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5 異世界レストラン

 ベレッチさんはゲストルームに泊まって、翌日の午前中に帰っていった。

 主のために面白い話を集めるのが仕事だって自分で言うだけあって、屋敷に居る間に興味深い話をいくつか聞かせてくれた。


 広がり続ける水晶の森の話。

 黄金色の竜と共存する村の話。

 大陸を渡ってくる巨大な亀の話。

 石の女神が管理する地底都市の話。


 ユーニスやアラベスでも知ってる有名な話からマーガレットですら聞いたことがないような珍しい話まで、いろいろと。

 僕は一つも知らなかったので、どの話も楽しく聞かせてもらった。


 面白い話のお礼という訳ではないけど、ベレッチさんがドラゴンゾンビを討伐した時の話を聞きたがったので、軽く説明しておいた。


 川の水を素材として、竜の姿をしたゴーレムを百体作成。

 龍玉の力で変身した僕が、上空へとドラゴンゾンビを誘導。

 ウォータードラゴンが合体して、ドラゴンゾンビをブレスで浄化した。


 話の流れで、ウォータードラゴンが本物の竜になったことや、ニンフェアって名前を付けたことや、芸術の女神から湖に住む許可をもらったことも説明しておいたんだけど、途中からベレッチさんが信じられないというような表情を浮かべていたのが面白かった。

 ……小ニール湖までベレッチさんを連れて行って、ニンフェアを紹介してから話をすればわかりやすかったかな?


         ☆


 ベレッチさんが帰った日の午後。

 異世界人が開いたレストランについて、ベレッチさんからもらったノートを見ながらみんなに相談してみた。


「アラベスはこの、バラギアン王国の王都にあるスイーツのお店を知ってるんだよね?」

「はい。お父様の屋敷でお茶請けとして、その店のスイーツが出てきたことがありますし、店に行ったこともあります」

「その店なら、私もマーガレット様と一緒に行ったことがあるわよ」

「店でしか食べられないパフェがあって、季節の果物にクリームがたっぷりでアイスクリームも入ってて……。すごく美味しかったわね」

「前にお父様がこちらの屋敷を訪れた時、手土産として持ってきたスイーツがその店の商品ですよ」

「ああっ! あのドーナッツか」

 どうやら、スイーツの店はみんな詳しいみたいだ。

 ……僕も食べたことがあるみたいだし、急いで行かなくても良いかな。


「それじゃあ、こっちの焼肉屋さんは?」

「少し前の話だけど、その店なら行ったことがあるわ。いろんな肉を自分で焼いて、タレに漬けて食べる料理よね。何が出てくるのか決まっているコース料理とは違って、食べたいものを好きなだけ注文できるのも面白かったわね」

「冬の城で焼肉っぽい料理が出るようになったのは、マーガレット様が指示したからだと聞いたことがありますが……」

 マーガレットもユーニスも、焼肉がどんな料理か知ってるみたいだ。

 冬の城で焼肉っぽい料理が出てくる理由もわかった。


「あれは私が指示した訳じゃなくて、パーカーが気を利かせて、お気に入りの料理を再現してくれた結果よ」

「わざわざ名前を出して指定していると言うことは、この店に何か特別な理由があるのでしょうか?」

「私は冒険者仲間に連れられて行っただけだし、古くから続いてる有名な店だって話は聞いたけど、そこまではわからないわね」

「そうですか……。では……」

「ええ」

 ……何だろう? マーガレットとユーニスが視線を合わせて頷いたように見えたけど、気のせいかな?


「前にアラベスが教えてくれた、焼肉定食が食べられる店もここかな?」

「その店でも食べられると思いますが、焼肉定食を出してる店は他にもあるはずですよ。ルシーマ帝国では珍しくない料理ですから」

「そうなんだ。僕がいた世界の焼き肉屋さんと同じような感覚かな」

「ゲートさえ繋がっていればすぐにでも行ける場所ですし、急いで食べに行く必要はないのでは?」

「ん〜……。まぁ、それもそうかな……」

 肉を焼いた料理は僕の屋敷でも普通に出てくるし、急いで食べたいってほどではないかも。



「ソウタ君。そこに書いてあるカレーってどんな料理なの?」

 マーガレットはカレーが気になるみたいだ。

「簡単に言うと、ビーフシチューによく似た料理ですね。スパイスが利いてて肉や野菜が入ってて、ご飯にかけて食べることが多いです」

「ユーニスは知ってたのかしら? 料理の話でも良いし、店の場所や料理人の情報でも良いけど」

「異世界人について詳しいつもりでしたが、この話は初耳ですね。ベレッチさんはどこで情報を入手したのか……」

「変な情報を集めさせたらパーカーでも彼には勝てないから、気にしない方が良いわよ」

「……そうします」


「クムロカンディは海沿いにある小さな国ですよね? 特に有名な物もない、地味な国だと聞いた覚えがあります」

 カレーの店がある国について、アラベスが教えてくれた。

「私も何回か行ってるはずだけど、景色が綺麗だった覚えしかないわね」

「マーガレットは行ったことがあるんですね」

「……英雄として、大戦の後片付けでね。全ての国を回ってた時期があるのよ」

「あ〜……。それは……」

 マーガレットの表情が微妙に曇った。

 詳しい話は聞いてないけど、大戦を終わらせた過程で思い出したくないような出来事もあったんだろう。



「こちらの、ラーメンの店なら知ってますよ。異世界風の麺料理が食べられる店として、食通の間で有名な店ですね。今では似たような料理を出す店が周りに増えて、ラーメン通りと呼ばれているとか」

 横からユーニスが覗き込んでいるページには、ラーメンの店について情報をまとめてあった。

 美味しそうなラーメンのイラストまで描いてあって……。これは豚骨ラーメンかな?


「その店の話ならお父様から聞いたことがあるけど、簡単には行けないような場所に店があるんでしょう?」

「大陸の東にあるゲートからでも、馬車を乗り継いで二週間ぐらいかかるって聞いたかしら。でも、ソウタ君なら……」

「……えっ? 僕も行ったことはないですよ?」

 一回でも行ったことがある場所なら転送魔法を使えるけど、そういう話じゃないのかな?


「ダイヤモンドランクの顔見せとして、冒険者ギルドが使っている基地に行ったのを覚えてる?」

「あっ、はい。覚えてます」

 オニキスが精霊使いの人を凍らせちゃったところだな。


「あの基地から東に行った辺りにその店があるのよ。間には強い魔獣が住んでる山があって、普通なら遠回りして行くことになるんだけど、トパーズさんに乗せてもらえばそれほど時間もかからないと思うわ」

「そうなんですね。それなら……。明日のお昼はラーメンにしようかな」

 さすがに、今から行くのは急すぎるよね。


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