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4 オニキスの力(前編)

「オニキス、ちょっとジャンプしてみて! ジャンプ!」

 僕に言われたとおり、鉄の巨人がジャンプを繰り返す。

 ドスンドスンと重い物がぶつかる音が聞こえてくるけど、地面の揺れはそれほどでもない……。重力制御が効いてるみたいだな。

「そのまま、ゆっくり回って……。腕立て伏せは出来る? 腹筋は?」

 ちょうど良い機会だから、巨人サイズでの動きをテストしようと思ったんだけど、どうやら問題なさそうだ。

 人形サイズの時と比べても、違和感なく動けてる。

「もう、それぐらいで良いよー! ありがとう」

 ちゃんと頭の後ろに手を添えて、腹筋していたオニキスが動きを止めた。

 お座りして見ていたルビィが立ち上がったかと思うと、そのまま駆け出して勢いよくジャンプし、オニキスの膝にちょこんと飛び乗る。

 対抗するようにトパーズも、大きく羽ばたいて優雅に舞い上がり、オニキスの肩へとふわりと着地した。

「にゃーにゃー!」

「ピーゥ! ピーゥピーゥ……」

 どうやら、相棒たちだけで会議が始まったようだ。

 全員集まるのは初めてだし、話したいことがいろいろあるんだろう。

 今のところ、オニキスは声を出せないけど……大丈夫そうだな。

 僕とトパーズが離れててもコミュニケーションを取れるように、この三人の間にも、何らかの繋がりがあるんだと思う。

 こっちはこれで良いとして——


「サイズは、バラギアンの古都を守るガーディアンと同じぐらいか? いや、こちらのゴーレムの方が大きい? しかし、世界が変わる前に造られたゴーレムより、現代のゴーレムの方が大きいなんて有り得ない……。まさか、封印されていたゴーレムを蘇らせた? 本物の巨人が歩いていた時代なら、このサイズのアイアンゴーレムも可能だったのか? 仮にそうだとしても、術士が亡くなってから三千年以上経っているはずで……。どうやって……」

 少し前からぶつぶつと、アラベスの声が耳に届いていた。

 ゆっくり振り返りながら、つぶやいている本人に声をかける。

「あのぉ……。オニキスは僕が新しく造ったゴーレムで、昔のゴーレムとは何の関係もないですよ?」

「なにぃっ⁉ いや、でも……そんな……。そんな馬鹿な……」

 よっぽど衝撃が大きかったのか、青い髪の美女は目を見開いたまま、動かなくなってしまった。

 こんなに美人だと、フリーズしてても絵になるんだなぁ。

 スマホが手元にあったら、写真をSNSにアップしたいぐらいだよ。


 固まってしまったアラベスの横で、何故かユーニスはオニキスやルビィたちを熱心にスケッチしていた。真剣な表情で鉛筆を走らせる姿は、現実逃避してるように見えなくもない。

 使っているノートが、僕が美大時代に使っていたクロッキー帳とそっくりに見えるけど……。こっちの世界でもどこかで売ってるんだろうか? あとで、時間があったら聞いてみよう。


「ソウタさんは動物を操れるだけじゃなくて、ゴーレムを造れるんですか?」

 落ち着いた表情で話しかけてきたのは、村長代行のキアラだった。

 今日、初めて僕の相棒を見た二人よりも、ルビィが大きくなるところを前に見ていたキアラの方が、状況を受け入れやすかったようだ。

「小さい頃から粘土で遊ぶのが好きで……。こっちの世界に来たら、いろんな事が出来るようになってました」

 内緒にするって約束したのは秘密基地の話だけだけど、白い粘土の話も、あまり広めない方が良いような気がする。

 なんとなくそんな気がしたので、細かい話はぼかしておいた。

「それで、オニキスさんを……? 異世界から来た人は特殊な力を持っていることが多いそうですが、ソウタさんにそんな力が……」

 村長とのお茶会でも、同じような話を聞いたっけ。

 これで、全部納得してくれると助かるんだけど……。


「僕にも造り方を教えてもらえませんか? 僕も、オニキスさんみたいなゴーレムを造ってみたいです!」

 マルコのキラキラした視線が頬に刺さる。

「んー……それはちょっと……説明が難しいけど……。まずは、良い粘土を探すところから、かなぁ……」

 嘘をつくのは心苦しいけど、かといって、あの粘土を分けてあげるのも危なそうだし、呪文だけ教えても駄目だろうし……。

「そうですか……。粘土が大事なんですね」

「そうそう。粘土は触ってるだけでも楽しいし、試しにいろいろ造ってみるのが良いと思うよ!」

 アラベスの話によると、この世界には普通のゴーレムもあるみたいだし、そっちならマルコにも造れるようになるんじゃないかな?

 はっきりしたことは言えないけど。


「そうか……そういうことか……。全てわかったぞ!」

「何がわかったの? アラベス」

 固まっていたアラベスが、いきなり大きな声を出した。

 ノートをリュックにしまいながら、ユーニスがアラベスに声をかける。

 満足のいくスケッチが出来たのかな?

 エルフのお姉さんは、まるで一仕事終えたあとのような充実感のある表情を浮かべていた。

「あのゴーレムは見た目が立派なだけで、中身はハリボテだな! それならあの大きさも、軽い動きも納得できる……。違うか?」

「えー……」


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