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7 古龍の龍玉(後編)

 僕とマーガレットとユーニスとアラベスとマイヤーとベレッチさんと、何故かマイヤーに抱っこされてるルビィ。

 全員で屋敷の裏庭へと移動して、話の続きを聞くことになった。


「龍玉を出した状態で、『ドラゴンチェンジ』と唱えてください」

「やってみますね……。ドラゴンチェンジ!」

 自分の目で見ていた景色がぐにゃりと歪む。次の瞬間、僕はそれまでよりも高い位置からベレッチさんを見下ろしていた。

「えっ? えーっと……。これってもしかして……」

 肌を包む綺麗な鱗。爬虫類っぽい爪。

 不思議に思って視線を下げると、僕の手が古龍の手に変わっていた。


「かっこいいわよ、ソウタ君」

「お師匠様……。とても可愛いです」

「古龍の龍玉を得たものは古龍の力を使えるようになる……。あの伝承はそういう意味だったのね」

 マーガレットとアラベスから歓声が届く。

 ユーニスは冷静に状況を分析しているようだ。

 呪文を唱える前から予想してたけど、どうやら本当に古龍の姿になっているらしい。


 ……リンドウ。どうなってるのか自分でも確かめたいんだけど、何か良い魔法はないかな?

『光を反射する結界を張ります。……これでどうでしょう?』

 少し離れた位置に巨大な鏡が現れた。

 鏡には黒いスーツ姿のベレッチさんと並んで、氷龍山脈で会った古龍を思いっきり縮めたような竜が写っている。


 僕が右手を上げると鏡の中の竜も右手を上げる。

 僕が首を横に振ると鏡の中の竜も首を横に振る。

 どうやら、僕が竜の姿になっているのは間違いないようだ。

 身長は三メートルぐらいかな? 良い感じにデフォルメされていて、竜のぬいぐるみが動いているようにも見える。


「資料によると、もっと大きな竜の姿に変化するとのことでしたが……。どうやら個人差があるようですね。私も初めて知りました」

『マスターが呪文を唱えるのと同時に龍玉から魔力を吸われたのですが、念のために今回は私の方で魔力を絞りました。魔力の消費量を変えることで、変身後のサイズを指定できるものと思われます』

 ベレッチさんの疑問にリンドウが心の声で答えてくれた。

 サイズを指定できるって……。どれぐらいまで大きくなれるのか、ちょっと気になる。暇な時にでも実験してみよう。


「翼で空を飛んだり、炎のブレスを吐いたりできるはずですよ」

「ちょっと、試してみますね」

 ……竜の姿になっているのに、人間の時と同じようにしゃべれるんだな。

 微妙に声が変わってる気もするけど。


 空を飛ぶのはまったく問題なかった。

 ドラゴンウイングの魔法で空を飛ぶのと同じ感覚だ。

 口から炎を吐くのは面白かった。

 これって、吐き出した液体燃料に着火してるんじゃなくて、開いた口の前方に炎そのものを発生させてるのか。たぶん、魔法の一種なんだろう。


「竜として基本的な能力の他に、我が主の特性として雪や氷を支配する能力もあるはずですが……。こちらは試すのが難しそうですね」

「雪が降った時にでも実験してみますね」

 ……もしかして、雪を降らせたり水を凍らせたりできるのかな?

 いろいろ試してみたいけど、場所を選ばないと大変なことになりそうだ。


「戻ろうと思えば、いつでも人間の身体に戻れますよ」

「えっと……。こうかな?」

 元の姿を想像しただけで、再び視界がぐにゃりと歪んだ。

 どうやら、人の姿に戻る時は呪文が必要ないようだ。

 変身する前と同じように服を着ていて、右の手首にはリンドウの姿もある。

 ……いきなり裸になったらどうしようかと思ったけど、そこはちゃんと考えてあるんだな。


「ソウタ殿には強力なパートナーの方がいらっしゃるので、このような力は必要ないかもしれませんが、いざという時はお役立てください」

「ありがとうございます。ちょっと悩んでたことがあったんですけど、良いヒントがもらえました」

 古龍を再現しようとしてうまくいかなかったけど、その理由がわかった。

 女神の土に慣れすぎて、スケールモデルの基本を忘れてたみたいだ。

 大きなものを縮小した模型を作る時、それらしく見せるためのデフォルメが必要になるのに、古龍をそっくりそのまま再現しすぎていた。

 竜の姿に変身した自分を観察して情報不足を補えば、さらに良いものが造れるはずで……。明日から忙しくなりそうだ。


「龍玉に関する説明は以上ですが——」

「……クシュンッ!」

 急に身体が冷えたみたいで、咳が勝手に口から漏れた。

 人間の姿に戻って気が付いたけど、竜の姿に変身している間は寒さを感じないようだ。

「冷えてきたみたいだし、屋敷に戻りましょう。ソウタ君」

「熱いお茶を用意しますね」


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