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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第五章 バラギアン王国 城塞都市解放戦
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9 ガーディアン討伐(後編)

 投げつけたブロックが爆発したのは、何かスイッチでもあったのかな? 身体の一部を爆弾に変える魔法とか?

 それはともかく、怪我の功名という訳じゃないけれど、ガーディアンを派手に壊しても爆発したりしないことが判明した。

 そうとわかれば、戦い方に気を使う必要もない訳で……。

 残ったガーディアンを相手にするのは、戦闘と言うより作業と言う方がふさわしいような内容だった。


 穴を登ってきたガーディアンの頭を、オニキスが殴って破壊する。

 東門の前から遅れてやってきたガーディアンも、同じように破壊する。

 ロープでぐるぐる巻きにして動けなくしてあるガーディアンは、どうするべきなのか少し悩んだけど……。

 目は赤く光ってるし、腕や脚を動かしてロープを(ほど)こうとしてるし、ロープを置いていく訳にも行かないし、思い切って破壊してもらった。

 古いゴーレムを壊すのは心が痛むけど……。何千年も動かなかったそうだし、居なくなっても問題ないだろう。たぶん。

 大量に残ったガーディアンの残骸は……。目の前に大きな穴があるし、全部放り込んじゃう? 何かに使えるかもしれないし、このままにしておいた方が良いかな?


 どうでも良いようなことで悩んでいると、騎士たちが集合している場所からアラベスとマイヤーが戻ってきた。

「ソウタ殿。ガーディアン討伐、お見事でした」

「見ててびっくりしました。ソウタ様は本当にすごいですね……」

 マイヤーの口調が、微妙に砕けた感じになってる?

 様付けで呼ばれるのは苦手だし、これをきっかけに、もっと気楽に話してくれるようになると嬉しいんだけど。

「ガーディアンはもう、どれも動かないと思います。それで……怪我人はどうなりましたか? その、亡くなった人とかは——」

「爆発に巻き込まれた騎士たちは、全員回復しました。私とマイヤーも少し手伝いましたが、激しい争いになることを予想して、回復魔法が得意な者も連れてきていたようです」

「倒れていた馬も……?」

「はい。もう、みんな元気になってますよ」

 僕の疑問にアラベスが答えてくれた。

 かなり激しい爆発だったけど、もう全員が回復してるって……。やっぱり、魔法って便利だな。


「それでですね。ソウタ殿の活躍を見た伯爵が、直接話を聞きたいと言ってるのですが……。一緒に来ていただいても宜しいでしょうか?」

「それは……。さすがに断れないよね?」

「もちろん、ソウタ殿の意向を優先しますが……。できれば、この場で話をまとめていただいた方が、あとの処理もスムーズになると思われます」

 オニキスやルビィの説明をするのも面倒だし、本音を言うと、このままトパーズに乗って帰りたいところだけど……。僕のことなんて冒険者ギルドで調べたらすぐにわかるだろうし、アラベスと伯爵は面識があるみたいだし、あとで何か言われるぐらいなら、ここで終わらせておいた方が気が楽かな?

「わかったよ。それじゃあ……僕の希望を言うから、細かい内容はアラベスがまとめてもらえる?」

「了解しました」

 頭を撫でていたルビィを猫の姿に戻し、オニキスも勾玉に戻ってもらう。

 騎士たちが集まっている場所に向けてゆっくり歩きながら、今後の方針をアラベスやマイヤーと相談した。


 偉い人と話をするのは苦手なので、面談は手短に終わらせて欲しいこと。

 あまり目立ちたくないので、ルビィやオニキスの話を含めて、良い感じにごまかして欲しいこと。

 あとで調べてみたいので、ガーディアンの欠片を分けて欲しいこと。

 オニキスの活躍を見て、気が大きくなってたのかな? いつもの自分だったら考えられないぐらい正直に、希望を伝えてみた。


 アラベスの話によると、特にオニキスの活躍が衝撃的だったので、完全にごまかすのは難しいらしい。

 ガーディアンを一撃で粉砕したのはやり過ぎだったか……。

 伯爵が納得できるように、ある程度情報を出した方が良いと言われて、どこまで話をするか、歩きながら打ち合わせしておいた。


         ☆


「ディブロンク伯爵。こちらが、鉄の巨人を操っていたソウタ殿です。一ヶ月ほど前にこちらの世界に来た異世界人で、現在は英雄の元で保護されています」

「はじめまして。天城(あまぎ)創多(そうた)です」

「なるほど。そういうことだったのか……」

 打ち合わせの結果、僕が異世界人だということと伝説の英雄の世話になっていることを、正直に伝えておくことになった。

 この説明で、普通では考えられないような出来事でも、納得してくれる可能性が高くなるらしい。

 ……マイヤーも賛成してくれたし、これが正解なんだろう。

「ソウタ殿。こちらが、バラギアン王国の北東地方を治めているディブロンク伯爵です。今回はガーディアン討伐のため、部隊を率いて来られました」

「私どもの兵だけでは、多数の犠牲者が出ていたことでしょう。ソウタ殿に助けられました」

 差し出された伯爵の手を取り、素直に握手する。

 大きな手の平。太くてゴツゴツした指。

 毎日のように剣を振っているとこんな手になるんだろうか?

 握られた手がちょっと痛いぐらいで済んでるのは、ちゃんと手加減してくれてるんだと思う。


「英雄の活躍で戦争が終わり、八百年近く大きな争いが起きていません。平和が続くのは良いことですが……。あの程度の爆発で動けなくなるとは、騎士たちの鍛え方が足りなかったようです」

「あの爆発を耐えるのは、普通の人間には無理では——」

「今回は英雄のお導きでソウタ殿に助けてもらいましたが、本来なら、我々の手で国を守らなければならないのです。二度とこのようなことがないよう、しっかり鍛え直しておきますので、英雄にはそのようにお伝え下さい」

「あっ、はい。わかりました……」

 えーっと……。

 伯爵の解釈だと、マルーンに言われて僕が助けに来たことになってる?

 実際には、アラベスに頼まれて送ってきて、我慢できなくなって手を出しちゃったんだけど……。納得してくれてるのなら、これで良いのかな。


 伯爵の後ろには護衛らしい騎士が立っていて、今はヘルメットを外していて顔が見えるんだけど……。なんだか困ってる? 微妙に引きつってる?

 鍛え直すと言われて、イヤな予感がしてるのかな?

 いや、でも。ガーディアンにボコボコにされるのに比べれば、厳しい訓練の方がマシだよね? がんばって下さい。


「ディブロンク伯爵。ゴーレムについて研究するため、ソウタ殿はガーディアンの欠片を希望しています。いくつか、持ち帰っても宜しいでしょうか?」

「どうぞどうぞ、好きなだけ持っていって下さい。兵を助けていただいたのですから、他にもお礼をしたいのですが……。何か希望はありませんか?」

「えっ? お礼ですか……?」

 この展開は予想してなかった。

 何も思いつかないので、ここはアラベスに任せて——

「今回は取るものも取りあえず駆けつけたため、滞在する準備もまともにできておらず、すぐにでも帰る予定となっています。しかし、近い将来、ソウタ殿がこの地をゆっくり訪れる機会もあるでしょう。伯爵にはその時に、便宜を図っていただければ……」

 ちゃんと意図が伝わったようだ。

 横に居るアラベスを見ると、僕に代わって良い感じに答えてくれた。

「わかりました。では、その際には是非、私の城にお泊まり下さい」

「あっ、はい。その時はよろしくお願いします」



 後片付けで忙しいのかな? 伯爵との面談はあっさり終わった。

 会う前は、偉くて怖い人を勝手に想像してたんだけど……。実際に話をしてみると、気の良いおじさんって感じ?

 身体を鍛えるのが好きで、前線に立ちたがる武将タイプみたいだ。


「ソウタ殿、このあとはどうしますか?」

「んー……。お腹が空いたし、まずはご飯が食べたいかな。その後は、どこかでお土産を買って、マルーンの城に帰ろうか」


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