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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第五章 バラギアン王国 城塞都市解放戦
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8 ガーディアン討伐(中編)

 速い! 速い! 速い‼

 地面が近いから余計に速く感じるのか……。ブレーキの壊れた自転車で、急な坂道を下りているような感覚。

 あっという間にルビィは、ガーディアンの近くに到着していた。

「オニキス! 頼んだよ」

 首に掛けていた革紐を引っ張って、漆黒の勾玉を外に出す。

 そのまま僕は勾玉を、ガーディアンめがけて投げつけた。

 辺りの景色がぐにゃりと歪み、鉄の巨人が姿を現す。

 ガーディアンも大きいと思ったけど、やっぱりオニキスの方が大きいな。

 比べてみると、大人と子どもぐらいサイズに違いがある。


 オニキスがぐっと拳を握りしめ、ガーディアンに殴りかかる。

 鉄の拳がガーディアンの顔面にヒットした瞬間、鈍い音が空気を震わせ、幾筋もの火花が飛び散った。

 サイズはオニキスの方が大きいのに、動きも軽やかで……。あれ? これは、思ってたより楽勝かな?

 いや、ここで気を抜いちゃダメだ。さっきのブロックが爆発した攻撃はびっくりしたし、最後まで油断しないようにしないと……。



 太い腕。太い脚。がっしりした身体。

 昨日、上空からガーディアンを観察して、動きは遅いけど力のあるタイプのゴーレムだと予想して、宿でいくつか対策を立てておいた。

 これがゲームだったら動きが遅いタイプの敵は、離れたところから攻撃してダメージを積み重ねて、安全に倒すのがセオリーだけど……。

 街を守るために造られたゴーレムに、そんな戦法は通じないだろう。

 攻める方はどこか一カ所でも突破すれば成功なのに、守る方は一カ所でも突破されたら負けてしまう。だからこそ、ガーディアンは穴が無いように造られているはず。

 最大の問題は、ガーディアンが四体も居ることだけど、逆に言うとそこさえどうにかすれば……。


「オニキス! 身動きがとれないように、ぐるぐる巻きにするんだ!」

 オニキスの両腕から勢いよくロープが伸びて、何発も殴られてボコボコになっているガーディアンへと絡みつく。

 太い脚も長い腕も、一ミリも動けないぐらいキツく縛られた状態で、ガーディアンが仰向けに倒れ込み、勢いよく土埃が舞い上がる。

 オニキスから離れてもロープは思った通りに動くようで、根本の近くで自然に切れてもガーディアンを拘束したままだった。

 これでもう、このガーディアンは何もできないはず……。

 まさか、自爆装置なんて無いよね? 無いと信じよう。

「ピーゥ! ピーゥピーゥ!」

 ほっと一息ついた瞬間、上空から大鷲の呼ぶ声が聞こえてきた。

 トパーズの目を借りて確かめると、南東の門を守っていたガーディアンがこっちに向かっているようだ。

 ……全部で四体も居るんだから、助けに来るのは予想できるよね。でも、あんなに足が遅いのなら問題ないだろう。

 どちらかというと、ガーディアンを誘導してた騎士の人たちが、オニキスを見て思いっきり引いてるのがあとで問題になりそうだけど……。そこはアラベスに何とかしてもらうということで。


「オニキス。戻れ!」

 命令するのと同時に、鉄の巨人に向けて手を伸ばす。

 わざわざ口に出して言わなくても、ルビィがオニキスに向けて走り出す。

 巨人の立っていた空間がぐにゃりと歪み、次の瞬間、漆黒の勾玉が僕の手の平にのっていた。

「次は、穴に落ちた方のガーディアンを動けなくするよ」

「みゃあっ!」


         ☆


 しなやかな動きで草原を駆け抜け、石畳の敷かれた街道を一瞬で横切り、僕を乗せたルビィが魔法で掘られた大穴の近くに到着した。

 一瞬で燃え尽きたのかな? ブロックが爆発した地点を中心に、地面に生えていた草が広い範囲にわたって炭になっている。

 しかし、これは……。えげつない攻撃だな。

 ユーニスが見せてくれたファイアーボールと比べても、こっちの方が威力があるみたいだ。爆発に巻き込まれた騎士や馬たちが心配になったけど、近くにそれらしい人影は見当たらない。

 アラベスとマイヤーが説得してくれたのかな?

 どうやら、怪我を負った人や馬を連れて、騎士たちは全員が幌馬車を止めてある場所まで下がったようだ。犠牲者が出てなければ良いけど……。


 感傷に浸っている暇も無く、足元から細かい振動が伝わってくる。

 たぶん、穴に落とされたガーディアンが、何とかして地面に上がろうとしているのだろう。

 そうなる前に、トドメを——

「ピーゥ‼ ピーゥピーゥピーゥ!」

 上空から届いたトパーズの声は、これまでに聞いたことが無いほど危険そうな響きを含んでいた。

 反射的にまぶたを閉じて、トパーズが見ている景色を確かめる。

 こっちに向かっていたガーディアンが、足を止めている?

 まだ、百メートルぐらい離れてると思うけど……。あの姿勢は何をしてるんだろう? 膝を深く曲げて、力を溜めてる……?

 野生の本能で感じるのかな?

 ルビィからもトパーズからも、イヤな予感がガンガン伝わってくる。

 青白く光っていたガーディアンの目が、燃えたぎるマグマのような赤色に変わった。


「オニキス! 攻撃に備えるんだ‼」

 握っていた勾玉を放り投げると、鉄の巨人が再び姿を現した。

 同時に、しゃがみ込んでいたガーディアンが勢いよく飛び上がる。

 なるほどね……。重量を軽減する機能をゴーレムに付けたのは、僕が最初じゃ無かったのか。まぁ、それはそうだよね。

 石で造ったゴーレムは、重くて動きが遅くなるのが最大の欠点だろうし、そこを魔法でどうにかしようと思うのは普通だよね。


 僕たちが居る場所を正確に狙って飛んでくるガーディアンを見上げながら、何故か僕は冷静になっていた。

 ……もっとひどい攻撃を予想してたから、それほどでも無い攻撃で安心したのは秘密にしておこう。

「任せたよ、オニキス!」

 あれ? 冷静になったのは僕だけで、ルビィもトパーズも怒ってる?

 オニキスまで? 握りしめた拳に、ものすごく力が入ってるような気がするんですけど……。


 腕をクロスさせてガードを固めたガーディアンが、僕とルビィが居る場所をめがけて飛び込んでくる。

 タイミングを合わせてオニキスが、右の拳を突き上げる。

 石造りの腕をへし折り、身体をあっさり貫いて、オニキスは一撃で、ガーディアンを粉砕した。

「うわっ! うわっ! ちょっと、ルビィ。避けて‼」

 大きな瓦礫が降ってきてびっくりしたけど、どうやらリンドウがシールドの魔法を使ってくれたようだ。

 僕を中心に半径二メートルほどの見えない壁が張られていて、砂埃や小さな石まで綺麗に弾かれていた。


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