表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第七章 正しいゴーレムの造り方
71/220

7 ガーディアン

「いつまでも立たせたままで申し訳ない。どうぞ皆さん、空いている椅子に座って下され。今、新しいお茶を出させますので」

 僕とマーガレットが自己紹介をしている間に、石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんは立ち直ったらしい。

 コンラウスにお茶を入れ直すように命令して、自分は床に倒れていた椅子を元に直して、椅子へと座り直していた。

 ストーンゴーレムが太い指で、冷めてしまったお茶を器用に下げてくれる。

 ……横に居るマイヤーから、嫌な視線を感じるのは気のせいかな?

 まさかとは思うけど、ゴーレムをライバル視してる?

 オニキスにお茶出しを頼むのは止めておくか……。


「それで……。確かそちらのお嬢さんは、ガーディアンについて詳しく知りたいと言うことでしたな」

 全員が席に着いたタイミングで、老人がユーニスに話しかけた。

「ええ、そうです。この地方を治めている伯爵から、冒険者ギルドを通して依頼を受けて、ガーディアンについて調査しています。本当なら、そこに居るアラベスが適任だったのですが——」

「私には他に大事な用事があったので、ユーニスに任せました」

 こっそりユーニスから睨まれても、アラベスは堂々とした態度を崩してないけど……。大事な用事って、僕の弟子になること?

 ガーディアンの調査の方が大事じゃないかな?

「……念のために、お嬢さん方がソウタ殿とどのような関係なのか、教えていただいても宜しいかな?」

「私は、ソウタ殿の一番弟子です!」

 横に座っていたアラベスがさっと立ち上がり、拳を握りしめて宣言した。

 石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんを紹介してもらったし、言ってることは間違ってないけど……。そこまではっきり言われると、なんだか恥ずかしいです。

「私はアラベスの同僚で、ソウタさんのお供でもあります」

「私は……ソウタ君のファンの一人、かな? 今回はユーニスの付き添いとして来ただけだから、そんなに気にしないで」

 ユーニスの話はともかく、マーガレットの発言が気になるけど……。ここはスルーしておこう。

 マイヤーが何も言わないのは、さっき自己紹介で説明したから、かな?

「なるほど、そういうことですか……。本音で言うと、ガーディアンの話はあまり広めたくないのですが、ソウタ殿の関係者なら問題ないでしょう」

 ローブ姿の老人はガーディアンについて知っていることを、可能な範囲で説明してくれた。


         ☆


 ガーディアンが造られたのは、今から三千年ほど昔。

 今では『魔族大戦』と呼ばれている、最初の大戦が起きる前だった。

 その当時、バラギアン王国を治めていた魔王は有名な石像使い(ゴーレムマスター)で、魔王としての立場を利用して魔法使い(ソーサーラー)を集め、命令で魔力を献上させてガーディアンを造り上げた。


「ガーディアン作成に使われたのはゴーレムを造る魔法ですが、魔王が開発した独自の技術が多く使われていて……。詳しい話は、我々のような一般の石像使い(ゴーレムマスター)には伝わってないのです」

「そうすると、ガーディアンが動き出した理由も……?」

「申し訳ないですが、ワシにもわかりません。ですが、詳しい情報が残されている場所ならば、心当たりがあります」

「それは、どこですか……?」

 ユーニスと老人が話しているのを聞きながら、僕はガーディアンについて考えていた。

 ガーディアンはゴーレムの一種で間違いないだろう。

 ゴーレムを造るには魂が必要になる。つまり、ガーディアンを何体も造るためには、それだけ多くの魂を集める必要がある?

 さっき、魔力を献上させたって言ってたけど、本当は魂を……?

 そんなことが可能なのか、僕にはわからないけど、石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんがガーディアンの話を広めたくないという理由がわかった気がする。


「王都にある城には魔王しか入れない部屋がいくつかあり、その中に、国の歴史をまとめた部屋もあるそうです。そこなら、おそらく……」

「その部屋の話は私も聞いたことがあります。しかし、魔王しか入れない部屋となると、簡単には——」

 老人と話をしていたユーニスが、アラベスの方をチラリと見た。

 ……ユーニスは、アラベスの事情を知ってるんだな。

 何も聞こえてないような顔で、アラベスはお茶を飲んでいるけど……。その話を、ここでするつもりはないってことか。

「……わかりました。今回の調査はディブロンク伯爵からの依頼ですし、魔王に話を通してもらえるよう、伯爵にお願いしてみましょう」

「うむ。それが良いと思いますぞ。それと……ソウタ殿!」

「えっ? 僕ですか?」

 のんびりお茶を飲んでたら、いきなり名前を呼ばれた。

 ガーディアンの話は終わったのでは……?


「ワシはソウタ殿の師匠ではないし、兄弟子でもない。今日、会ったばかりの関係じゃが、石像使い(ゴーレムマスター)の先輩として、お願いしたいことがあるのだが……。聞いてもらえるかな?」

「……何でしょう?」

 ローブ姿の老人が、僕の顔をまっすぐ見つめている。

 アラベスに連れられてこの建物に来て、短い時間で老人のいろいろな表情を目にしたけど、ここまで真剣な表情は初めてだ。

「ゴーレムの力で、誰かを不幸にすることがないように……。ソウタ殿が造ったゴーレムは、困っている人を助けるために使って欲しい。老い先短い老人の願いとして、覚えておいてもらえれば幸いじゃ……」

 深い憂いを秘めた視線を通じて、熱い想いが伝わってくる。

 もう、間違いない。僕の想像は当たっていたようだ。

 ガーディアンは街を守るために造られた存在だけど、ガーディアンを造るために誰かを犠牲にするようなやり方は良くない、と。

 おそらく、ここに居る石像使いのおじいちゃんだけじゃなく、この人の師匠やそのまた師匠も、同じように考えていたのだろう。

「……わかりました。石像使い(ゴーレムマスター)の後輩として、お約束します」

 だったら僕は、僕だけの力でゴーレムを造って、困っている人を助けるために使うことにしよう。

 元々、自分の趣味でいろいろ造ってただけだし、誰かの役に立てるのなら、その方が良いよね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ