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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十七章 魔獣警報レベル4
180/220

6 魔獣討伐(前編)

 魔獣の警報が届いた次の日。

 いつもより早い時間に起きて屋敷を出発した。

 トパーズの背中に乗っているのは、僕とマーガレットとマイヤーの三人。

 ユーニスとアラベスは屋敷で留守番してるらしい。

 ……今日は魔獣との戦いを見学するだけじゃないの? 念のため?


 空から景色を眺めながら、お弁当で朝ご飯。

 わざわざマイヤーが早起きして作ってくれたらしい。

 具だくさんのサンドイッチがとても美味しかったです。


         ☆


「ソウタ君。あそこに見える古い砦に降りてもらって」

「わかりました。……トパーズ、頼んだよ」

「ピーゥ!」

 トパーズが滑らかに速度を落とし、小高い丘の上にある砦に着陸した。

 よっぽど古い建物なのか、岩を積んで造られた砦は今にも崩れそうな雰囲気だったけど、ちゃんと安全な場所を選んで降りてくれたようだ。


「マーガレット様」

「今回はあなたが指揮を担当しているのね。アシュリー」

 さっきまで砦の上に誰も居なかったはずなのに、どこからともなく茶色い髪の男性が現れて、トパーズから降りる途中のマーガレットに声をかけた。

 鋭い眼光。口元を覆う黒い布。

 肌にぴったり貼り付くデザインの黒い鎧。

 引き締まった肉体。腰に下げている短刀。

 ……勝手な予想で言うと、この人の職業は忍者かな?


「作戦は順調に進んでいます。あと五分ほどで、魔獣のうちの一体がこちらに現れるかと」

「ちょうど良い時間に着いたみたいね。私たちは見学に来ただけだから、対応は全て任せます」

「了解しました」

 砦の東に広がる平原を手で指しながら、茶色い髪の男性がマーガレットに状況を説明している。

 この男の人、どこかで見たことがあるような……。気のせいかな?

「いざという時は手伝うから、気楽にやりなさい」

「ありがとうございます。では——」

 小さく頭を下げたかと思うと、男の姿がすっと消えた。


「今の人は……?」

「彼の名前はアシュリー。ダイヤモンドランクの冒険者で、東の長老会に所属している長老の一人よ。ソウタ君の顔見せの時にも居たはずだけど……。せっかくだから、ちゃんと紹介すれば良かったわね」

「そんなことで時間を使わせるのもどうかと——」

「ソウタ様、マーガレット様。お茶の用意が調いました」

「……えっ?」

 白い丸テーブルに白い椅子。

 ガラス製のティーポットに白いティーカップとソーサーのセット。

 いつの間にか古い砦の屋上に、おしゃれな喫茶店のテラス席のような席が用意されていた。

 ……これって、マイヤーが持ってきた鞄に入ってたのかな?

「お茶でも飲みながら待ちましょうか」

「あっ、はい。そうですね」


         ☆


 頬を撫でる冷たい風。

 マイヤーの入れてくれた温かいお茶が美味しい。

 トパーズに乗ってる間は暑さも寒さもほとんど感じなかったけど、砦の屋上は微妙に寒かった。


 砦の東に広がる雑草だらけの平原。

 その奥に深い森が広がっていて、魔獣は森の奥から誘導されてくるらしい。

「重そうな鎧を着て盾とランスを持ってるのがアーマーファイター。身体より大きな両手剣を持ってるのがバトルマスター。動きやすそうな服装で腰に刀を提げてるのがサムライで、右の方で魔法使い(ソーサーラー)と話をしてるのは魔法戦士。大きな金棒を持ってるのは鬼娘かしら? 物理攻撃が得意なメンバーが集まって、何か準備をしてるみたいね」

 森と平原の境目辺りに、冒険者らしき人が十名ほど立っている。

 僕が尋ねると、それぞれの職業をマーガレットが簡単に説明してくれた。

「少し離れたところに集まってるのが、狩人(レンジャー)と賢者と精霊使い(エレメンタラー)僧侶(プリースト)かしら? だいたい、そんな感じよ」

 リンドウに遠見の魔法をかけてもらって見たところ半分ほどが人間で、そこに魔族とエルフと獣人が少しずつ混ざっているようだ。


「何人か魔獣の誘導に行ってるはずだけど……。そろそろ到着しそうね」

 バキバキと何かが折れるような音が遠くから聞こえてくる。

 そっと目を閉じて上空を飛んでいるトパーズの視界を借りると、木をなぎ倒しながら勢いよく進む、巨大なゾウの姿が目に入った。

 赤く光る瞳。長い鼻。長い二本の牙。焦茶色の肌。

 地面から頭の上までで、高さは二十メートルぐらいかな?

 ゾウの前方で見え隠れしているのは、誘導している冒険者だろう。


「魔獣戦のセオリーとしては、戦いやすい場所で罠にかけて一斉攻撃。これで倒せれば一番良いんだけど……。さて、どうなるかしら?」

 ギノテリウムが森を抜けて平原に出た瞬間、数え切れないほどのツタが地面から伸びて、四本の太い脚に絡みつく。

 長大なランスで突きを放つアーマーファイター。

 両手剣を振り上げて、勢いよく斬りかかるバトルマスター。

 目にもとまらぬ速さで刀を抜くサムライ。

 見上げるほど高くジャンプして、ロングソードで切りつける魔法戦士。

 長い鼻を見事に避けて、ゾウの頭に金棒を振り下ろす鬼娘。

 ……あらかじめ、魔法をかけてあったのかな?

 それぞれの武器が目もくらむほどの輝きを放った。


 ——ギイイィィィンッ‼


 強化ガラスを無理矢理砕いたような、耳障りな音が響き渡る。

「今のは……?」

「結界が破壊された音よ」

 一斉に攻撃した五人のうち、四人が魔獣からすっと離れた。

 地面から伸びていたツタがブチブチと音を立てて切られ、再びギノテリウムが動き出す。

 どれもすごい攻撃だったと思うけど、ほとんどダメージが通ってない?

 ……これが結界の力?


「魔力を豊富に持っている魔獣の中には余った魔力で結界を張って、守りを固めるタイプがいるのよ。何も考えずに攻撃してくるタイプより、こっちの方がやっかいだったりするんだけど……」

 ……今、挑発した? そういう技や魔法があるのかな?

 一人だけ残ったアーマーファイターに、魔獣は狙いを定めたようだ。

 長い鼻を鞭のようにしならせて襲いかかるが、銀色の鎧に身に包んだアーマーファイターが大きな盾で受け止める。

 巨大な炎の球。何本もの氷の矢。肌を切り裂く嵐。

 動きの止まったギノテリウムに向けて、いくつもの魔法が飛んできた。


 ——アアァァオオオォォォォンッ!


「結界さえなくなれば、あとは時間の問題ね」

「なんとかなりそうですね……」

 魔法が止んだかと思うと、息つく暇も与えずに戦士たちが襲いかかった。

 物理と魔法の波状攻撃。ダメージが蓄積していくギノテリウム。

 牙が折れ、瞳に矢が刺さり、大きな耳がズタズタになる。

 焼けただれた肌。噴き出す血しぶき。

 ……やってることはモンスターをハントするゲームに似てるけど、こっちの方が迫力があって痛そうで、現実の戦いは違うなぁ……。


 強力な攻撃が切れ目無く続き、気が付いた時にはもう、ギノテリウムは平原に横たわったまま動かなくなっていた。

 きっちりとどめを刺す魔法戦士。

 引き続き、周囲を警戒している狩人。

 魔法使いが飲んでるのは魔力を回復させる薬かな?

 前衛役が集まってるのは武器に魔法をかけてもらうためだろう。


「ここまでは作戦通りね。でも、次はどうかしら?」

「ピーゥ! ピーゥピーゥ……」

 トパーズが何かに気付いたようだ。

 視界を借りて確認すると、もう一体のギノテリウムがすごい勢いで森の中を進んでいた。

 ……こっちの方が一回り大きい? 牙も長くて強そうな気がする。

「次も大丈夫、かなぁ……?」

「私たちはここで見守りましょう」


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