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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十六章 ダイヤモンドランク
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9 長老会

 ソウタ君のお世話をユーニスたちに任せて、私は長老会のメンバーと一緒に円卓の間へと戻った。

 本音で言うと、長老会なんて放っておいてソウタ君と一緒にご飯を食べに行きたいところだけど、今日は面倒な通達を一気に終わらせる良い機会だ。

 このチャンスを逃してあとで時間を取られる方が、やっかいなことが起きる可能性が高い。

 彼がやることは予測が難しいから——


「マルーン様。長老会からの報告はあとでパーカー殿に送るので、今日はソウタ殿について話を聞かせてもらえないでしょうか?」

「そうね……。彼はバラギアン王国での活動が多かったから、貴方達には詳しい情報が届いていないでしょう。ですから、知っておいた方が良いと思われる事実を説明しておきます」


 突然動き出したガーディアンを、四体まとめて粉砕したこと。

 魔族大戦時代から彷徨っていたアイアンゴーレムを倒して、千年闇の森を解放したこと。

 天使族が使っているのを見て、転送魔法を覚えたこと。

 女神に会って、転送魔法の使用を直接許可してもらったこと。

 妖魔の森に現れた暴走精霊を倒すために、力を貸してもらったこと。


「レイラ。あなたなら、ソウタ君を見て何かに気付いたんじゃないの?」

 私が声をかけたのはオレンジ色の髪が特徴的な人間の女性。

 彼女は何千人もの観客を魅了した歌手であり、踊り子でもあり、その筋では有名な占い師でもある。

「はい……。ソウタ殿が付けているのは本物の女神の指輪です。そして、彼からは女神の加護が感じられました。女神の加護を授けられた人なんて、マルーン様だけだと思っていたのですが……」

「ソウタ君の腕前は、女神から仕事を依頼されるレベルよ。気に入られて加護を授けられても、特に不思議はないでしょう」


「マルーン様。妖魔の森で暴れていた精霊を倒したというのは本当ですか?」

 小さく手を挙げて丸テーブルの奥の方から声をかけてきたのは、ラクイラという名前のエルフの女性。

 上級精霊をも使役する精霊使いで、並ぶ者が居ないほどの弓の達人。

 本人も知らないと思うが、私の一部であるマーガレットと遠い親戚に当たる血筋だったりもする。

「本当よ。……最後のとどめこそ私が刺したけど、ソウタ君がいなかったら間違いなく負けてたわね」

「と言うことは、妖魔の森が元の姿を取り戻すと……?」

「そういうことになるわね。もちろん、時間はかかるでしょうけど」

「あの森に帰るのが、村に伝わる一族の悲願。まさか私が生きている間に、このような話を聞けるとは! マルーン様とソウタ殿に、どのようなお礼をすれば良いのでしょう?」

 頬を赤らめて興奮している姿が可愛い。

 今にも椅子から立ち上がりそうな勢いだ。

「落ち着きなさい、ラクイラ。今は何もしなくて良いわ。私はただ、暴れていた精霊と戦っただけだし、ソウタ君は私を手伝ってくれただけなんだから」

「そんな、戦っただけだなんて……」

「彼は目立つことを好まない性格だし、私も今は英雄として行動するつもりはありません。……お礼を考えている暇があったら、いざという時に彼の力になれるよう、技を磨いておきなさい」


「それはつまり、さらに大きな事件がこれから起きると……。そう、マルーン様は予測されているのでしょうか?」

 斜め前の席から口を挟んできたのは魔法使い(ソーサーラー)のマヌエル。

 長い白髪にふさふさの白髭が目立つ、人間の男だ。

 すぐには思い出せないほど長い間、東の長老会で代表を務めている。

「その可能性が高いと思っているわ。信じられないほど不思議な事件……。私でも力になれるかどうかわからない規模の事件が、近いうちに起きるでしょう」

「マルーン様でも対応できないとなると、それこそ古龍を怒らせるとか、女神に嫌われるレベルの話では?」

「良いことを言うわね、マヌエル。その、古龍を怒らせるというのが正解かもしれないわよ」

「冗談のつもりで言ったのですが……。ソウタ殿が関係してくると、冗談が冗談でなくなるのですね」


「カッフェル。あなたはソウタ君の力を体感して、どう思ったのかしら?」

 円卓の間に帰ってくるまでの間、おぼつかない足元で今にも倒れてしまいそうな様子だったカッフェルが、今は生き生きとした表情を浮かべている。

 ……肌に艶が戻った? まるで、何十歳も若返ったかのよう。

「鉄の巨人の一撃を受けて、私は心臓が凍り付くのを感じました。これまでの人生が脳裏をよぎり、魂が肉体を離れて天へと昇ろうとした瞬間、聖なる炎に包まれて……。気が付いた時には、自分の足で立っていたのです」

「なんだかとんでもない体験をしたみたいだけど、それもソウタ君の力を疑った結果だから。諦めて受け入れなさい」

「今ならわかります。私が愚かだったのだと。あの鉄の巨人は破壊神と呼ばれるのがふさわしい存在で、火の鳥は本物のフェニックスでした。そんな相手の怒りを買っておいて、こうして生きているのはまさに奇跡……。これも全て、ソウタ殿の慈悲の心のおかげでしょう」

「念のために補足しておくけど、ソウタ君が従えているビーストやゴーレムは二体だけじゃないわよ。その中でも、私でも勝てないような相手が彼を守護しているから……。間違っても、手を出したりしないように」

「「「はっ!」」」

 返事は良いけど長老会のメンバーには、何を思い上がったのか私の寝首を掻こうとした者が居たりする。

 あの時は面白かったから赦したけど、ソウタ君が相手では……。

 もっとはっきり言っておくべき?

 それとも、そんな馬鹿はヒイラギさんに切り捨てられても仕方ないって放置するべきかしら?


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