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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第八章 バラギアン王国 野良ゴーレム討伐戦
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10 野良ゴーレム討伐(後編)

 ゴーレムが居る場所を上空から観察したけど、雲が分厚すぎて、まばらに生えている木がうっすらと見えるだけだった。

 仕方がないのでトパーズには、森から少し離れた場所に降りてもらい、そこから先は徒歩で近づくことにした。


 太くてゴツゴツした幹。灰色の枝。紫色の葉。

 ……妖魔の森で見た木と、雰囲気が似てる?

 千年闇の森と呼ばれるのが納得できるぐらい森は暗く、奥の方はぼんやりとしか見えない。

 これだけ暗いと遠見の魔法を使っても無駄かな? 今必要なのは、暗視の魔法かも。


「ピーゥ‼ ピーゥピーゥ!」

 どうするか考えていた僕に、トパーズが声をかけてきた。

 ……えっ? トパーズが偵察に行くの? ここで待ってれば大丈夫?

 森は暗いけど……。うん、わかった。そこまで言うのなら任せるよ。

 いつの間にか大鷲サイズに戻っていたトパーズが、ふわりと舞い上がり、木々の上を軽やかに飛んでいった。


「トパーズが偵察してくれるそうなので、ここで待機しましょう」

「わかりました」

 横にいるフォルデンさんを見ると、左手に大きな盾を構えていた。

 森の方だけでなく、周囲をしっかり警戒しているようだ。

 ……それって、ずっと腕に付けていた小さな盾では?

 必要な時だけ大きくなるのかな? 便利そうだなぁ……。


「いまさらだけど、アラベスやマイヤーはアンデッドが出ても大丈夫?」

「私にはこの、魔法の剣がありますから。実体を持たないアンデッドが出てきたとしても、斬り捨てて見せます!」

「私は精神攻撃に耐性がありますから。アンデッドのどんな攻撃からも、ソウタ様をお守りします」

 後ろに立っている二人が、自信に満ちた表情で答えてくれた。

 僕が一番弱いのは、最初からわかってたことだけど……。

 こういう時のために、少しぐらい身体を鍛えた方が良いのかな?

 素直に諦めて、強い人を頼る方が現実的か?


「にゃあにゃあ〜」

 抱っこしていたルビィが、尻尾で首筋をくすぐってくる。

 ……相棒に任せろってこと? わかったよ。

「それじゃあ……。僕は自信が無いので、いざという時はお願いします」

「はっ!」「はいっ!」「はい!」「にゃあ〜」

 四つの返事が重なって聞こえる。

 足元では人形サイズのオニキスが、ビシッと敬礼していた。



「えっ? もう、ゴーレムが見つかったの? こっちに近づいてる⁉」

 脳裏に大鷲の声が届き、急いで目を閉じて意識を集中させる。

 ……暗い森でも、トパーズには関係ないんだね。

 木々の間を足早に進む、ゴーレムの姿が目に入った。

 思ってたより小さい……。身長は三メートルぐらいかな?

 身体全体が土と苔に覆われていて、細かいところはよくわからない。

 表面がうっすら光ってるように見えるのは……。苔の影響? そういうタイプのゴーレムなの?


「ゴーレムが見つかりました。五分ほどで、ここまで来るそうです」

「ソウタ殿。見た目にはわからないかもしれませんが、この森に居るのはアイアンゴーレムです。これまでの野良ゴーレムとは、格が違うので……。気を付けてください」

「うん。わかったよ、アラベス」

 本音で言うと、そういう話はもっと前に聞きたかったけど……。お説教は帰ってからにしよう。

「オニキス、巨人サイズになって! ……話は聞いてたよね? 頼んだよ」

 人形サイズだったオニキスが、一瞬で巨人サイズに変化した。

 森では邪魔になるって判断したのだろう。マントはベルトの形に変えて、腰に巻いたままだ。

 胸の前で両手を構えてファイティングポーズを取るオニキスは、表情に余裕があるように見えた。

 ……これはもう、気のせいじゃないな。鉄の顔でも表情が変わってる。

 僕が造ったゴーレムだし、それぐらいおかしくないか。


         ☆


 軽く話し合って、フォーメーションを決めた。

 正面にフォルデンさん、左にアラベス、右にマイヤー。

 僕は三人がかりで守られるポジションで、念のためにルビィにも、豹の姿になってもらった。


 微妙に地面が揺れてる気がする。

 ドスドスと、鈍い足音が聞こえてくる。

「もうすぐ、ここからでもゴーレムが見えると思います」

 トパーズの視界を借りて、周りの人たちに状況を伝える。

 この緊張感は……。ベレス村の森で、マルコやカルロと一緒に鉄爪熊(アイアンクローベア)と戦った時と同じような感じ?

 あの時も、ルビィとトパーズに助けてもらったっけ。

「ああぁぁぁおおぉぉぉ〜……」

 優しく頭を撫でてやると、白豹が大きなあくびをした。

 ……まったく緊張してないね。お前は。


「ゴーレムが見えました、が……。足を止めたようです」

 最初に自分の目でゴーレムを確認したのは、マイヤーだった。

 その直後。足音が止まり、周囲が一気に静まりかえる。

「森の外に出られないのか?」

「そのようですね……。ソウタ殿、どうしますか?」

 森の妖しい雰囲気に飲まれたのかな?

 フォルデンさんだけでなくアラベスまで、不安そうな表情を浮かべている。

 こんな顔のアラベスは新鮮だけど……。気にしてる場合じゃないか。

「オニキスに任せましょう。それでダメなら、トパーズに乗って逃げるということで……。頼んだよ、オニキス」

 僕に向けて軽く手を振って、オニキスは森へと入っていった。


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