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4 やりたいこと

 冬の城に用意された豪華なスイートルーム。

 寝るには早い時間だけど、リビングからベッドルームへと移動する。


 ルビィも疲れてたのかな?

 僕の腕からぴょんっと飛び出して枕の横でくるりと丸まり、早くも寝る姿勢になっている。

 いつものメイドさんに用意してもらったタオルを軽く畳んでサイドテーブルに置くと、雀サイズのトパーズがそこに降りて、クチバシで細部を整えた。

「二人とも、今日もいろいろとありがとうね」

「ふみゃあぁぁ〜」

「ピーゥピーゥ!」

 枕元からは眠そうな鳴き声が、サイドテーブルからは元気な声が返ってくる。

「もちろん、オニキスやリンドウやヒイラギたちにも感謝してるよ」

『マスターがご無事で何よりです。どうぞ、ごゆっくりお休みください』

「そうだね。今日は本当にいろいろあったし……。早めに寝ようか」

 キングサイズのベッドに上がり、厚手の毛布に潜り込む。

 枕に頭を乗せて目をつむると、朝からの出来事が走馬灯のように蘇った。



 ……そもそも、マーガレットに剣を渡したのがきっかけだっけ。

 ヒイラギとマーガレットの練習がエスカレートして、屋敷の裏庭では危ないって話になって、妖魔の森に行くことになった。

 森の奥で練習の続きがはじまって……。いきなり地下から暴走した精霊が出てきたんだよな。今考えても意味がわからないけど。

 かなり苦戦したけどマルーンがサラマンダーにとどめを刺して、これで終わったと思ったら、大精霊が二人も現れて、豊穣の女神が降臨して、さらにびっくりさせられた。

 大精霊はルビィのことを誤解してる気がするけど、いつか、ちゃんと説明できる日が来るのかな?

 女神の歌もすごかったな……。森を癒やしたのはちょっとしたサービスだって言ってたけど、あれはサービスの範囲を超えてる気がする。


 冬の城に帰って、パーカーさんからお礼を言われたのにも驚いたな。

 城で働いている人たちは、遠視の魔術具経由で僕たちとサラマンダーとの戦いを見ていたらしい。

「お嬢様を助けていただいて、ありがとうございました」

 こんな内容の言葉を何回聞いたんだろう?

 パーカーさんだけでなく、若い執事さんとかメイドさんとか、いろんな人からお礼を言われた。

 前からそうじゃないかと思ってたけど、マルーンは城で働いている人たちに愛されてるなぁ……。

 横にマルーンがいるのに僕にお礼を言うのはどうかと思ったけど、マルーンも喜んでるみたいだったから問題ないんだろう。たぶん。


 いつもと同じように対応してくれたのはユーニスぐらいかな?

 夕飯の準備ができるまで質問攻めにされて……。これはこれで大変だった。

 僕を見つめるアラベスの視線がいつもの何倍もキラキラしてたけど、そこはスルーしておいた。

 夕飯は晩餐会と言うより宴会って感じだったな。

 ルビィは肉を多めに出してもらってご機嫌だったし、雀サイズのトパーズは脱穀前の米を美味しそうに食べてたし、僕は久しぶりに食べたおにぎりで涙が出そうなほど感動した。

 ……そう言えば、こっちの世界には焼肉定食があるんだっけ。

 ユーニスやアラベスに詳しい話を聞いて、焼肉を食べに行くのも良いかもしれない。



 こうして一日を振り返ってみると……。今日は本当にいろいろあったなぁ。

 その中でも、いきなり巨大なサラマンダーと戦うことになったのは、ちょっとおかしい気がする。

 これがゲームやアニメだったら、調整を間違えてるのでは?

 僕なんか、粘土を触るのが好きなだけの一般人だよ?

 例えるなら、最初の村の村人がラスボスとの戦いに巻き込まれた感じ。

 ……やっぱり、あの精霊はマルーンとの因縁が強くて、その関係で地上に出てきたんだろうな。

 たまたま僕はマルーンの側に居て、巻き込まれたというか、お手伝いすることになっただけで。


 そう考えるといろんなことがすっきりする。

 ちょっと前にバラギアン王国で依頼を受けたときも、僕は離れた場所から見てただけで、死霊術師(ネクロマンサー)やアンデッドの相手をしたのはマルーンだった。

 ……マルーンの後継者になるのは無理だとしても、お手伝いぐらいなら僕にもできるんじゃないかな?

 正確に言うと、僕の造ったルビィやトパーズやオニキスたちに力を貸してもらって、伝説の英雄が困ったときに助けるお仕事。

 これなら、粘土を触りながら毎日のんびり暮らしてる僕にぴったりの役割のような気がする。

 マルーンなら判断を間違えることもないだろうし——


「ふみゃあぁぁ〜」

 力が抜けるような鳴き声が耳元から聞こえてきて、同時に柔らかい肉球で頬をポンポンとたたかれる。

 ゆっくり目を開くと、僕の顔を覗き込んでいるルビィと目があった。

「あー、うん……。そろそろ、ちゃんと寝るから……」


 ……優しく頬ずりしてくるルビィは、なんだかお母さんみたいだ。

 そんなことを考えながら、僕は眠りに落ちた。


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