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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第七章 正しいゴーレムの造り方
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1 鉱山跡へ

 ディブロンク伯爵の屋敷を出発した日。

 街道沿いの宿場町で昼食をとった僕たちは、ここで、借りていた馬車に帰ってもらい、ここから先はトパーズに乗って移動することにした。


 ご飯を食べながら聞いた話だけど、貴族の家を訪問する時は服装や装飾品だけでなく、馬車にもある程度の格が必要になるらしい。

 そういう理由で高い馬車を借りたから、ベレス村からイムルシアの首都へ行く時に乗った馬車より、見た目が凝ってて揺れも少なかったのか。

 どれぐらい値段に差があるのか、怖くて聞けなかったけど……。詳しい話は家に帰ってからで良いかな。


 あまり目立たないよう、街道から離れた場所をトパーズに飛んでもらう。

 この辺りは地形的にも植生的にも、前にガーディアンを見に行った城塞都市の近くと似ているようで、深い森が眼下に広がっていた。

 広いトパーズの背中で、左にはアラベス、右にはマイヤーが座っていて、僕は真ん中でルビィを抱っこしている。

 何度もトパーズで移動している間に、この並びで座るのが当たり前のようになってるけど……。よく考えると、これって両手に花?

 美人の女性二人に挟まれるって、これだけで異世界に来た価値があるかも。

 アラベスは魔法戦士だし、マイヤーはボディーガードだし、二人とも僕より強そうなのは置いておくとして。



「ソウタ殿。あれが、旧ディブロンクの街です」

 トパーズに乗って一時間も経たぬうちに、前方に街が見えてきた。

 高い壁が二重になっていて、内側の壁の中に立派な城や貴族が住むような屋敷が建ち並んでいる。

 内側と外側の壁の間は区画ごとに用途が分かれているようで、アパートのような建物が並んでいる場所や、商業施設のような建物が集まっている場所が、大きな通りで綺麗に分かれている。

 街の作りは全体的に、前に行ったデノヴァルダルの街と似てるけど、こっちの方がずっと規模が大きいな。

「綺麗な街に見えるけど……。人が増えすぎて問題になって、新しい街を作ったのかな?」

「詳しい事情まではわかりませんが、おそらくそうでしょう」

 城壁に囲まれた部分だけでもかなり広いけど、その外まで、建物がずらりと並んでいる。

 ……壁の外の建物だけで、ちょっとした町ぐらいの規模があるのでは?


 よく見ると、城壁には馬車が二台並んで通れそうなほど大きな門があり、その門を守る位置に、背の高い石像が立っていた。

 デノヴァルダルの街を守っていたのと同じ、ガーディアンのようだ。

「ここでガーディアンが暴れ出したら、デノヴァルダルの時より酷いことになりそうですね……」

「対策を練っているそうですし……。伯爵の対応に期待しましょう」

 一ヶ月ほど前に見た光景が、勝手に脳内で蘇る。

 門の前に立っているガーディアンと、瓦礫と化したいくつもの建物。

 城壁の外に建っている建物の数はどう見ても、この街の方がデノヴァルダルの街より多い。

 ぱっと見ただけでも、城壁には大きな門が三つあって、それぞれにガーディアンが二体居て……。同時に暴れ出したら、大変なことになりそうだ。

 ……ガーディアンは何をきっかけに動き出すんだろう?

 急に動き出すんじゃないか心配だけど、そこは、僕が対応できる範囲を超えてるよなぁ……。エメリックさんやディブロンク伯爵に任せよう。

「ソウタ殿。街に近づきすぎる前に進路を変えて、北東に見える山に向けて飛ぶようにトパーズさんに伝えてもらえますか?」

「はい、わかりました」


         ☆


「この辺りのハズですが……」

「鉱山の跡地ですよね? それらしい建物は……。うーん……」

 まずは、旧ディブロンクの街を目指して移動。そこからさらに北東へと進んだ先にある小さな街に、石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんが住んでいる。

 行き先について、家を出る前に聞いた時はそうなってたんだけど、途中で事情が変わったらしい。

 用事ができて、街の近くにある鉱山の跡地に出かけてるから、そこまで来て欲しいって、アラベスの通信水晶に石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんから連絡が入ったそうだ。

 鉱山跡への行き方も、ちゃんと説明があったそうだけど……。僕たちは上空で迷子になっていた。

 山奥にある小さな街を見つけたところまでは順調だったんだけど、そこから先がわからない。

 ……素直にトパーズを降りて、道を歩いた方が早かったかな?

 深い森。切り立った崖。眼下には似たような風景が広がっている。

 アラベスの話によるとこの辺りの山は、前に妖魔の森からデノヴァルダルの街へ行く時に越えた山脈に繋がっているらしい。


「ピーゥピーゥ!」

「あっ、あれかな?」

 目的の鉱山跡を見つけてくれたのは、トパーズだった。

 険しい山の中腹。峰と峰の間で少しだけ平らになっている場所に、歴史を感じさせる建物が……全部で十軒ぐらいかな? 密集して建っている。

「そうですね。あそこで間違いないと思います」

 同じタイミングで、アラベスも気が付いたようだ。

 トパーズの眼を借りて観察すると、建物の間で馬が休んでいるのが見えた。

 奥にある低い建物は馬屋かな? 人が居るのは間違いないだろう。

 よく見ると、並んでいる建物の外れから細い道が延びていて、急な斜面をうねうねと這うように下っている。

 ……日光のいろは坂に良く似てるけど、この道を使って掘り出した鉱石を運んだのかな?


「伯爵の屋敷を出発する前に通信水晶で連絡しておいたので、こちらの到着を待ってくれているはずです」

「ありがとうございます。それは良いんですが……。トパーズの降りられる場所があるかなぁ」

「あっ……」

 トパーズなら、建物の前の狭い場所でも降りられそうだけど、いきなり巨大な鳥が降りてくるのを見たらびっくりするよね?

 下っていく道の周りには、空き地らしい場所は見当たらない。

 さて、どうしよう……?


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