表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第八章 バラギアン王国 野良ゴーレム討伐戦
75/220

1 実験の日々(前編)

 無事に屋敷へと戻った僕は、石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんに譲ってもらった粘土でいろいろ実験してみた。

 まずは、仮初めの石像(テンポラリゴーレム)の復習から。

 灰色の粘土で高さ十五センチほどの土人形を造り、呪文を唱える。


仮初めの石像(テンポラリゴーレム)!」

 二回目だから、かな? あっさり成功して、土人形が動き出した。

 僕の呼びかけに応じて、自由に動いてくれる。

 どうやら、ゴーレムになると素材が微妙に変化するようで、粘土の時より肌が硬くなってる。

 軽く水をかけてみたけど、溶け出すようなこともなかった。

 ……これも、魔力の影響かな?


 いろいろ試していると、一時間ほどで土人形は動かなくなった。

 今の僕にはこれぐらいが限界なんだろう。

 続けて、サイズは同じぐらいで犬っぽい形を粘土で造り、呪文を唱えた。

「ワンッ! ワンワンッ!」

 軽く背中を撫でてやると、犬のゴーレムが勢いよく尻尾を振った。

 成功したのは嬉しいけど……お前は鳴き声を出せるんだね。


 だとしたら、さっき造った土人形やオニキスがしゃべらないのは、ロボットっぽい見た目でしゃべるところを、僕が想像できないから?

 しっかり想像すれば、オニキスも声を出せるようになるのかな?

 身振りや手振りで意思疎通できてるけど、声が出せた方が便利なこともあるだろうし……。オニキスのバージョンアップを考えておこう。


 犬のゴーレムに続いて、鳩っぽいゴーレムを造ってみた。

 こちらもあっさり成功。

 同時に二体造っても問題ない、と。

 キョロキョロと首を振る動きが可愛い。

 翼の動きも滑らかで、良くできてると思うんだけど……。

 羽ばたいても飛び立てない? 身体が重すぎるのかな?

 この辺りが、灰色の粘土で造ったゴーレムの限界のようだ。

 これが、綺麗なお姉さんにもらった白い粘土だったら、素材レベルで変化するから、重さの問題も無いんだけど。


 オニキスみたいに、重量を制御する機能を付けたらどうかな?

 仮初めの石像(テンポラリゴーレム)で機能を試せるのなら、本物のゴーレムを造る時も参考になるだろうし……。やってみる価値はありそうだ。



 犬のゴーレムと鳥のゴーレム。

 どっちも全身が灰色なのは、ちょっとシュール?

 なんとなく、見てて寂しい感じがする。ちゃんと色を付けてあげたい。

 ……この世界に、エアブラシは存在しないか?

 筆塗りでも良いけど、粘土に使える塗料が手に入るんだろうか?

 ここは思い切って、白い粘土でエアブラシと塗料を作れば——いや、それは何か違う気がする。本末転倒だな。

 まずは、自分の力でどうにかするべき……。

 筆や塗料が手に入らないか、後でエミリーさんに聞いてみよう。


 いや、待てよ。

 色を塗っちゃうと、粘土を再利用できなくなるか。

 魔力が尽きたら粘土に戻るのに、他に使えなくなったら……。そのまま、置いておけば良いかな?

 工作室は広いし、棚を置けるようなスペースもまだまだ残っている。

 ちゃんと説明すればマイヤーやエミリーさんも、潰して箱にしまえとは言わないだろう。

 ……言わないよね?

 今は椅子とテーブルしかないけど、棚ぐらい自分で作っても良いし、屋敷で働いている人に工作が得意な人が居るかもしれないし。

 これも、エミリーさんに相談して……。


 その前に、魔力が尽きて動かなくなったゴーレムを、もう一度、ゴーレムとして動かすことができるのか、実験が必要だな。

 これが可能なら、何度も同じモデルを作る必要が無くなる。

 完成した塑像を棚に飾っておいて、必要な時だけゴーレムとして働いてもらえば便利……。役に立つ場面を思いつかないけど、きっと便利だろう。

仮初めの石像(テンポラリゴーレム)! ……あれっ?」

 動かなくなっていた土人形に手をかざし、呪文を唱える。

 ……何も起きない? 呪文を間違えたかな?

 魔力が流れた感じがしなかったけど……。


 不思議に思いながら右手の指輪を見ると、なんだか、怒っているような雰囲気が伝わってきた。

 ……これってもしかして、今日はもう、やめておいた方が良いってこと?

 あっ、そうですか……。

 わかりました。これぐらいにしておきます。


 どうやらリンドウは、前に僕が言ったことを覚えていて、魔法を使うのをサポートしてくれているらしい。

 これ以上、魔力を使うと気を失う危険があるので、そうなる前に止めてくれたようだ。

 経験上、粘土に夢中になると他のことを忘れちゃうからなぁ……。危ない目にあう前に止めてくれたのを感謝しないと。

 ……ありがとう、リンドウ。

 心の中で感謝すると、紫水晶の奥で白い点がキラッと光った。


 いまさらだけど、リンドウのモデルになった指輪に填まってた石も、魔石の一種なのかな?

 また、石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんに会う機会があったら聞いてみよう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ