表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/220

3 トパーズの活躍(前編)

 トパーズの暴走についてユーニスに相談した結果、村はずれの空き地で到着を待つことになった。

 その間、戻ってきたアラベスに、いろいろな話を聞かせてもらった。

 この村はゲートを安全に使えるようにするために、複数のギルドが協力して建設している途中だということ。ここ数年、妖魔の森でも南の方は勢力争いが落ち着いて、それほど強くない魔物しか居なくなっていること。逆に北の方は、凶悪な魔物が集まりつつあるので気をつけた方が良いこと。

 リザードマン、ミノタウロス、ケンタウロスとは協定が結ばれたので、森で見かけても一方的に襲ったりしないこと。

 僕は最後まで話を聞いてたけどユーニスは知ってる情報だったのか、途中から猫じゃらしみたいな草を採ってきて、ルビィと遊んでいた。


 緊張してるのは僕だけなんだろうか?

 ルビィはともかくとして、ユーニスもアラベスもすごく余裕があるように見えるんだけど。

 魔物がいる森を何日も進むって……危ないのでは?

 ベテラン冒険者に任せておけば大丈夫なのかな?

 こっそり心配していると、南の空に小さな点が見えてきた。


「あっ、あれかな?」

「ピーゥ! ピーゥピーゥ……」

 僕が見つけたのと同時にトパーズもこっちに気が付いたようで、鋭い鳴き声が耳へと届いた。

 茶色い点のように見えていた大鷲が、みるみるうちに大きくなる。

「あれっ? トパーズって、こんなに大きかったっけ? それとも、僕の目がおかしくなったのかな……」

「ソ、ソウタさん? ルビィさんだけじゃなくてトパーズさんも変身できるんですか? 聞いてないですよ」

「あれは……まさか、ロック鳥? 絶滅したと聞いていたが……。ソウタ殿は伝説の存在まで使役できるのか……」

 すごい勢いで飛んできたトパーズが大きく羽を広げて急停止し、ふわっと優雅に舞い降りた。

 顔を見上げてるだけで、首が痛くなるほど大きい。

 巨人サイズになったオニキスと同じぐらい?

 いつの間にトパーズも、変身できるようになったの?


「うわっ! ちょっとトパーズ! 危ないから……ん〜……」

 いきなりトパーズがお辞儀をして、僕の胸に頭を擦り付けてきた。

 軽く押されただけで後ろに倒れそうになるが、巨大なクチバシを両手で抱えてなんとか耐える。

 一瞬、そのまま咥えられて、丸呑みされるんじゃないかと思ったよ……。

「ピーゥピーゥ……。クークークー」

「うんうん。一人だけ置いて行かれて、寂しかったんだね。ごめんよ」

 手を伸ばして頭を優しく撫でてやると、まるで、産まれたばかりの雛のような可愛い声が返ってきた。

「それじゃあ、ここからはトパーズも一緒に行こうか。森を抜けるのに何日かかけるらしいけど——えっ? 背中に乗って欲しいって……本気?」

「ピーゥ‼ ピーゥピーゥ!」

 余裕のあるところを見せたかったのかな?

 トパーズが軽く羽ばたいただけで、横に居たユーニスやアラベスが飛ばされそうになっている。

「これだけ大きかったら、三人ぐらい余裕で乗れそうだけど……。捕まるところもないし、危ないでしょ? そこも考えてあるの? いつの間に? オニキスが持ってる革紐を使って……? あー、なるほど。それなら大丈夫かな」

 僕と一緒に旅をしたいという一心で、トパーズは人を乗せる方法を考えていたらしい。その勢いで、身体まで大きくなったようだ。

 ……元のサイズに戻れるのかな? あとで確認しないと。


「それじゃあ……。オニキス!」

 軽く引っ張って革紐を首から外し、服の中に入れていた勾玉を出す。

 漆黒の勾玉に声をかけると、人形サイズのオニキスが目の前に現れた。

「オニキスに頼みたいことがあるんだけど——えっ? 話は聞いてたから大丈夫だって?」

「ピーゥピーゥ!」

 軽く一鳴きしたトパーズがゆっくり後退りして、くるっと後ろを向いた。

 羽の一枚一枚が、畳と同じぐらい大きいって……すごいな!

 地面に触れるギリギリまで下がっていた尾羽を、オニキスがゆっくり上がっていく。背中の真ん中辺りに着いたところで、オニキスは両腕に絡んでいた革紐を前へと伸ばし、トパーズの首にぐるっと巻き付けた。

 革紐と言うよりロープぐらいの太さになってるけど、そこもオニキスが自由に操作できるのかな?

 首が絞まりそうで見てて不安になるけど……。このアイデアを出したのはトパーズだし、たぶん大丈夫なんだろう。


「僕も背中に乗るけど……。重いようだったらちゃんと言うんだよ?」

「ピーゥ!」

 ダイヤモンドランクの冒険者二人が僕の横で、心配しているような興奮しているような、不思議な表情を浮かべている。

 ゆっくり足を出して、そのままトパーズの尾羽に足を掛ける。ふかふかの絨毯のような感触が気持ちいい。

 両足とも乗った瞬間、まるでトラックの昇降機のように尾羽の先が滑らかに上昇し、水平になったところで止まった。

「うわっ! びっくりした、けど……。歩きやすいようにしてくれたのか」

「ピーゥ! ピーゥピーゥ」

 トパーズの背中をゆっくり進み、オニキスのすぐ後ろに座る。

 羽を畳んでても四畳半ぐらいの広さがある? もっと広いかも。

 まだまだ余裕がありそうだし、これなら三人乗っても大丈夫かな?

 オニキスの身体やロープに掴まっていれば、落ちることはないだろう。

 何故か急に、ずいぶん前に小説で読んだ、鷲に運んでもらった魔法使いの話を思い出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ