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3 ドラゴンゾンビ討伐

 ウォータードラゴンを作ってから十日ほど経った。

 思ってたより毒を浄化する力が強かったみたいで、小ニール湖の水が全体的に透明感を増している。短い時間でかなり綺麗になった気がする。

 この調子なら、一ヶ月もしないうちに魚が泳げるぐらいになるのでは?

 あとはドラゴンゾンビさえどうにかすれば——

「ねぇ、ソウタ君。湖の水は綺麗になったみたいだけど、ドラゴンゾンビをどうするかは考えてるの?」

 どうやら、マーガレットも同じ心配をしてたみたいだ。


「ドラゴンゾンビをどうするか、自分でも考えてたんですけど……。一号が作戦を立ててくれたので、まずはそれをやってみようかなって思ってます」

「一号って?」

「あの、ウォータードラゴン一号です」

 僕とマーガレットが見ている先で、東洋の竜っぽい形をしたウォータードラゴンが水面からゆらりと上半身を出した。

 軽く手を振ってやると、にっこり微笑み返してくれる。

 ……水の鱗で顔が覆われていて表情がわかりにくいけど、あれは微笑んでるんじゃないかな? たぶん。

 どうやら、準備が整ったようだ。


「……念のために、作戦を教えてもらえるかしら?」

「作戦って言うほどしっかりした作戦じゃないんですけど……。みんなの調査によると、ドラゴンゾンビは湖の深いところでじっとしてるみたいなので、僕が竜の姿に変身して、ドラゴンゾンビに近づいて囮になります。あとは、水深が浅くて戦いやすいところに誘導して、ウォータードラゴンやオニキスにどうにかしてもらおうかと」

「その作戦は……。ん〜……。竜の姿に変身すれば毒なんて効かないでしょうし、水に溺れることもないでしょうけど……。ドラゴンゾンビに襲われた時の対策は考えてあるの?」

「少し前に、魔獣討伐を見に行ったじゃないですか。あの時、魔獣が張っていた結界を参考にして、リンドウが新しい魔法を開発してくれたんです。物理攻撃も魔法も防げるのはこれまでと同じだけど、結界が何枚も層になってて、外側の層が破られたら自動的に新しい層が内側に張られる便利なのを」

「それは……。何というか、すごそうな結界ね」

「新しい結界でも防げないような攻撃をされたら、帰還魔法で屋敷に帰っても良いし。戦わないで囮になるだけなら僕が一番向いてると思うんです」

「確かにそうね。それはそうかも……。浅瀬に誘導したあと、ドラゴンゾンビへの攻撃はどうするの?」

「試してみたい技があるって言ってるので、まずはウォータードラゴンたちに任せてみようかと。それで駄目だったら、オニキスやトパーズの出番かな?」

 最悪の場合でも、フェニックスの姿になったトパーズが聖なるブレスを吐けるみたいだから、アンデッドに困ることはないと思う。


「だったら、この近くに誘導してもらえる? いつでも出られるように、私も準備しておくから」

「最初からそのつもりです。いざという時はよろしくお願いします」

「クスッ。お姉さんに任せなさい!」

「ふみゃあぁぁ〜……」

 気合いの入った表情のマーガレット。

 何故かルビィが気の抜けた声で鳴いた。


         ☆


 ユーニスとアラベスとマイヤーに避難してもらって、オニキスとトパーズに作戦を伝えて準備してもらってから、全長三十メートルほどの竜の姿に変身して小ニール湖に入った。


 ウォータードラゴン一号に案内してもらって、湖の最深部へと向かう。

 外から見た時と違って、深い部分にはまだ毒が残ってるみたいだ。

 リンドウに暗視魔法をかけてもらったけど、それほど視界は良くない。

 毒の水に囲まれてても何も感じないし、ずっと息を止めていても苦しくならないのが不思議な感じ。竜ってすごいなぁ。


 水中を三十分ぐらい進んだところで、ドラゴンゾンビを発見した。

 長くて立派な角。尖った爪。巨大な蛇のような身体。

 ただの偶然だと思うけど、ドラゴンゾンビは僕が造ったウォータードラゴンと良く似たシルエットをしていた。

 大きな違いと言えばサイズが十倍近くあるところと、紫色のぶよぶよとした泥のようなもので鱗が出来てるところ。

 ……ずっと水に浸かってて、鱗が腐ったんじゃないよね?


 目玉が失われて、暗闇しか残ってない眼窩。

 存在しない視線と目があった瞬間、ドラゴンゾンビが動き出した。

 どうやら、ウォータードラゴンは好みじゃないようだ。

 少し前にいる一号を完全に無視して、まっすぐこちらに向かってくる。

 ……テンポラリゴーレムは魔力で動いてるから、ゾンビが食べるところはないのかな?

 僕は身体の向きを変えて、岸の方へとドラゴンゾンビを誘導する。

 いきなりブレスで攻撃されるのを心配してたから、追いかけてきてくれるのは好都合だ。


 ドラゴンゾンビは大きいけど、泳ぐのはそれほど速くなかった。

 というか、竜に変身した僕の身体がすごいのかな?

 大きな身体に小さな翼で、速く泳げる理由がわからないけど。



 逃げてきた勢いそのままに水から飛び出して、オニキスやトパーズが待機している場所へと向かう。

 ドラゴンゾンビが太陽の光を嫌がって逃げるようなら、夜まで待って作戦をやり直すつもりだったけど、まっすぐ僕を追いかけてきた。

 ……よっぽどお腹が減ってるのかな? それとも、僕が竜の姿をしてるから何らかの記憶が蘇ったとか?


 ——グウゥゥゥオオオォォォォ……

 ——ウゥゥオオォォォォ……


 一緒に逃げてきた一号が湖面から上半身を出してうなり声を上げると、残りのウォータードラゴンが続々と集まってきた。

 そのまま、動きを止めずに一号の身体にぶつかって……。合体した?

 えっ? そんなことができるの? 僕も知らなかったんだけど。


 あらかじめ、打ち合わせしてあったのかな?

 あっという間に百体のウォータードラゴンが一つにまとまって、古龍のドラゴンゾンビよりも大きな身体になった。

 ドラゴンゾンビは氷龍山脈の古龍と同じぐらいのサイズ? こっちの方が少し小さいかな?

 合体したウォータードラゴンは、ドラゴンゾンビの倍ぐらいあると思う。とにかく大きい。


 ——ガアアァァァァオオオォォォォ‼


 ウォータードラゴンの吐き出したブレスが、ドラゴンゾンビを直撃する。

 ぶよぶよとした鱗がはじけ飛び、がっしりとした骨だけが残される。

 どうやら、すごい量と勢いの水のブレスのようだ。


 ——アアァァァァオオオォォォォン……


 声が甲高く変化するのと同時に、ウォータードラゴンのブレスも変化した。

 吐き出された水が眩しく輝き、残っていた骨が光に包まれて消えていく。

 ……トパーズの聖なるブレスもこんな感じなのかな?

 試してみたい技があるって言ってたのはこれかぁ……。

 念のために準備してもらったけど、オニキスもトパーズもマーガレットも出番は無かったか。


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