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2 賢者と魔法戦士

「僕からも、質問させてもらって良いですか?」

「もちろんです。異世界から来てしばらく経つとはいえ、まだまだわからないことだらけでしょう? 私たちで良ければ何でも聞いて下さいね」

 部屋の空気が和んだところで、僕の方から声をかけてみた。

「ありがとうございます。そもそも、こんなことを聞いていいのかどうかもわからないんですが……。ユーニスさんはエルフであってますか?」

「えっ?」

「あっ」

「ああー……」

 女性三人がぽかーんとした表情に変わる。

 そんなに変なことを聞いちゃったかな……?

「すみません。アラベスもキアラも昔からの友人で、つい、みんなわかってる気になっちゃって……。ちゃんと自己紹介しますね」

 そう言いながらユーニスは、軽く握った左手を僕の方に伸ばしてくる。

 不思議に思いながら小さな手を見ていると、手の甲に、透明な長方形の板が突然現れた。

「えっ? こっ、これって——」

「私はユーニス・スマイス。種族はエルフで、職業は賢者。冒険者ギルドで調査員として働いてます」

 手の甲に浮いている透明な板には、今聞いたのと同じ情報が刻まれていた。


 エルフはなんとなくわかる。

 耳が尖ってて、長寿で、精霊と会話できる森の民。

 賢者は……とにかく賢い人?

 漫画やゲームだと、どんな魔法でも使える職業ってイメージ。

 冒険者ギルドはファンタジーものだとお約束の、冒険者を支援して仕事を割り振ったり斡旋してくれる組織かな?


「私の名前はアラベス・アルバラード。魔族とエルフのミックスで、職業は魔法戦士。ユーニスと同じく、冒険者ギルドの調査員だ」

 すっと差し出されたアラベスの手にも、同じように透明な長方形の板が浮かんでいる。

 これは……元の世界で言うと、ドッグタグみたいなもの? 『魔族とエルフのミックス』って部分も気になるんだけど、詳しく聞いても良いんだろうか?


「ソウタさんにはお話ししてなかったですけど……。父が体調を崩して村長の仕事が出来なくなるまで、私も冒険者だったんですよ」

 一人だけ小さいソファに座っていたキアラが襟元に手を入れて、服の下から金色の板を取り出す。

 これも、ユーニスやアラベスの手の甲に浮いている板と同じような形で、名前や種族や職業の他に、国の名前が刻んであった。

 体育会系っぽいとは思ってたけど……キアラさん、戦士だったのか。


         ☆


 種族や職業について、もう少し詳しく話を聞かせてもらった。

 エルフとか賢者とか魔法戦士とかは、僕が想像していた内容でだいたいあっているらしい。

 魔族の話を聞いて、ちょっとびっくり。

 見た目は人間と似てるけど、産まれたときから魔法が使え、肉体的にも頑健で長命な種族らしい。

 それって最強なのでは? 人間の上位互換種?


 冒険者ギルドは国ともやりとりできるほど巨大な組織で、正式に登録された冒険者は、それだけで周囲の人間から尊敬されるらしい。

 実績に応じて冒険者はランク分けされ、受けられる仕事が変わってくる。

 たとえばキアラの場合、現在は引退して村長代行を務めているが、元々はゴールドランクの冒険者で、住んでいる国とその周辺に関係する仕事を引き受けていたそうだ。

 ユーニスとアラベスの二人は最高のダイヤモンドランクで、必要であればどんな国でも入れる権限を持っている。

 認識票は身体に埋め込まれる形に変わり、大がかりな組織犯罪を担当することが多いって……。

 それはもう、冒険者じゃないのでは?

 元の世界で言うと、ICPOの職員みたいな感じ?


 一番驚いたのは女性三人の年齢かも。

 ユーニスとアラベスはキアラの先輩で、キアラは冒険者になってからしばらくの間、この二人に面倒を見てもらっていたそうだ。

 三人が仲良く話をしているのを横でこっそり聞きながらまとめると、エルフのユーニスが一番年上で、その次がアラベス、人間のキアラが一番年下ということになった。

 そもそも、ユーニスが僕とは違う異世界人に会ったのが、八十年ぐらい前の話だそうで……。

 この世界で、見た目から女性の年齢を推測するのは不可能だな。

 よーく覚えておこう。


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