペースおいらん騒動 ~忍者vsメイド~ もよろしく!
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7.史上最悪の侵略!小百合・ザ・ジャイアント登場
宇宙屋形船「かわずおとし」はヤーホン城に向かって発進した。残り15匹のワニの兵士は無視して、まずは地下室に閉じこもっているヤーホン国王たちを救出し、異世界転送でエドー星に向かうためだ。
残りの村については上空から一応確認して進んだ。生存者の確認は出来なかったが、途中でちょうちんレーザーにより5匹のワニの兵士を破壊した。ヤーホン城まであと少し、だがしかし……。
「レーダーに超大型の反応あり、上空から降りてきます」
レーダー監視していたソラがいう。
「あれか、また落としてきやがったか」
小百合が見た物はあの超大型のヘビ型無人宇宙船だった。
「ソラ、着地点を!」
「ヤーホン城から2kmくらいの位置です」
「畜生、もう徹甲弾も2発だけだぞ」
「また墜落してくれないかナ?」
「それを願うしかないか……」
「かわずおとし」はヤーホン城の上空に到着した。だが、期待とは裏腹にとぐろを巻いたようなあのヘビ型宇宙船はすぐ近くにその大きな巨体を綺麗に着陸させていた。着陸と同時にヘビ型宇宙船は外周のハッチを開け、そこから二本足で歩くワニの兵士が剣を振りながら大量に降りようとしていた。
「くっそ、とりあえず開いたハッチを破壊してやる!」
佳の操船で「かわずおとし」はヘピ型宇宙船の廻りを飛び、小百合は開いたハッチに向けて主砲から通常弾を発射し、降りようとしていたワニの兵士ごと破壊する。
「くそう、ハッチの数が多すぎるな」
ヘビ型無人宇宙船の1500m程の外周に並ぶハッチ。蛇沼博士の話ではハッチの数は30個、総数1200体のワニの兵士がいるという。
「あ、中心部の大型ハッチが開きます」
ソラが言う。ヘビ型無人宇宙船のとぐろの中心部、大型兵士の格納装置のあったホールの上部が8等分されたピザのように分かれて開こうとしていた。
「ヤバいぞ、大型兵士が一気に出てきたら『かわずおとし』だけじゃ対抗出来ないぞ。とりあえず救出を優先するか」
「かわずおとし」はヘビ型無人宇宙船の大型ハッチに主砲通常弾を3発撃ち込むと、半球型のヤーホン城の前庭に着陸というかホバリングした。小百合とゲス夫が梯子を下りるが……。
「くそ、もう間に合わないか!」
ヘビ型無人宇宙船のハッチが完全に開き、中から二足歩行大型兵士の格納装置が20機飛び出て来た。ワニ型の大型兵士5匹のうち2匹は通常弾の攻撃で頭部が壊れていたが、後は今にも格納装置を外して出て来そうだ。
「今から地下に降りて全員を「かわずおとし」に乗せるには2~30分は必要だな。もう残弾も無いし。こっちも大きいロボットでもあれば……」
「大きい……ロボットはないですが、ひとつ手が……」
ゲス夫が言う。
「なんだよ時間がない、早く言えよ」
「体を大きくする古の魔法ならあります」
「なんだと!お前、小さくだけじゃなく大きくもなれるのかよ!」
「他人にかける術なので私には無理です。そして私たちの体ではもたないのです」
「私なら大丈夫かもってか、いいや、やってみろよ、それ、もう他に手が無い。」
「はい!」
返事をするとゲス夫は左手を伸ばして小百合の背中に触り、なにやら呪文……というよりは念仏のような言葉を唱える。すると小百合の体が虹色に光り出し、その人型の光は50mの高さにまで大きくなった。光がゆっくり消えると、そこには巨大化した小百合の姿があった。ありがたいコトに服などの装着物まで大きくなっていた。
「なんだこりゃ、ホントに大きくなっている!」
小百合は怪我の確認のように手足を触り、動かし、軽くジャンプした。
「小百合・ザ・ジャイアント~城が崩れる、あっちでヤレー!」
城の一部が振動で崩れたため、佳は小百合の顔の高さまで「かわずおとし」を浮上させて、ハッチからメガホンで叫んだ。
「ああ、スマンかった」
小百合がそういうと佳は耳を塞いだ。巨大化のせいか超低音になり、さらに選挙カーくらいのボリュームになった小百合の声が佳の耳を襲ったのだ。
「デカイ奴らの足止めしているから、佳とケロット姫で地下の奴らを助けてくれ、ソラは撃ち逃した小さいワニをレーザーで破壊しろ!」
今度は小声で囁く小百合だが、それでもボワンボワンと佳を襲った。なんとか話は繋がったので「かわずおとし」はまた着陸状態でホバリングし、佳とケロット姫をおろした。ゲス夫は左手を伸ばしたままの姿勢で念仏?を唱えたままである。
巨大化した小百合はヘビ型無人宇宙船へと向かった。まずはワニ3匹が収納装置から外れて剣を振り回しながら歩いて来た。
「順番で出てくるのはお行儀が良いな。綺麗に破壊してやるからな!」
そう言うと小百合は中段の後ろ回し蹴りを連続でくり出す。あっという間に30mのワニの兵士全てから頭が消えた。魔法の巨大化は細胞などがそのまま膨張するのではなく、密度を保ったままで大きくなっているらしい。スピードは(見た目には)変わらず、破壊力は身長からのスケールである30倍を超えてそうである。
次は身長50mのカメの兵士が5匹だ。いきなりカメは両手にもった槍を投げて来たが、小百合はそれをなんとか避けつつ、一本をつかみ取る。小百合はその槍を以前見た、ツーファイブ星のサンタ・スシー大名の動きのように体の前でぐるぐる回した。他の槍はすべてそれに弾かれた。槍を失ったカメの兵士はうつぶせになって手足と頭部を隠したが、小百合は隠したカメの兵士の頭部にヤリを差し込んで行った。巨大なカメの兵士は全滅した。
今度は身長50mのカメレオンの兵士が5匹。小百合は槍を捨て、倒したワニの兵士の剣を持った。カメレオンは今回も200mの長さの触手のような舌を伸ばしてきた。剣で舌を断ち切る小百合だが、左手に一匹のカメレオンの舌が巻き付いた。小百合と綱引きになったカメレオンだが、巨大化した小百合の力には勝てず、引き寄せられて剣を腹に刺された。舌を失った他のカメレオンは小百合の上段後ろ回し蹴りと踵落としによって全て頭部を失って倒れた。小百合はとどめにカメレオンに何度も剣を差し込む。
城の地下に降りた佳とケロット姫は地下室を塞ぐ岩を押した。しかし、小百合とほぼ同等の筋力を持つ佳がいてもケロット姫の力はゲス夫よりも遥かに弱かったため、岩を動かすのは厳しかった。佳はいつもの日本刀で岩を半分に水平切りして、ようやくどけるコトが出来た。
「おお、無事だったかケロット!」
「お父様、お待たせいたしました。ただ敵がまた攻めてきています。早く脱出を!」
ペンライトを照らして国王の無事を確認したケロット姫は現地語で全員出るように促す。佳を先頭にして一同は長い階段を登り、そしてついに城を出た。
「おお、なんだあれは!」
ヤーホン国王が現地語で叫ぶ。城から出ると巨大な小百合が巨大なウミイグアナの兵士と戦っていた。開いて立てた左手を前に、軽く閉じた右手を腰のあたりで構えた小百合がウミイグアナ3匹と向かい合う。近くには動かなくなった巨大なウミシグアナの兵士が二匹うつ伏せで倒れていた。
その下では「かわずおとし」が残り300mまで迫るワニの兵士をちょうちんレーザーで破壊していた。自動操縦でホバリングした「かわずおとし」でちょうちんレーザーを操るソラ。特訓の甲斐もあって、今回はワニの兵士をうまく抑え込んでいる。
「早く登レ!」
佳がケロット姫に声をかける。ケロット姫が翻訳して15名のカエルたちは船の梯子を恐る恐る上る。先に登った佳がカエルを引き上げる。ヒゲをつけた国王以外は佳にはさっぱり見分けがつかないが、とにもかくにも引き上げ続けるのだ。
「さすがに疲れたな」
小百合がまたボアボア言う低音でつぶやく。ウミイグアナの兵士はやはり固く、巨大になった小百合の改造安全靴や佳特製のカイザーナックル付きオープンフィンガーグローブでも簡単には破壊できない。得意の関節技も爬虫類モデルのようなのに作り的には外骨格のような機械のウミイグアナの兵士には効かない。先に倒した2匹と同様に連続の上段蹴りで頸椎のあたりを執拗に狙って、やっともう1匹を倒した。残りは2匹……。
「ゲス夫さん、がんばって!」
ケロット姫が叫ぶ。ゲス夫は目を閉じて脂汗を流し、苦悶の表情になっていた。ただの念仏ではなく、小百合に魔力を伝えて巨大化を続けるものなのだ。ゲス夫はすでに酔っ払いのように足元が危うくなっていた。ケロット姫はゲス夫の右手を肩にかけてなんとか立たせ続ける。
「くっそ!」
小百合は時間を稼ぐためにウミイグアナの兵士の1匹を前蹴りの320文キックで、もう1匹をランニング・ネックブリーカー・ドロップで仰向けに倒した。しかし、それと同時に小百合の体は縮み、普通の体に戻った。
「ここまでか」
小百合は「かわずおとし」の方に走った。梯子の下ではぐったりしたゲス夫をケロット姫が抱えている。すでに15人のカエルは船に登って宴会場で震えていた。いや、ヤーホン国王だけは心配そうにケロット姫とゲス夫を船の縁から覗いていた。
「姫は早く登れ!ゲス夫は私がなんとかする!!」
ひっくり返った2匹の巨大なウミイグアナの兵士は起き上るのに時間がかかった。小百合はソラの援護射撃をすり抜けて「かわずおとし」に向かって走る。
「佳、飛べ!!あと、イグアナの野郎に主砲残弾全部叩き込め!」
ケロット姫が船に登り切ったところで小百合が叫ぶ。コクピットに戻っていた佳が慌てて船を垂直上昇させる。小百合はゲス夫に付けさせていたGと書かれた赤いビブスに左手を入れて持ち上げたまま、梯子の一番下に足を掛け、右手で捕まっていた。
「ソラを吊り下げる予定をしていたのに、私が吊られるのかよ」
そう言う小百合を吊り下げたまま「かわずおとし」は高度を上げた。噂されたソラは2匹の巨大ウミイグアナに向けて徹甲弾と通常弾と、花火でしかない7尺玉まで主砲の残り全弾を撃った。1匹のウミイグアナは頭部に徹甲弾が命中して倒れたが、もう1匹は表皮が焼けて鉄の体丸出しにはなっていたが立って唸りを上げていた。等身大の小さなワニの兵士は200匹程残っており、「かわずおとし」がホバリングしていたヤーホン城の前庭で、剣を振り回しながら「アメズーンテイコクサイキョー!」と声を上げていた。
ここにヤーホン城はアメズーン帝国に落され、アメズーン帝国のヤーホン王国侵略は果たされたのである。
「ゲス夫の様子は?」
城から大きく離れた湿地帯に降下した「かわずおとし」に収容された小百合がゲス夫の横にいるケロット姫に聞く。
「あまり良くありません。あれだけ強い魔法を長く使うとは、いくら国で一番の魔法使いであるオパック卿でも。兎に角、栄養を補給しないと。いま、そこの主治医に魔法治療をしてもらっているのですが」
ゲス夫を挟んでケロット姫の向かいに座っていたカエルがゲス夫の胸に手をかざして青い光を放っていた。
「ソラ、とりあえずコーラを常温にしてゲス夫に飲ませてやれ。気が抜けやすいようにコップに入れて。ゲス夫の魔法力が戻らないとエドー星に戻れないからな……」
そこに宴会場の奥で蛇沼博士と向かい合って土下座をしていたヤーホン国王が立ち上がって近寄ってきた。ヤーホン国王は現地語でケロット姫と会話した。
「父……国王が転送魔法を手伝ってくれるそうです。位置のイメージは私が持っていますから、なんとかエドー星に戻れると思います」
「それはありがたい。とにかくエドー星に戻って色々と立て直そう」
ちょっとの休息後、「かわずおとし」は佳の操縦で地上2mの位置でホバリングした。下ではケロット姫が「かわずおとし」を持ち上げる姿となり、国王はゲス夫の「転送の翡翠」を目に取りつけ、ケロット姫に魔法力を与える為に両肩に手を置いていた。
二人の眼が七色に光り……。
~つづく~
もちろん今回の小百合の後半の闘いはあのジャイアントな方のオマージュです。
計算したらだいたい片足が320文になったんですよ。
16の倍数、なんとなく素敵な一致を感じます。
さて、次回は久々にエドー星に行く回です。まだ何も考えてませんが。