表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
202/220

1 年の瀬

 古龍が小ニール湖を訪れる流れは、古龍の長男である陸龍が来たことで一段落付いたみたいだ。

 その後は特に大きな騒ぎもなく、のんびり過ごした。

 試しに植えてみた浄化の樹が順調に育っているようなので、同じ樹を他にも作って湖の周りに植えたりしていた。

 特に小ニール湖の東側で、広い範囲にわたって土地が荒れてるのが気になってるんだけど……。これって何とかなるのかな? ちょっと心配だ。

 もうしばらく様子を見て、駄目なようなら何か別の手を考えよう。


 そんな感じで毎日が過ぎて、いつの間にか年の瀬になっていた。

 念のため、屋敷で働いているエミリーさんに年末年始で特別な行事とか風習があるのか聞いてみたけど、僕がやらないといけないことは特に無いみたいだ。


 僕の屋敷があるイムルシアでは家族で年を越すのが普通で、そこは貴族でも平民でも変わりない。年が明けて新しい年になると、首都の大聖堂で教皇から新年の挨拶が行われる。

 年が明けてから一週間ほどの間、格の低い貴族が目上の貴族の屋敷を訪問して新年の挨拶をしたり、貴族と付き合いのある商人が新年の挨拶に回ったりで、ほとんどの貴族が忙しく過ごす。

 貴族の慌ただしい時期が終わって、ようやく貴族の屋敷で働いている人たちが休みをもらえるようになる。

 ちょうどこの頃に、女神が始めて大陸を訪れた日を記念する祝日があって、貴族の屋敷で住み込みで働いている人も家に帰って家族と過ごせるように、長めの休みをもらえるのが一般的だそうだ。


 話の流れで、僕の屋敷でどうするかをエミリーさんから質問されて、僕は一人でも大丈夫だから、その時期はみんなに休みをあげるように言っておいた。

 ……屋敷の主を一人だけ残すような恥ずかしい真似はできない?

 結局、全てエミリーさんにお任せすることになった。

 どうなるのかわからないけど、エミリーさんなら良い感じに手配してくれると思う。たぶん。



 午後のお茶の時間。

 美味しいお茶とクッキーを味わいながら、年末年始をどう過ごすのか他の人にも聞いてみた。


 マーガレットは大晦日から三日ほど、冬の城で過ごす予定らしい。

 こればっかりはパーカーさんに任せられないので、城で働いている人と新年の挨拶をしてくると。

 ……いつものように転送魔法で送り迎えすれば良いんだね? 了解。


 ユーニスはずっと僕の屋敷にいるそうだ。

 話を聞いた感じだと、ユーニスが育った村では年越しだからって特別な行事はなかったみたいだ。

 ……やっぱり、エルフは時間の捉え方が人間と違うのかな?


 アラベスもユーニスと一緒に僕の屋敷で過ごす、と。

 父方の実家に帰っても母方の実家に帰っても面倒なことになるのは目に見えているので、あまり帰省したくないみたいだ。

 僕の屋敷に住んでることを、アラベスのお父さんであるエメリックさんが知ってるし、ちゃんと連絡が取れてるのなら問題ないのかな。

 ……問題ないんだよね?

 質問しても視線を逸らされたけど、たぶん大丈夫なんだろう。


「マイヤーは——」

「私は専属メイドとして、いつもと同じようにソウタ様のお世話をさせていただきます。料理人が帰省して少なくなっている間は料理も作りますので、楽しみにしてて下さいね」

 良いタイミングでお茶のおかわりを持ってきてくれたのでマイヤーが年末年始をどう過ごすのか聞こうとしたんだけど、質問を最後まで口にするよりも早く答えが返ってきた。

「ああ、うん。楽しみにしてるよ」

 僕が知らなかっただけでマイヤーの中ではもう、いろいろと予定が決まっているみたいだ。言われたとおり、料理を楽しみにしておこう。


「みゃあみゃあっ」

「はい。クッキーのおかわりですね。すぐにお持ちします」

 ルビィの我が侭なリクエストにも、マイヤーは笑顔で対応している。

 ……何か良いことがあったのかな?

 これは、かなり機嫌が良い時の表情だと思う。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ