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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第七章 正しいゴーレムの造り方
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6 マーガレット

「ソウタ殿。粘土の入った箱はかなり重いですぞ。良ければ、馬車までコンラウスに運ばせましょう」

 どうやら、金額の交渉も無事に終わったようだ。

 ……老人が満面の笑みを浮かべているところを見ると、マイヤーの方がやり込められたのかな?

 マイヤーは完璧なアルカイックスマイルで、うまくいったのか駄目だったのかさっぱりわからないけど。

「僕たちは、下から歩いてきたので……。あっ、でも、大丈夫ですよ。オニキスに運んでもらいますから」

「オニキス、とは……?」

 椅子から立ち上がり、部屋の隅の空いているスペースへと移動しながら、革紐を引っ張って服の下から勾玉を出す。

 貴族向けの訪問着は首回りが窮屈で、こういう時大変だな。

「オニキス!」

 漆黒の勾玉に声をかけると、人間サイズのオニキスが姿を現した。

 マントは邪魔にならないように、ベルトの形に変えて腰に巻いてある。

 手首の革紐に、腰のベルトに……徐々に装備が整ってきたな。


「はっ? はああぁぁぁ……⁉ ソッ、ソウタ殿! 今、何を——」

「これが、僕が最初に造ったゴーレムで、オニキスと言います」

 ちゃんと話を聞いてたんだろう。

 僕の紹介にあわせて、オニキスは右手ですっと敬礼をした。

「ゴーレム……。ゴーレムじゃと⁉ 見た目は確かにアイアンゴーレムじゃが、アイアンゴーレムはもっと大きいはずで……。その前に、このゴーレムはどこから現れたのじゃ?」

 勢いよく老人が立ち上がり、木製の椅子が音を立てて倒れた。

 呆然。驚愕。混乱。疑念。

 深いシワが刻まれた顔が、コロコロと表情を変える。

 ここまで驚かれるのは初めてだと思うけど……。似たようなゴーレムは資料になかったのかな?

「いつもは勾玉になってるんです。もっと小さくなったり、大きくなることもできるんですよ。オニキス、人形サイズになって!」

 僕より少し背が低いぐらいのサイズだったオニキスがすーっと縮み、可愛い人形サイズになった。

「にゃあっ! にゃあにゃあ〜」

 テーブルの上から見守っていたルビィが音もなく飛び降りて、同じぐらいの大きさのオニキスにじゃれついて……。いつもの光景だな。

 仲が良いのは良いことだ。

「マスターの言葉を受けて、姿を変えるゴーレム……? 古い……。本当に古い資料に書かれてはいたが、まさか、この目で見られる日が来るとは……」

 最終的に老人の顔は、目を大きく見開いた状態で固まっていた。

 なるほど。資料で読んだことがあるゴーレムだから、逆に驚いたのか。なんだか悪いことをしたな。


         ☆


「ソウタ殿、お待たせしました」

 別室での話し合いは終わったのかな?

 じゃれあうルビィとオニキスを眺めていると、アラベスがユーニスとマーガレットを引き連れて部屋に戻ってきた。

「……何かあったのでしょうか?」

「それが……。オニキスを見て、びっくりしたみたいで……」

「ああぁぁー……わかります。ゴーレムに詳しい人間ほど、オニキスさんを見たらびっくりするでしょうね」

 オニキスが人形サイズに変身して三分ぐらい経ったけど、ローブ姿の老人は固まったままだ。

 ずっと、小さな声で何かをつぶやいているようだから、そんなに心配する必要もないと思うけど——

「変身……魂……。これほどのゴーレムを造るためには、どれだけ魂を捧げれば良いのか……。適正なサイズはどうなる……? あの本に書かれたことは、全て真実なのか? だとしたら、ゴーレムとマスターの関係は……」

 つぶやきの内容も気になるけど、声をかけられる雰囲気じゃないし、時間がある時にでもゆっくり話を聞けば良いかな。



「ねぇ、アラベス。もう、抱きついたりしないから、ソウタ君をちゃんと紹介してもらえない?」

「そうですね。では、ソウタ殿……。こちらはマーガレット様。私やユーニスが昔からお世話になっている、冒険者ギルドの先輩です」

 アラベスの後ろに立っていたエルフの女性がすっと前に出て、軽く握った左手を僕の前に出した。

 長くて尖った耳。灰色の瞳。

 首の後ろで簡単にまとめてある、長い金色の髪。

 こうして落ち着いた表情を見ると、かなりの美人さんだ。

 相変わらず、女性の年齢はよくわからないけど……。少しだけ、ユーニスより年上な感じ?

 同じ金髪でもユーニスの髪は白っぽくて、マーガレットの髪はうっすらオレンジ色が入ってるのか。

「はじめまして、ソウタ君。私の名前はマーガレット。ギルドに所属している冒険者で、種族はエルフ。職業は——私の職業って、何だったかしら?」

狩人(レンジャー)です。マーガレット様」

 確か、アラベスとユーニスの二人は、冒険者として最高のダイヤモンドランクだったはず。

 その二人の先輩ともなると、自己紹介することも滅多にないのかな?

 それなら、自分の職業をアラベスに聞くのも納得できる。

 服装は冒険者っぽいけど、剣も弓も持ってないのは——あれっ?

 マーガレットが差し出した左手の甲に、長方形の板が浮かんでるけど……微妙に色が違う?

 前にアラベスやユーニスに見せてもらった認識票は、ダイヤモンドランクの名称が示すとおり、透明でキラキラ輝いたような……?


「ソウタ殿には隠せませんね……。マーガレット様は冒険者ギルドに所属していますが、それは名目だけで。実際には、各ギルド支部のギルドマスターにも命令を出せる立場なのです」

「私たちは、誰よりも自由な存在……。独立冒険者と呼んでいます」

 不思議に思ったのが、顔に出ちゃったのかな?

 マーガレットについて、アラベスとユーニスが詳しく説明してくれた。

「やっちゃいけないことばかりで、全然自由じゃないんですけど……。あっ、ソウタ君は細かいことは気にしなくて良いから。私のことは気軽に、マーガレットって呼んでね」

「あっ、はい。えーっと……。僕の名前は天城(あまぎ)創多(そうた)です。よろしくお願いします」

 首に掛けていた金色の認識票を引っ張り出して、マーガレットに見せる。

 その後、軽く握手をして、自己紹介が終わった。

 マーガレットと話をしていると、ある人物を思い出すんだけど……。身長も体格も顔も、髪の色や長さも違うんだけど、雰囲気がどことなく似てる。

 いや、でも……。まさか、そんなハズはないよね?


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