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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第五章 バラギアン王国 城塞都市解放戦
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5 城塞都市へ

 冒険者ギルドからアラベスの元に、最新の情報が入った。

 ガーディアンを討伐するために城塞都市の領主が兵を集めていたが、途中で方針が変わって、その地方を治めている伯爵が指揮を執ることになったらしい。

 そのため、討伐部隊が動くのは早くても二日後になるそうだ。

 情報を受けて相談した結果、今日は装備を調えてぐっすり寝て、明日の朝早くにマルーンの城を出発することになった。


 方針が決まったところで、アラベスはマルーンに状況を報告しに行ったが、マルーンが自分も行くと言い出して大変だったらしい。

 パーカーにも助けてもらって、なんとか城に残るように説得したそうだ。


 その間、僕はユーニスに時間を調べる魔法を教えてもらった。

 あまり使うことはないけど、日付や時間を調べる魔法が存在するらしい。

 時間を調べる魔法を自分なりに応用してみたけど、アラームを設定したり、ストップウォッチとして使うこともできた。

 頭の中だけで音を鳴らして、静かに起こしてもらうのも可能って……。これは魔法の力と言うより、リンドウがやってくれてるのかな? 便利だね!



 翌朝。熱いシャワーを浴びて、美味しい朝ご飯を食べて、いつもの服装に着替えて、忘れ物がないか確認する。

 ちょうど出発の準備が整ったタイミングで、ユーニスとアラベスが僕の部屋に来たけど、一緒に入ってきたマイヤーは何故かメイド服ではなく、冒険者っぽい服装だった。

「ソウタさん。申し訳ないのですが、私は……その……。用事があるので城に残ることになりました」

「身の安全を守るため、ユーニス様に代わって私がお供します。ソウタ様、よろしくお願いします」

 申し訳なさそうな表情を浮かべているユーニスと、気合いの入った表情のマイヤーが順番に声をかけてくる。

 後ろに立っているアラベスは、言いたいことを我慢しているような笑顔を浮かべているけど、これってもしかして……。

「えっと……。マイヤーさんは、高いところは大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫です。私は自分で飛べますから」

 そう言えば、飛ぶところを見せてもらったっけ。

 それなら、高所恐怖症の心配はしなくても——

「ソウタさん? 私だって、飛行の呪文を使えば空ぐらい飛べますよ? それでも、苦手なものは苦手なだけで」

「そこで苦手を認めるのなら、無理に言い訳する必要もないだろうに……」

 予想通りユーニスは、トパーズに乗って飛ぶのがイヤで、城に残ることにしたようだ。

 無理に押しつけるのも悪いし、こればっかりは仕方がないよね。

「それじゃあ、僕とアラベスさんとマイヤーさんの三人を運んでもらうってことで……。頼んだよ、トパーズ」

「ピーゥ! ピーゥ!」


         ☆


 大きな翼を広げて空を飛ぶトパーズの背中。

 上空から見る景色は素晴らしく、頬に当たる風は心地良い。

 風を強く感じないのは、トパーズが魔法で守ってくれているようだ。

 妖魔の森のゲートからマルーンの城まで運んでもらったときより、スピードが出てる気がするけど……。本人はご機嫌のようだし、問題ないだろう。


 妖しい森を抜けた先は、遊牧民が住んでそうな草原だった。

 アラベスの話では、この辺りはケンタウロスの国になっているらしい。

 空の旅を気に入ってくれたのかな? マイヤーも興味深そうに、地上の景色を眺めている。

 そのまま南西に向けて飛び続け、トパーズは険しい山脈をあっさり越えた。


 杉や檜がびっしり生えた森。大きな湖。流れの速い川。

 山を一つ越えただけで、風景が一変する。

 そこはもう、バラギアン王国だった。

 ……国境を越えたのに入国審査をしなくて良いのか心配になったけど、ダイヤモンドランクの冒険者と一緒ならどうにでもなるらしい。

 それはそれで問題があるような気もするけど、そういうものなんだと納得しておいた。


 アラベスは事前に経路をチェックしていたようで、目印となる地形や街を見つけては、進路を修正するようにアドバイスしてくれる。

 落差の大きい滝や、川沿いの綺麗な街。

 気になるところを眺めながらトパーズに指示を伝えていると、あっという間に目的地の近くに着いていた。

「あれです! あの、正面に見えてきた街が、デノヴァルダルです」

 深い森を抜けた先に、城塞都市が見えてきた。

 何基もの塔を備えた大きな城と、二重になっている高い壁。

 貴族の住む場所と平民の住む場所で分けられているのかな?

 内側の城壁は城とその周りに建て並ぶ立派な屋敷を取り囲み、内側の城壁と外側の城壁の間に雑多な雰囲気の建物が所狭しと並んでいる。


「あの、門のところに立っている石像がガーディアンですか? 思ってたより大きいなぁ……」

「そうです。ガーディアンが行く手を阻むので、古くからある門が使えなくなってるそうですが……」

 街全体を囲んだ城壁の東側に門があり、その前に、城壁よりも背の高い石像が立っていた。

 こっそりトパーズの眼を借りて、ガーディアンを観察する。

 大きなレンガ……。いや、四角く切り出した石で作ってあるのかな?

 高さは十メートルぐらいか。短い脚も長い腕も太くて頑丈そうで、動いたらそれだけで怖そうだ。


「ソウタ殿。街に入る前に様子を確認したいので、少し離れたところで周りをぐるっと回ってもらえますか?」

「わかりました。トパーズ、頼んだよ」

「ピーゥ!」

 広げた翼をゆっくり傾けて、トパーズが南へと向きを変える。

 ただでさえ、ガーディアンが動き出して大変なことになってる街が、人が乗っている大鷲なんて見つかったらもっと大変なことになるかもしれないし、あまり近づかないのが無難だろう。


 南東の門の前にも東の門と同じような石像が立っていたが、ここまでは、それほど気になるところはなかった。

 しかし、トパーズが進むにつれて、高い城壁に隠されていた街の南側が見えてきて、穏やかな印象が一変した。

「あれって……。もしかして、ガーディアンが暴れたところですか?」

「おそらく、そうかと……」

 城塞都市に入れなかった人が勝手に住み着いたのかな?

 街の南に何軒もの家が建っていたようだけど、そのほとんどが壊されて、瓦礫と化していた。

「これはひどいですね……」

「今から一週間ほど前。朝早くに突然ガーディアンが動き出して、家々を破壊して回ったそうです。こちらから攻撃を仕掛けなければ、人間が狙われることはなかったそうですが……。それでも、怪我人が多数出たと聞いてます」

 城壁の南にある門が街の正式な出入り口になるようで、他の門よりもサイズが大きく、左右に二体の石像が立っている。

 門の外は平原になっていて、広い街道が南へと続いていた。


「今は街から出られない状態なんですか?」

「いえ。最近になって作られた西側の門と、北にある小さい門にはガーディアンが居ないので、そこから出入りしているようです」

 トパーズがゆっくり飛び続け、街の西側が見えてきた。

 街の南西から北に向けて流れの速い川が流れていて、石造りの立派な橋が架かっている。城壁の西にある門から出て行く道は、その橋を通って、さらに西へと続いていた。


 なるほど……。昔はあの橋も、西側の門も無かったんだな。

 その場合、街の西に川があって、北から東は山に囲まれていて、大軍が攻めてくるとしたら南だけなのか。

 南側の平原は、街道を少し進んだところから畑になってるようだけど——

 いや、まてよ。魔族の戦争って、僕が知ってる戦争と同じなのかな?

 日本の戦国時代のような戦いをイメージしてたけど、身体が頑丈で魔法が使えるのなら、もっと違った形になるんじゃ……?

「街の中に居る人も、あまり元気がないようですね」

「そうだな……。昼が近い時間だというのに、出歩く人も少ないようだ」

 僕が考え事をしている間、マイヤーとアラベスは城壁の中に居る人たちを観察していたようだ。

 ……かなり離れたところを飛んでるけど、この距離で、元気があるかどうかまでわかるの? トパーズと同じぐらい、この二人も視力が良いのかな? 機会があったら聞いてみよう。

「結局、途中の休憩もなしで、思ってたより早く着いたけど……。このあとはどうしますか? アラベスさん」

「このまま街の北に回って、森の中に降りてもらえますか? 北の門で待っててくれるよう、ギルドの人間を手配してあります」

「わかりました」


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