表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/220

6 平和な日々(前編)

 千年闇の森でゴーレムを倒し、天使に連れられて浮島まで行った日。

 伯爵への報告を短い時間で終えて、何とか僕たちはその日の内に、屋敷へと帰ることができた。


 報告の内容がよっぽど衝撃的だったのか、ルハンナ伯爵は途中から顔がこわばってたし、僕に質問する声も少し怖かったけど、アラベスとフォルデンさんが良い感じに取り成して、話を切り上げてくれた。

 急ぐようにリクエストしたのがまずかったのかな?

 トパーズはすごい勢いで、僕たちを屋敷まで運んでくれた。

 さすがに音速は超えてないと思うけど……。新幹線より速かったのは、間違いないだろう。


 屋敷に戻った僕は体調を崩して、二日ほど寝込んでしまった。

 軽い微熱と頭痛と倦怠感ぐらいで、自分ではそんなに心配する必要も無いと思ったけど……。それでも、エミリーさんやマイヤーが居てくれて助かった。

 ベッドまで食事を運んでもらうという、珍しい経験もできた。



 体調が回復してからは、のんびり粘土で楽しむ生活に戻った。

 寝込んでいた間にちょっとしたアイデアを思いついたので、その実験から。


 工作室で人形サイズの馬を造って、仮初めの石像(テンポラリゴーレム)で動けるようにして、屋敷の外で大きくして、アラベスに乗ってもらった。

 馬の頭に着ける道具とか、人が乗る鞍の部分とか、それほど詳しくなかったので思いつくままに造ってみたんだけど……うまくいったみたいだ。

 本物の馬に乗るのと、何も変わらないそうだ。

 王子様っぽい雰囲気もあるし、アラベスには白馬が似合ってるな。


 アラベスを降ろしたゴーレムに声をかけると、一瞬で、ニワトリの卵と良く似た形に変わった。

 このサイズなら持ち歩くのも簡単だし、馬の姿なら街に入るところで疑われることもないだろうし、トパーズを降りたあとの移動に良さそう。

 ……なんだかポ◯モンっぽい? カプ◯ル怪獣かな?

 他の形を思いつかないし、とりあえずこのまま採用で。


 念のため、マイヤーにも乗ってもらったけど、まったく問題ないそうだ。

 ……お願いしたのは僕だけど、次からは、メイド服姿で馬に乗るのは止めておこうね。いろいろと危ないから。


 最後に僕も、自分で造った馬に乗ってみた。

 馬に乗るのは初めてで、うまくいくのか心配してたんだけど……。思った通りに動いてくれて快適だった。いつもより視線が高いのも新鮮で面白い。

 馬のゴーレムを二頭造って、アラベスかマイヤーの後ろに乗せてもらうつもりだったけど……。これなら、僕の分まで造って良さそうだな。



 工作室に戻って、残りの二頭に取りかかる。

 白くてかっこいい馬。黒くて強そうな馬。茶色であまり目立たない馬。

 あわせて三体の馬が完成した。どれも、良い感じにできたと思う。

 白い馬はアラベスに、黒い馬はマイヤーに乗ってもらおう。

 尻尾を振って、耳をくるくる回して……。馬も可愛いなぁ……。


 えっ? どうしたのルビィ?

 急に豹の姿になって……。自分にも乗れってこと?

 あー……うん。わかったから。ルビィにも乗せてもらうようにするから。

 でも、豹に乗って移動してたら目立ちすぎるでしょ?

 僕がルビィを抱っこするから、許して……ねっ?

 アゴの下を強めに撫でてやって、何とか機嫌を直してもらった。


 馬のゴーレムを卵の姿に変えて、普段からアラベスとマイヤーに持っておいてもらえば便利だと思ったんだけど……。よく考えたら、仮初めの石像(テンポラリゴーレム)を使えるのは僕だけだった。

 仕方がないので、腰に着けるポーチをエミリーさんにお願いしておいた。

 アラベスが使ってるのを見て、前から欲しいと思ってたんだよね。

 これなら、卵サイズのゴーレムを持ち運ぶのにぴったりだろう。


 今の僕なら、仮初めの石像(テンポラリゴーレム)を三体同時に造っても、それぞれ、半日ぐらいは楽に動かせるはず。

 最初は魔力を少なめにしておいて、必要に応じて魔力を足して、動ける時間を延ばしても良いし……。実用上は問題ないだろう。

 せっかくだから、この三体には特別な名前を付けて……。これで、大きな街に入るのが楽になる予定。


         ☆


 いろいろ考えて……。僕が使っている白い粘土について、アラベスとマイヤーには本当のことを話しておいた。


 色や質感や大きさを、自由に変えられること。

 この世界に来る途中で、綺麗なお姉さんからもらったこと。

 浮島で魔法の女神に聞いて、これが女神の土だってわかったこと。

 オニキスとリンドウだけじゃなくて、ルビィとトパーズもこの粘土を使って僕が造ったこと。

 ついでに、仮初めの石像(テンポラリゴーレム)石像創造(クリエイトゴーレム)の違いも、簡単に説明しておいた。

 魂を分け与える話は、うまくぼかして伝えたつもりだけど……。二人は納得してくれたようだ。

 普通の粘土じゃないって前から気が付いたみたいだし、本当のことを話しても何も変わらないよね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ