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6 浄化の樹

 やっぱり女神様は忙しいのかな?

 しばらく話をしただけで、サーサハル様は空へと帰っていった。

 小ニール湖のドラゴンゾンビが討伐されて、これからは僕の造った竜が湖に住むことになったと、念のためにサーサハル様から春の女神に知らせておいてくれるそうだ。

 これで、ニンフェアがここに住んでも大丈夫だろう。


 良い機会だから避難していたユーニスとアラベスを呼んできてもらって、ニンフェアを紹介しておいた。

 二人とも何かに疲れたような顔をしてたのは気のせいだろう。

 マイヤーにも紹介したんだけど、こっちは落ち着いた表情だった。


 話の流れでルビィやオニキスたちとも顔合わせしておいた。

 鉄の巨人とロック鳥と竜が楽しそうに話をしているのは不思議な光景だった。

 オニキスの手に乗っているルビィが一番偉そうに見えたのは気のせいかな?

 リンドウとヒイラギはずっと僕と一緒に居たから、改めて紹介する必要はなかったみたいだ。



 相棒たちの話が盛り上がっている間にこっそりテーブルに戻って、アラベスに預けていたリュックから粘土を出して作業を開始。

生命創造(クリエイトライフ)! ……これで完成、と」

「今度は何を作ったのかしら? ソウタ君」

 苗木が完成したタイミングで、マーガレットが声をかけてきた。

 ……女神様が帰ったからかな? いつの間にか、英雄の姿からいつものエルフの姿に戻ってる。


「湖の環境はニンフェアに任せておけば大丈夫そうだから、僕は周りの土地をどうにかしようと思って。汚染している毒を吸い上げて、土を浄化してくれる樹を作ってみました」

「そうじゃないかと思ってたけど……。とんでもないものをあっさり作っちゃうのよね、ソウタ君は」

「さすが、お師匠様ですね」


「……それって、前に教会に持っていった、生命の樹や夫婦の樹と同じような樹を新たに作ったってことよね? そんなに簡単に作れるものなの?」

 あっさり受け入れてくれたマーガレットとアラベスに比べて、ユーニスの不思議そうな表情がちょっと楽しい。

「前に作った樹の応用ですから、そんなに難しいことはやってないですよ。ちゃんと働いてくれるかどうかは、試してみないとわからないですけど」

 ユーニスと話をしながら粘土を加工してスコップを作る。

 続けてジョウロも作ろうかと思ったけど、水はリンドウに魔法で出してもらえば良いかな。

『お任せください』



 小ニール湖の北東。

 湖を見下ろせる丘の上に一本目の浄化の樹を植えた。

 ただでさえ大きい湖だし、東の方はかなり広い範囲にわたって土地が荒れてるみたいだし、一本で全て浄化するのは無理だろう。

 しばらく様子を見て、うまくいってるようなら樹を増やさないと。


         ☆


 ドラゴンゾンビを討伐したあとも、小ニール湖に通う日々が続いた。

 まずは浄化の樹に水をやって、周囲の状況を確認。

 毎日実感できるぐらい、樹はすくすく生長してる。

 周りの土も徐々に綺麗になってるんじゃないかな?

 今は冬だし、草が生えるとしてもしばらく先になると思うけど。


 樹に水をやったあとはニンフェアと話をしたり、マイヤーと一緒に古い廃墟を見学したり、湖の北へと足を伸ばして森を散歩したりしていた。

 そんな感じで僕はのんびりしてたんだけど、マーガレットとユーニスとアラベスは忙しかったみたいだ。


 小ニール湖から流れ出る川の水が綺麗になったことで、下流にある街で騒ぎが起きたらしい。

 その街の役人が護衛として雇った冒険者と一緒に調査に来て、マーガレットたちに見つかって、ドラゴンゾンビが討伐されたことを聞いた。

 話を聞いた役人は、湖の浄化は終わってないし周りの土地も汚染されたままだけど、湖の近くにある廃墟へと街の人を移住させたいと言いだした。


 元はといえば湖の近くに住んでいた人たちがドラゴンゾンビの影響で暮らしていけなくなって、移り住んでできたのが下流にある街らしい。

 いつかドラゴンゾンビの討伐に成功した日には、この地に戻ってくるように代々伝えられていた、と。

 ……気持ちはわかるけど、そんなに急いで引っ越しても何も出来ないんじゃないかな?


 他にも古龍を神と崇める信者の一団が遺跡に押しかけてきたりして、いろいろと大変だったみたいだ。

 ……その人たちがニンフェアを見て、新たな古龍だって言いだしたの?

 僕が造ったんだから、古龍にはならないのでは?

 そもそも、『新たな古龍』って言葉としておかしくないかな?


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