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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十七章 魔獣警報レベル4
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1 専属メイドの日記

◯10月8日(月曜日)

 今日はソウタ様に剣を作っていただきました。

 以前、マーガレット様に頼まれて剣を作ったので、いつもお世話になっているユーニスやアラベスや私にも、自分で作った物を何かプレゼントしたかったそうです。


 この件については三週間ほど前、ユーニスから対応に注意するように連絡が入っていました。

 近いうちにソウタ様から、このような提案があるかもしれないこと。

 ソウタ様が本気で武器を作ると魔王が使っていた盾でもあっさり真っ二つにするほど切れ味が良くなるので、何かプレゼントしたいと言われても常識の範囲に収まるものをリクエストすること。

 冗談みたいな話ですが、マーガレット様にプレゼントした剣がそれだけすごい性能だったのでしょう。


 ルビィさんやオニキスさんたちが進化したり、ソウタ様が木の彫刻に夢中になったり、ダイヤモンドランクに認定されて顔見せに行ったりと、いろいろあって私も忘れかけていたのですが、毎日の生活が落ち着いてきて、新しいものを作りたくなったソウタ様が話を思い出されたようです。


 ちなみに、私より先に話を聞いたユーニスは、魔法の効力を高める指輪をリクエストしていました。

 プレゼントされたミスリル製の指輪には赤い魔水晶が付いていて、これを使って魔法を使うと必要な魔力が半分になり、威力は倍になるそうです。

 魔力の消費を抑える指輪はそれほど珍しくありません。

 魔法の威力を高める指輪は珍しいですが、コネと資金さえ有れば手に入らないことはないでしょう。

 ソウタ様が作った指輪は二つの効果を同時に備えていて、どちらの効果もかなりレベルが高いのですが……。ぎりぎり、常識の範囲に収まっていると言えるでしょうか?


 アラベスのリクエストは魔法剣の威力を高めてくれる剣でした。

 リクエストを受けてソウタ様が作った剣は、見た目はそれまでアラベスが使っていた剣とよく似ていますが素材がミスリルになっていて、柄の部分に青い魔水晶が付いています。

 事前に魔水晶に魔力を籠めておくことで自分の魔力を消費せずに、即座に魔法剣を発動できるそうです。同時に魔法剣の威力も上げてくれる、と……。

 受け取ったアラベスは素直に感動していましたが、これは常識の範囲に収まっているのでしょうか?

 試し斬りしているところを私も見せてもらいましたが、鉄の盾をあっさり真っ二つにしていました。

 ……横に居たマーガレット様が微笑んでいらしたので、これぐらいは想定の範囲内なのでしょう。


 どんな武器が良いのかソウタ様から質問されて、私は扱いやすいサイズの短剣をお願いしました。

 お仕えしている主に話すようなことではないのですが、メイド服姿の時、私は服の下の目立たない位置に二本の短剣を装備しています。

 屋敷を出て普通の服装で主のお供をする時は、一本は腰の後ろに、一本はポーチに入れて持ち歩きます。

 剣を扱っているところを見たいとソウタ様からお願いされてアラベスに相手をしてもらいましたが、まだまだ腕はなまってないようです。

 もちろん、私の出番など無ければその方が良いのですが……。



 そして今日。ソウタ様から頂いた短剣は二本セットになっていて、片方の柄には赤い魔水晶が、もう片方の柄には青い魔水晶が付いていました。

 赤い方は魔法の威力を高める効果がある?

 青い方に魔力を籠めると剣の切れ味が良くなる?

 せっかく二本あるのだから二つの効果を入れてみたと、ソウタ様は楽しそうに説明してくれました。


 こんなことを思いつくのはソウタ様だけでしょう。そして、こんなものを実際に作れるのもソウタ様だけだと思います。

 ミスリル製の短剣は何年も使い込んだ物のように、私の手にぴったり馴染みました。

 軽く試してみたのですが、魔力を使わなくても恐ろしいほどよく切れます。

 その上、多少の刃こぼれなら勝手に治るそうです。


 二本の短剣には他にも特殊な機能が秘められていました。

 手に持って願うだけで、可愛いアクセサリーに変わるのです!

 ……日記を書きながら試してみましたが、夢ではなかったようです。

 四十センチほどの短剣が、一瞬で小指の先ほどのサイズに変化しました。

 このサイズの時は刃がなくなって、肌や物を傷つけないのですね。

 ポケットに忍ばせても良いし、ペンダントにしても良いと。


 ……こんなにすごい物を、私が頂いても良いのでしょうか?

 この剣に恥じぬよう、これからも専属メイドとしてがんばります。



◯10月9日(火曜日)

 今日もまた、不思議な事件が起きました。


 昼食を終えて午後の散歩に出かけたソウタ様。

 アラベスを連れて屋敷を出るところまではいつも通りだったのですが、帰ってきたソウタ様は何かに興奮しているような、妙に疲れているような、複雑な表情を浮かべていました。


 いつもと違う様子に気付いたのは私だけではなかったようです。

 午後のお茶会の時間。マーガレット様が質問して、何が起きたのかソウタ様から詳しく説明してもらいました。


 ……屋敷の横の森で、白の女神がソウタ様を待っていた?

 ルビィさんやトパーズさんやオニキスさんを女神に紹介した?

 その場でお題を出してもらって、粘土の扱い方を見てもらった?


 白の女神が春の女神や秋の女神のお母さんだから、最初は緊張したこと。

 パートナーを紹介して打ち解けて、粘土の話で盛り上がったこと。

 変わったお題も無事にこなして、女神から褒めてもらったこと。

 無理を言ったお礼にと、珍しい苗木の造り方を教えてもらったこと。

 ソウタ様は楽しそうに話してくださいましたが……。ソウタ様を詳しく知らない人が聞いたら、とても信じられない話でしょう。



 白の女神は全ての生命の母。

 原初の女神とも呼ばれていて、この星に命をもたらした存在です。

 全ての大陸に生物が広まるのを見届けて、あとは四季の女神に任せて他の世界に旅立ったと、祖母から聞いた覚えがありますが……。

 神話の中心となる存在が、屋敷の横の森に居た?

 一年前の私なら、そんなことは有り得ないと切って捨てたでしょう。

 ですが私は千年闇の森で、空から降りてくる天使を見ました。

 妖魔の森では、光と共に現れた豊穣の女神を目にしました。


 一緒に散歩に行っていたアラベスによると、森の奥の広場で女性の姿を目にした瞬間、身体が勝手に膝を突き、頭を上げることも声を出すこともできなくなったそうです。

 耳に入ってくる音は心地良い音楽のように聞こえ、ソウタ様から声をかけられるまで、周りで何が起きているのか理解できなかった、と。


 妖魔の森で同じような経験をした私にはわかります。

 側に居るだけで感じる、生命としての格の違い。

 心の奥底から自然と湧き出る畏敬の念。

 ソウタ様やマルーン様は普通に会話していましたが、おそらく、あの二人は女神様に慣れているのでしょう。

 ……女神様に慣れるなんて、有り得るのでしょうか?



 話が盛り上がったあとで、ソウタ様は白の女神と一つ約束をしたそうです。

 ただ、約束をしたことは覚えているけど、その内容を思い出せないと。

 その場にいたルビィさんやリンドウさんにも聞いてみたけど、はっきりしたことは誰も覚えて無かったと、不思議そうに首をひねっていました。

 マーガレット様の推測では、『必要な場面で効力を発揮する、女神との契約が結ばれたのではないか?』とのことでしたが……。それなら今から心配しても仕方がないと、ソウタ様は納得されたようです。

 いつものように工作室に戻って、夕飯の時間になるまで何かを作っておられました。


 ソウタ様にとって白の女神と会ったことは、知り合いの女性のお母さんと会ったのと同じぐらいの出来事のようです。

 ……やはり、一番不思議なのはソウタ様ですね。


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