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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十六章 ダイヤモンドランク
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8 顔見せ(後編)

 隊長らしき人に先導されて要塞に入った。

 石を積んで作られた、頑丈そうな壁。

 どこまで進んでも、装飾品らしき物が一つも無い。

 階段を上がり二階の廊下を進むと、奥に大きな扉が見えてきた。

「あなたたちは外で待っているように」

「はっ」

 マルーンの声を受けて、ユーニスとアラベスとマイヤーが足を止める。

 ここから先は、僕とマルーンしか入れないようだ。


「マルーン様が到着されました」

 先導してくれた隊長らしき人が扉を開けてくれた。

 どこかの会社の会議室のような雰囲気の部屋。

 部屋の中央に大きな丸テーブルが置かれていて、いくつもの椅子がテーブルを取り囲んでいる。

 ……良く似た服を着ているのは制服かな?

 男性、女性、若者、老人、魔族、人間、エルフ、ドワーフ、獣人……。

 椅子の横に種族も性別も体格もバラバラな人が立っているが、全員が青を基調としたゆったりとしたサイズの服に身を包んでいる。

 普通の服の上にローブを羽織ってる感じか。


「お久しぶりです、マルーン様。再び会える日を楽しみにしておりました」

「あなたは相変わらずね。長老会に変化はないかしら?」

 白くて長い髪。白くて立派な髭。手に持っている木の杖。

 部屋に入ったマルーンに、魔法使い(ソーサーラー)っぽい老人が話しかけてくる。

「ここ数年はメンバーが欠けることもなく、すっかり落ち着いています」

「それは良かったわ」

 ざっと数えて、丸テーブルの周りに十六個の椅子があった。

 一つだけ横に人がいない立派な椅子は、マルーンの席かな?


 長老会って聞いてすごく年上の人の集まりを想像してたんだけど、それほどでもないようだ。

 いかにも歳を取っているように見える人は半分ぐらいで、中には若くて綺麗な女性や、僕とそんなに変わらないように見える男性も居る。

 もちろん、実際の年齢はわからないけど。

 見た目にはバラバラな人たちだけど、眼光の鋭さは共通してるっぽい。

 ……単純に、僕のことが気になってるだけだろうか?

 伝説の英雄が普通の少年にしか見えない人を連れてきたら、こんな目で見られるのも当然かな……。

「ふみゃあぁ〜」

 ずっと抱っこされたままになっている白猫が、小さなあくびをした。

 こんな状況でも、ルビィはいつも通りだね。


「マルーン様。本日はどのような用件で来られたのでしょうか? まさか我々の顔を見るためだけに、ロック鳥を呼び寄せたとも思えませんが」

「今日はね、彼を貴方達に紹介するために来たのよ。……自己紹介して」

 横に立っていたマルーンが優しく背中を押して、僕を前に出す。

「えっ? えっと……。四ヶ月ほど前にこの世界に来た、天城(あまぎ)創多(そうた)です。よろしくお願いします」

「私がソウタ君をダイヤモンドランクに認定しました。これから、パートナーとしていろいろ手伝ってもらう予定です。……異論のある人は居ないわね?」

 静まりかえった室内をマルーンがゆっくり見回すと、一人の男性がすっと手を挙げた。

 年の頃は四十代後半ぐらい。

 日焼けした肌。太い首。筋肉の浮き出た腕。

 見た目は人間で、身体を動かす系の職業かな?

「……何かしら? カッフェル」

「英雄の決定に口を挟むつもりはありませんが、せめて、その少年にどのような力があるのか教えてもらえませんか?」

「良いでしょう。この部屋は狭すぎるから、全員外に出なさい」

「……えっ?」


         ☆


 マルーンに連れられて、再びグラウンドに戻る。

 部屋の外で待ってたのかな?

 いつの間にか、ユーニスたちも合流していた。


「せっかくだから、あなたに相手になってもらうわよ。カッフェル」

「承知しました。……最初から全力で行かせてもらいますよ」

 カッフェルと呼ばれた男性がグラウンドの中央でしゃがみ込み、地面に両手を突く。

「アースボディ……」

「ああ見えて彼は精霊使い(エレメンタラー)で、その中でも土魔法を得意としているの。今使ったのは土の精霊を身に纏う呪文で、どれだけ攻撃されても地面に触れていれば体力が回復する……。敵に回すとやっかいな相手よ」

 もこもこと地面が盛り上がり、青い服の男を包み込む。

 土の塊が徐々に形を変え、気が付いたときには高さ十メートルほどの人間っぽい形になっていた。


「やっかいな相手だけど、ソウタ君なら問題ないでしょう?」

 僕に声をかけながら、可愛くウインクしてくれるマルーン。

 ここは英雄の顔を潰さないためにも、本気を出すべき?

「それじゃあ……。オニキス!」

「やー!」

 服の上から勾玉に手を当てて、相棒の名前を呼ぶ。

 どうやら、ちゃんと考えが伝わっていたようだ。

 身長三十メートルほどの鉄の巨人が現れた。


「有り得ない……」

「そんな馬鹿な……」

「今、何が起きた……?」

 少し離れたところに居る長老会の面々から、ざわめきが聞こえてくる。

 近くに居るマイヤーやアラベスは余裕の表情を浮かべている。

 ……あれ? マルーンとユーニスまで驚いてる?

 この二人には進化した姿を見せてなかったっけ?


「オニキス。やり過ぎないようにね」

「やー!」

 オニキスが肩に手を回し、背中に付けてあるメイスをつかんだ。

 ……よく見たら、メイスの先の方だけ氷になってる?

 そんなこともできるようになったのか。

「やー!」

 振り下ろしたメイスが土の巨人の頭を砕き、ピタッと止まった。

 そのまま冷気の波が表面を走り、土の塊を凍らせる。

 ……あの中に精霊使いの男の人が居るんだよね? 大丈夫かな?


「ピーゥ‼ ピーゥピーゥ!」

「トパーズ?」

 鳴き声がした方に目を向けると、巨大な火の鳥が飛んできた。

 すーっと僕たちの方に降りてきて、いきなり翼を広げて空中に止まり、凍った土の塊に向けて炎を吐き出す。

 人の形を保っていた土がぼろぼろ崩れ落ち、中から青い服の男が現れた。

 ……本当に大丈夫? やり過ぎてない?

 少しふらふらしてるけど自分の脚で立ってるし、大丈夫そうだな。


「ソウタ君は史上最高の石像使い(ゴーレムマスター)で、同時に最強の野獣使い(ビーストテイマー)でもあるの。……まだ、彼の力を疑う人が居るかしら?」

 心地良い風が吹くグラウンド。

 誰の口からも言葉は出なかった。


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