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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第八章 バラギアン王国 野良ゴーレム討伐戦
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8 北の戦場跡へ

 ゴーレム退治を正式に依頼すること。

 三体のゴーレムを討伐したら、報告しに来ること。

 それまでの間はずっと、フォルデンさんが同行することなど。

 細かい注意事項をイケメンの執事から聞いて、最後にもう一度、ルハンナ伯爵に挨拶をして、僕たちは謁見の間をあとにした。

 話の途中でアラベスやマイヤーの顔色を伺ったけど、特に注意されることもなかったし……。これで良かったんだろう。たぶん。


「ソウタ殿はもう、今日泊まる宿はお決まりですか? まだでしたら、私の方で良い宿を紹介できますが」

 謁見の間を出たところで、見届け役のフォルデンさんから声をかけられた。

 ……このまま、この街に泊まるって勘違いされてる?

 ゴーレム退治に何日もかけるつもりはないんだけど、スケジュールの話はしてなかったっけ。

「宿の手配はしなくても大丈夫です。予定より遅くなりましたが、今日のうちに一体ぐらいは片付けておきたいので……。すぐ出発しようと思います」

「どういう事ですか? 討伐を依頼したゴーレムで一番近いものでも、この街から馬車を飛ばして、丸一日はかかりますが……」

「では、宿の代わりに馬車を手配してもらえませんか? 街を出たところまで乗せてもらえれば大丈夫ですから。詳しい話は、道中ですると言うことで」

「……わかりました。では、急いで馬車を手配しましょう」

 フォルデンさんの表情が曇ってるけど……。口で説明するより、見てもらった方が早いと思うんだよね。

 トパーズに乗れないようなら、他の人に代わってもらわないといけないし。

 本音で言うと、この手のやりとりは全部、アラベスに丸投げしたいところなんだけど……。なんとかならないかな? さすがに無理がある?


         ☆


「こっ‼ こっ! こっ……。この巨大な鳥は何ですか⁉」

「僕の相棒のトパーズです。ここから先はトパーズに乗せてもらって、ゴーレムのところまで行く予定なんですけど……。本当に大丈夫ですか?」

 街道から外れた林の奥の広場で、トパーズを呼んで大きくなってもらった。

 ここまで来る間に、馬車の中で説明したはずなんだけど……。話に聞くのと実際に見るのでは印象が違うか。

 見届け役のフォルデンさんが、アゴが外れそうなほどびっくりしてる。


「大丈夫です。大丈夫ですが……。ゴーレムやアンデッドに対する備えはしてきましたが、まさかここで、こんなに巨大な鳥を見るとは……」

「私の師匠のソウタ殿は石像使い(ゴーレムマスター)ですが、優秀な野獣使い(ビーストテイマー)でもあります。これぐらいで驚いていては、これから先、身体が持ちませんよ?」

 ……アラベスの発言は僕をフォローしてくれたんだと思うけど、師弟関係の情報は、今は必要ないのでは?

 そう思ったけど、口に出したら話が長くなりそうだから、突っ込みを入れるのは心の中だけにしておいた。

 とっとと出発したいし、僕は準備を進めよう。


「オニキス! いつものように、トパーズに乗る準備をお願い」

 服の中から勾玉を引っ張り出し、人形サイズに戻ってもらう。

 すっと右手を挙げて敬礼したオニキスを見て、フォルデンさんの表情が再び固まった。

「そっ‼ そっ! そっ……。ソウタ殿? この、小さなゴーレムは……。まさかこれも、ソウタ殿が⁉」

「僕が造ったゴーレムで、名前はオニキスと言います。こう見えて、いざという時は頼りになるんですよ」

 褒められたのがわかったのかな?

 いつものように、トパーズの背中へと上がっていくオニキスの顔が、なんだか照れているように見える。

 鉄の顔で、表情が変わるはずもないんだけど……。そんな気がした。


「ソウタ様はフォルデン様と一緒に、オニキスさんの前に乗って下さい。私とアラベスが後ろに乗ります」

「そう? じゃあ、そうしようか」

 アラベスとマイヤーはいつも通りで頼りになるなぁ。と言うか、フォルデンさんが驚きすぎでは?

 経験豊富な神官戦士に見えるけど……。それだけ、トパーズやオニキスが変わった存在だってこと?

 もうちょっと慎重に行動した方が良いのかも……。

 まぁ、でも、見届け役の人に見られないようにするのは無理があるし、今回は諦めるか。


         ☆


 のんびり景色を楽しみながら、トパーズで空の旅。

 新鮮な空気を吸ったのが良かったのかな?

 フォルデンさんも、すっかり落ち着いたようだ。


 一時間ほどでゴーレムが彷徨っているという、北の戦場跡に到着した。

 爽やかな青空。眼下に広がる緑の草原。

 草原の中央を広い街道が通っているが、長い間手入れされてないようで、背の高い草に埋もれそうになっている。

「ピーゥ……。ピーゥピーゥ……」

「あっ、あれですね」

 最初に気が付いたのはトパーズだった。

 人間の腰ほどの高さの草をものともせず、北へと歩き続けるゴーレム。

 ゴーレムが通ったところだけ、草が倒れて跡が残っている。


「人魔大戦において、攻め込んできた人間の軍と守ろうとする魔族の軍がこの平原でぶつかり、激しい争いが起きました。その争いでマスターを失ったゴーレムが、今でも動き続けて……。誰も近寄れなくなっているのです」

 フォルデンさんの話を聞きながら、トパーズの眼を借りて、歩いているゴーレムをこっそり観察する。

 ガーディアンより小さい……。身長は五メートルぐらい?

 全体的にほっそりとした体付きだけど、手と足は大きめ。

 頭や肩に苔が生えてわかりにくくなってるけど、ストーンゴーレムだな。

「何の目的もなく、歩いているだけのように見えますが……。あのゴーレムは危険なんですか?」

「はい。あそこに見える街道を人や馬が通ろうとすると、近づいてきて攻撃されると聞いています。ゴーレムは足が速くないので、運が良ければ、何事もなく通り抜けられるそうですが……」

 国を守ろうとした石像使い(ゴーレムマスター)が、あのゴーレムを造ったのかな?

 誰も通さないように命令されて……。主が死んで戦争が終わっても、ここを守り続けているのだろう。

「ここの街道が使えるようになると、北東地方への行き来が今よりずっと楽になるのですが……。お任せして大丈夫でしょうか? ソウタ殿」


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