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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第八章 バラギアン王国 野良ゴーレム討伐戦
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7 ルハンナ伯爵

 高く盛り上げられた銀色の髪に、薔薇の形をした髪飾り。

 耳元で光る銀色のイヤリング。首元を飾る真珠のネックレス。

 大胆に開いた胸元からふわりと広がっているスカートの先まで、レースで丁寧に装飾された、ワインレッド色の豪華なドレス。

 本で見たマリーアントワネットって、こんな感じだったかな?

 ……いや、まてよ。こんなことを考えてる場合じゃないか。


「僕は天城(あまぎ)創多(そうた)ですが……。どなたから、話を聞いたのでしょう?」

「クスッ……。少し前に妹から、あなたの話を聞いたのですが……。わかりませんか?」

 ねっとりと、鼓膜にまとわりつくような声。

 にっこり微笑んだ表情は、引き込まれそうなほど美しい。

 相変わらず、女性の年齢はよくわからないけど……。人間で言うと、三十代後半から四十代前半ぐらい?

 伝説の英雄と会った時も同じようなシチュエーションで、同じぐらい綺麗だったけど……。女伯爵の方は、なんだか危険な予感がする。

「妹さん、ですか……? 妹さん……。んー……」

「あなたが妹と会ったのは、それほど前の話ではないですよ。妹と私は双子のようにそっくりだと、家族からも言われてたのですが……」

 つまり、僕が最近会った女性に、椅子に座っている女伯爵と良く似た人が居るってことか。

 ドレスの印象が強すぎて、何も思いつかないんだけど……。ドレス⁉


「もしかして……。ディブロンク伯爵の屋敷で紹介された人でしょうか?」

 あの時、紹介された中に、同じようなドレスを着た女性がいた気がする。

 第二夫人だって言われたような記憶が、うっすらと残っている。

「ちゃんと覚えているではないですか……。その、ディブロンク伯爵の元に嫁いだ妹と久しぶりに会ったのですが、ずいぶん自慢されたのですよ。ガーディアンでも相手にならないほどすごい鉄の巨人が、北東地方に居るって……」

「それは……。気分を害したのでしたら、申し訳ありません」

 じっと見つめられているだけで、自然と謝りたくなってくる。

 命令を出すのに慣れてる雰囲気? カリスマ性がすごい?

 自分では、何も悪いことはしてないと思うんだけど……。


「ガーディアンどころか、先代の魔王でも相手にならなかったとか……?」

「ええっ⁉ えーっと……。その話は、その……気のせいではないかと……」

「それほどの力を持っているのであれば、わたくしが治めている南東地方も助けてもらえるのではないか、と。そう思って、ギルドに依頼を出したのです。ここに来ていただけたということは、引き受けてくれるのでしょう……?」

 蛇に睨まれた蛙って、こんな気分なのかな?

 ルハンナ伯爵と話をしているうちに、何故か身体が勝手に緊張して、細かく身震いしてたんだけど——

 ちょっと、ルビィ。今は大事な話をしているところだから、尻尾でくすぐるのを止めてもらえるかな?

 抱っこしていた白猫に首筋をくすぐられて、緊張が解けた。

 ……僕が緊張したのを感じて、わざとやってくれたのかな?

 ありがとう、ルビィ。


「もちろん、そのつもりですが……。その前に、詳しい話を伺っても宜しいでしょうか?」

「……そうですね。では、説明を」

 ルハンナ伯爵の言葉を受けて、壁際に立っていた執事がさっと前に出た。

 この部屋まで、僕たちを案内してくれた人だな。

 ドレス姿の印象が強すぎて今まで気が付かなかったけど、他にも何人か、護衛らしき人が左右の壁際に控えているようだ。


         ☆


 美青年執事の説明によると、討伐対象となっている野良ゴーレムは三体。

 今、僕たちが居るルハンナの街から見て、北と、南西と、南東に、それぞれ一体ずついるらしい。

 ゴーレムは大きな街道の近くを彷徨っていて、安心して街道が通れるようになるだけでも、この地方にとってメリットが大きい、と。

 他にもいろいろと説明してくれたけど、どれもアラベスが持ち帰った紙に書いてあったとおりで、特に気になる情報はなかった。


「討伐に向かう際は、見届け役としてこの者を同行させて下さい」

 執事の言葉を受けて、護衛役だと思っていた人の中から、険しい顔の男性がこちらに近づいてきた。

 上からすっぽりと被るタイプの、ワンピースのような白い衣装。

 衣装の前に描かれた、赤い杖を組み合わせたような模様は、こっちの世界に来てから何度か見たことがある。

 確か、魔法を司る神様の記号だ。


「神官戦士のフォルデンです。ゴーレムが彷徨う戦場跡には、アンデッドが出ることも多いので、私が見届け役に選ばれました。よろしくお願いします」

「あっ、天城(あまぎ)創多(そうた)です。こちらこそ、よろしくお願いします」

 簡単に挨拶をして、握手を交わす。

 太くてゴツゴツした指。分厚い手の平。

 しっかり鍛えられた、戦士の手って感じがする。


 普通の人間に見えるけど、魔族なのかな?

 年齢は……たぶん、三十代後半から四十代ぐらいか。

 短く切りそろえられた黒い髪。健康的に日焼けした肌。

 太い首。自信に満ちた表情。僕より頭一つ分ぐらい背が高い。

 左腕に付けてるのは小さな盾かな? 小さすぎて、盾としては使えない気がするけど。

 腰から下げているのはメイス? アンデッドには、剣よりもこっちの方が良いのかな?

 ゲームでは見たことがあるけど、まさか実物を見る日が来るとは。


「出発する前に、僕の方から確認しておきたいことがあるのですが……。質問しても良いですか?」

「どうぞ。何でも聞いて下さい」

「フォルデンさんは、高いところは平気ですか?」

「……はい?」


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