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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第七章 正しいゴーレムの造り方
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4 正しいゴーレムの造り方(後編)

 ピクリとも動かない土人形を、じっと見つめる。

 やっぱり、綺麗なお姉さんにもらった粘土じゃないと、僕はゴーレムを造れないのかな……?

 どこまでも沈んでいきそうな雰囲気に浸っていると、右手の中指に填めている指輪が目に入った。

 紫水晶の奥で白い点が光ってるけど、なんだか元気がない感じ。

 ……もしかして、リンドウが呪文を唱えようとしてくれたの?

 なるほど、そういうことか。

 それじゃあ、今度は僕が試してみるから……。リンドウはサポートに回ってくれる? 自分で魔法を使うのはこれが初めてだから、うまくいくかどうかわからないし、頼んだよ。

 心の中で呼びかけると、いつもより暗くなっていた点が、ふわっと明るく輝いた。


「すみません。もう一回、試させてください」

「んっ? もちろん、何度試してもかまわないですが……」

 ローブ姿の老人に声をかけて、目の前の土人形に集中する。

 ユーニスに魔法を教えてもらった時、頭の中にあるイメージを現実にするのが魔法だって言ってたっけ。

 だから、この土人形が動くところを想像して——

仮初めの石像(テンポラリゴーレム)!」

 身体の奥の方から、何かが引き出される感覚。

 今、魔力が流れた? これが魔法を使うってこと?

「あっ、動いた!」

「おおぉぉぉ……」

 土人形がすっと右手を挙げて、敬礼してくれた。

 造ったばかりのオニキスと同じ反応で、なんだか楽しくなってくる。

 オニキスやリンドウを知っているマイヤーも、びっくりしたようだ。

 何故かルビィがドヤ顔してるけど、それはどういう意味かな?


「ちょっと、テーブルの上を歩いてみて。右手を上げて……下げて……。ジャンプはできる? うんうん。良い感じ」

 土人形に呼びかけて、軽く動きを確かめてみる。

 どうやら、問題なさそうだ。

「これは見事ですな……。ソウタ殿を、石像使い(ゴーレムマスター)と認めましょう」

「ありがとうございます」

「ワシ以外の石像使い(ゴーレムマスター)に会うなんて、何年ぶりか……。それはともかく、石像使い(ゴーレムマスター)同士なら何の問題もありません。どんな質問にも答えましょう」

 話をしている僕たちの横で、ルビィが土人形をペシッと叩いた。

 これがオニキスだったら何らかのリアクションをして、そこからルビィとじゃれあう流れだけど……。

 この土人形は何もしない? 僕の命令を待ってるのかな?

 反応がなくて、ルビィの方が戸惑っているようだ。


「早速ですけど……。この粘土だとゴーレムが造れたのに、僕が見つけた粘土だとうまくいかなかったのは、どうしてなんでしょう?」

「それは、ゴーレムを造るのに向いている素材と、そうでない素材があると言うことですな。その箱に入っているのは裏の鉱山から掘り出した粘土で、魔力を通しやすい性質を持っております」

「なるほど。そういうことなんですね」

「土、石、鉄、木、水、炎など……。石像使い(ゴーレムマスター)として成長すれば、どんな素材からでもゴーレムを造れるようになるでしょう。逆に言うとそれまでは、扱いやすい素材で練習するのが良いと思いますぞ」

 初心者の僕がオニキスやリンドウを造れたのは、それだけ、あの白い粘土が扱いやすい素材だったってことか。

 綺麗なお姉さん、ありがとう!

「もう一つ、素材以上に大事な話があるのじゃが……。申し訳ないですが、そちらのお嬢さんは席を外してもらえませんか?」

「私はソウタ様の護衛ですので、お側を離れることはできません」

 土人形が動くのを見て喜んでいたおじいちゃんが、いつの間にか、真剣な表情に変わってる。

 ここまででも、ゴーレムの本質に関わる話をしてると思うけど、もっと大事な話があるのか……。

「マイヤーは、あっちのドアの前で見張っててもらえる? それなら、問題ないでしょう?」

「……わかりました。ソウタ様がそう言うのでしたら……」

 今座っている場所からは離れたところにある、僕たちが入ってきた方のドアを指差すと、マイヤーは素直に立ち上がり、ゆっくり歩いて行った。



「これで良いですか?」

「はい……。それと、これからお話しすることは、本物の石像使い(ゴーレムマスター)以外には秘密にするように、お願いします」

「本物の……?」

「その話も、これから説明します」

 老人の方へと向き直り、話の続きを待つ。

 白い髭。灰色の瞳。伸ばしっぱなしになっている白い髪。

 深いシワが刻まれた顔に、喜んでいるような悲しんでいるような、不思議な雰囲気が漂っている。

「念のためにお聞きしますが……。ソウタ殿は、さっきワシが言ったのとは別の呪文をご存じですな? ゴーレムを作る魔法として」

「あっ、はい。前にゴーレムを造った時は、石像創造(クリエイトゴーレム)って唱えました」

「うんうん……。当然、そうでしょう。先ほどワシが教えたのは、言わば練習用の呪文。今、ソウタ殿が口にした呪文を使えるのが、本物の石像使い(ゴーレムマスター)です」


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