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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十六章 ダイヤモンドランク
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4 木彫りの熊

 季節が秋に近づいても、僕の生活はそれほど変わらなかった。

 いつものようにご飯を食べて、いつものように散歩をして、いつものように工作室で何かを作る毎日。


 変わったところと言えば、デザートに出てくる果物ぐらい?

 柿とか梨とか栗とか、どれも美味しかった。

 美味しいのは良いんだけど、デザートだけでお腹がいっぱいになりそうなぐらい出てくるから、食べ過ぎに気を付けないと太りそう。


 気分転換や運動不足対策やダイエットを兼ねている午後の散歩。

 ときどきルビィがついてくるのは前からだけど、最近はわざわざ散歩の前に分身して、一匹は僕と一緒に散歩に行って、もう一匹は日当たりの良い場所でお昼寝してるようになった。

 散歩とお昼寝の両立?

 どっちか一つで良い気がするけど、何かこだわりがあるんだろう。

 散歩って言っても、ルビィは抱っこされてるだけのような気もするけど、深い理由があるのかもしれない。


 散歩の途中で妙に魅力的な木を見つけたので、ヒイラギに切ってもらって不要な枝を落としてもらって、オニキスに工作室まで運んでもらった。

 たまには木彫りで大きめの作品に挑戦するのも良いだろう。

 木彫りの場合、あらかじめ木を乾燥させておく必要があるけど、そこはリンドウが魔法でどうにかしてくれた。

 火系統の魔法を使って木材を加熱して、水を生み出す魔法を反転させて水分を抜いたらしい。

 魔法って便利だなぁ。


 彫刻に必要な道具は、女神の土を使って自分で用意した。

 ノコギリで必要なサイズに切り分けて、ノミで大雑把に形を整えて、彫刻刀やカービングナイフで細部を仕上げる。

 どれも良い感じの切れ味で、さくさく作業が進む。

 結局、三日ほどで木彫りの熊が完成した。

 粘土で作るのに比べたら、やっぱり時間がかかるな。


         ☆


 大きな鮭を口に咥えて、のっしのっしと歩いている姿の熊。

 完成した木彫りの熊を眺めていて、閃いた。

 ……これって、動かせるのでは?

 これまで、綺麗なお姉さんにもらった白い粘土と、石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんに譲ってもらった灰色の粘土でしか成功したことがないけど、この熊なら動かせそうな気がする。

 失敗しても何かが減る訳じゃないし、やるだけやってみても良いかな?

「それじゃあ……。仮初めの石像(テンポラリゴーレム)!」

 高さ三十センチほどの木彫りの熊に手をかざし、呪文を唱えた。


「あっ、動いた」

「みゃあっ‼」

 木彫りの熊が身体を起こし、鮭を両手で抱えて机の上に座り込む。

 誰が作ったのか理解しているのかな?

 つぶらな瞳で僕の顔を見上げている。

 机の隅の方でひなたぼっこしていたルビィが、机から落ちそうなほどびっくりしていた。


「ちょっとさわるよ……。やっぱり、元の素材のままなんだね」

「くぅぅ〜」

 頭を優しく撫でてやると、木彫りの熊が気持ちよさそうに目を細めた。

 丸々とした身体に丸っこい小さな耳。

 ノミで彫った跡が残っている肌。

 白い粘土で造ったときは僕のイメージにあわせて素材が変化して、毛皮でも羽でも鱗でも完全に再現されるけど、木で造ったゴーレムは動けるようになっても木のままだ。

 灰色の粘土でも素材が大きく変化することはなかったから、あれは白い粘土の力なんだろう。


「……その鮭を食べるの?」

 お座りしたまま、木彫りの熊が頭を横に振った。

「それじゃあ、持ち歩いてるだけなのかな?」

 今度はゆっくり縦に頭を振る。

 意思疎通できているのは間違いなさそうだ。

 この辺りは白い粘土でも灰色の粘土でも木材でも、そんなに変わらないみたいだな。

「ちょっと、鮭を貸してもらえる?」

 熊に向けて手を出すと、素直に鮭を貸してくれた。

 僕の手の上で、ぴちぴち跳ねている木彫りの鮭。

 彫刻刀で細かいところまで作り込んだのが良かったのかな?

 背ビレや胸ビレの動きも本物の魚っぽい。

 熊の胸元と一体になってて手を入れられなかったところまで、僕が彫ったみたいになってるのが不思議だ。

 ……これは、いろいろ実験してみるべきか?


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