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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第八章 バラギアン王国 野良ゴーレム討伐戦
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3 会計報告

 仮初めの石像(テンポラリゴーレム)を造れるようになって、実験に夢中になって……。気が付いた時にはもう、三週間ほど経っていた。


 最初の頃は僕の作業を邪魔しないように、工作室に入るのを遠慮していたエミリーさんやマイヤーが、ノックしないで入ってくるようになった。

 これはどっちかというと、部屋の中で馬を走らせた僕の方に問題があるのかもしれない。

 白い粘土で人形サイズの馬を造って、そこから、本物の馬のサイズに変身させる実験をしたら、あっさり成功したんだよね。

 屋敷中に馬の足音が響いて、人が集まってしまった。

 エミリーさんは大きな声で怒ったりしないけど、腕組みをした姿勢でじっと睨まれると……。それはそれで怖かったです。

 次から、馬を走らせる時は外でやるって約束して、許してもらった。


 夕飯の時間になると、マイヤーが粘土を取り上げるようになった。

 屋敷の主である僕が決まった時間に食事を済ませないと、働いている人たちがいろいろ困るそうだ。

 ……食事が冷めるのを嫌がってるだけかもしれないが、ルビィやトパーズにも何度か心配されたし、これはマイヤーが正しいんだろう。

 むしろ、これまで見逃してくれたのを感謝するべき?

 できるだけ、食事の時間を守るよう約束して、許してもらった。



 そして、良く晴れた月曜日の午後。

 イムルシアの首都まで買い出しに行っていたアラベスが帰ってきた。

 早速、馬車に積んであった木箱を、下働きに頼んで工作室へ運んでもらう。

 ……オニキスに運んでもらう方が早いような気もするけど、下働きの仕事を奪ってはいけない。

 こういうところで気を使えるようになったのは、エミリーさんに屋敷の主としての心得を教え込まれた成果かな?


 細い筆、太い筆、大きな刷毛(はけ)

 瓶に入っているのは油絵に使う絵の具かな?

 アラベスが持ち帰った木箱には、美大時代に見たことがあるような道具がぎっしり詰まっていた。

 話を聞いてみると、筆や塗料については詳しくないので、情報屋に紹介してもらった店で、おすすめされた物を一通り買ってきたそうだ。

 軽く試してみた感じ……どれも、粘土に使うのは難しそう。

 もっと、乾きが速い絵の具じゃないと……。やっぱり、僕が自分で買いに行くしかないか。


「ちなみに、これでいくらぐらいしたの?」

「全部まとめて、金貨二十枚でした」

 まだ、こっちの世界の金銭感覚に慣れてないけど、たぶん、金貨一枚が日本の一万円ぐらいだと思う。

 つまり、木箱一つ分の画材で二十万円?

 日本の感覚だと、かなりお高い気がするけど……。元の世界でも、素材の違いですごく高い絵の具とかあったし、これぐらい普通かな?

 絵を描くのなんて、職人の仕事か貴族のたしなみのような気もするし、そう考えると、買えただけですごいのかも。


「そう言えば、聞くのを忘れてたけど……。あの、石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんに分けてもらった粘土は、いくらだったのかな?」

「私にも相場がわからなかったので、老人から言われたとおり、金貨五十枚を支払っておきました」

 ふと思いついて、横に居るマイヤーに聞いてみた。

 金貨五十枚……。木箱一つ分の粘土で、五十万円か……。

「魔力を通しやすい素材について、私の方でも調べてみたのですが、簡単に手に入るものではないようです」

「……そうなの?」

 そう言えば、筆や塗料を買ってくるのと一緒に、ゴーレムに使えそうな素材について調べるように、アラベスに頼んでたっけ。

「はい。この手の素材は基本的に、魔術具造りを仕事にしている錬金術師(アルケミスト)魔法使い(ソーサーラー)が独占しているので、市場に出回ることは滅多にないそうです。冒険者ギルドに素材集めの依頼が来ることはありますが、その場合も、詳細を秘密にするのが条件に入っていると……。知り合いの情報屋に言われました」

「そうなんだ……。そう考えると、金貨五十枚で分けてくれたのは、格安だったのかな?」

「おそらく、そうだと思います」

 小さくうなずいているマイヤーも、同じ考えなのだろう。

 あのおじいちゃんにも、何らかの形でお礼をしなくっちゃ。


 木箱一つ分の画材で金貨二十枚は良しとしよう。

 油絵は得意じゃないけど、気になるモチーフが見つかったら絵を描くのも面白そうだし。

 魔力を通しやすい粘土が金貨五十枚するのも納得がいく。

 こっちはもう、元を取るぐらい楽しんだと思う。


 どちらも悪くないんだけど……。ちょっと、お金を使いすぎ?

 この屋敷に来てから銅貨一枚すら稼いでないのに、こんなに使ってたら、そのうち破産しそうで怖いんだけど。

「そう言えば……。ディブロンク伯爵の城を訪問する時にかかった費用も、聞いてなかったよね? いくらぐらいかかったか、マイヤーは知ってる?」

「ソウタ様。時間も良いようですし、話の続きは午後のお茶を飲みながらにしませんか?」

「ふにゃあぁ〜〜」

 マイヤーの言葉を受けて、今度はアラベスが小さくうなずく。

 テーブルの上で丸まっていたルビィが、可愛く鳴いた。


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