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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十四章 穏やかな日々(?)
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5 懐刀/ヒイラギ

 動きやすさを優先して、薄くて軽い鎧を作ってたんだけど、途中で強度が不安になったのでアラベスに試してもらった。


 上半身用のパーツを人間サイズにして、素材をミスリルに変えて、動かないように固定して練習用の木剣で殴ってもらう。

 ……さすがミスリル。傷一つついてない。

 意地になったアラベスが自分の剣をとってきて、最後は魔法剣まで使って斬りかかったけど、それでもうっすらと跡が残った程度。

 これなら、この薄さで問題なさそうだ。


 不安が払拭されたので、鎧作りの作業を再開。

 リンドウが魔法特化型なので、こっちは物理の攻撃と防御に特化させよう。

 魔法は使えないけど、戦いに便利な機能はあらかじめ組み込んで……。


 重さを制御する機能。

 小さい傷は自動で治る機能。

 視覚に頼らないで周囲を認識する機能。

 スピードで負けないように加速して動ける機能。

 ……これぐらいあれば十分かな?

 剣の技については、戦った相手や戦っているところを見た相手から学習してもらうってことで。



 武器は普通のロングソード。

 片手でも両手でも問題なく扱えるサイズだ。

 全身鎧の時点で守りが強いんだから、盾は要らないだろう。


 鎧に合わせてロングソードもミスリルにしてみた。

 午後の散歩に持っていって、枝で殴って手がしびれた枯れ木に再戦。

 ……それなりに太い木があっさり真っ二つになった。

 散歩に付き合ってくれたアラベスが顔を青くしてた。

 これがゲームの世界なら、かなりのチート武器だと思う。


 自分でこの剣を持って戦うことはないと思うけど、それにしても、ちょっと危なすぎるかもしれない。

 いろいろ考えて、あえて刃を潰しておいた。

 ロングソードの形をした打撃武器だな。


 そして、本気で“斬る”って思った時だけ刃が現れる機能を追加。

 ……ちょっと、設定が中二病っぽい?

 ついでに、刃が出た時は剣が光るようにしようか。

 異世界ならこれぐらい普通だよね? 許されるよね?


         ☆


仮初めの石像(テンポラリゴーレム)!」

 ガントレットが難しかったけど、三日ほどで全てのパーツが完成。

 石像使い(ゴーレムマスター)のおじいちゃんの話を思い出して、まずは仮初めの石像(テンポラリゴーレム)で動かしてみた。


「問題なさそうだね……。ちょっと歩いてみて」

 工作室の机の上を、模型サイズの全身鎧が歩いている。

 ……中に誰も入ってない鎧が歩いてるのって、ホラー映画っぽい?

 人が入ってるのかどうかは外から見てわからないし、気にしなくて良いか。


「動きやすさは問題ない? ちゃんと剣を抜ける?」

 左の腰に手を回し、鎧がすっと剣を抜いた。

 そのまま動きを確かめるように、右に左に剣を振る。

 ……あれっ? もう、剣の扱いに慣れてる?

 僕がアニメやゲームで見た動きを再現してるのかな?

 動きが速すぎて、剣が何本もあるように見えるんだけど。

 まぁ、強くて困ることは無いだろうし、これはこれで良いか。


「みゃあみゃあっ!」

「あーっ! ちょっと待って、ルビィ。まだ、テストしたいことがあるから」

 新しい遊び相手だと思ったのかな?

 鎧にじゃれつこうとしたルビィを左手で抱いて、右手で鎧を床に降ろす。


「人間サイズになれる? ……おおっ! これは……。かっこいいな……」

 工作室の景色がぐにゃりと歪み、人間サイズの全身鎧が現れた。

 銀色に輝く身体。僕を一回り大きくしたぐらいのサイズ。

 模型サイズで動いてた時は可愛かったけど、等身大(?)になると妙な迫力というか、凄みのようなものを感じる。

 足の先から頭のてっぺんまで、自分で作ったはずなんだけど。


「このサイズで剣のテストは……あとで、外でやった方が良いか。次はナイフに変身してみて」

 開いた右手を前に出して声をかけた。

 再び景色がぐにゃりと歪み、銀色の鎧が姿を消し、革のケースに収まったナイフが僕の手に現れる。


「うんうん。ここまでは予定通りだね」

「みゃあ〜」

 オニキスを勾玉にして身に着けているように、新しい鎧はナイフとして持ち歩けるようにしてみた。デザインの元になったのは、こっちの世界に来た時、リュックに入っていたナイフだ。

 手元に一つあると便利だろうし、これなら依頼を受けて出かける時に、身に着けてても自然だろう。



 ……そして、今回の課題はここから。

 左手で抱っこしていたルビィを机に置いて、椅子から立った。

「それじゃあ、最後のテストを……。装着!」

 一瞬だけ視界が暗くなって、すぐ元に戻る。

 微妙に身体が重くなった感覚。

 視線を降ろすと僕の手が、銀色のガントレットになっていた。

 正確に言うと、普通の服の上から全身鎧を身に着けた状態なんだけど、気分的には自分が鎧になったようだ。


 指を開いたり閉じたりして、自由に動くのを確認する。

 腕を振り回したり軽く歩いてみたりしたけど、金属製の鎧とは思えないほど動きやすい。良い感じに仕上がったな。

 ミスリルにしたのが良かったのかな? 重さもほとんど感じない。

 ヘルメットを付けてても、周りが見えるのは便利だな。

 そうなるように作ったんだけど、うまく機能しているようだ。


 思い描いていたイメージは、小さい頃に好きだった特撮ヒーロー。

 パーツを分解して、一個ずつ身に着けても良かったんだけど……。

 一瞬で着られる方が便利だよね?

 魔法の鎧なら、これぐらいできて普通だよね?

 この機能を付けた本当の理由は、誰かに着るのを手伝ってもらうのが恥ずかしかっただけだったりするけど。

 ピンチになったら鎧を着て、本当の力を発揮。

 僕が戦うことはないと思うけど、用意しておいて損はないだろう。

 ……単純に、作りたかったから作っただけとも言える。


「問題なさそうだね。それじゃあ、人形サイズに戻って」

 人形サイズに変化した鎧を机にのせて、そっと手をかざす。

「これで完成ってことで……。石像創造(クリエイトゴーレム)!」

 銀色の鎧がピカッと光った。

 表情は変わらないはずなのに、なんだか嬉しそうだ。


「ずっと悩んでたんだけど……決めた。お前の名前はヒイラギだよ。何かあった時は、僕たちを守ってね」

 (ひいらぎ)は、おじいちゃんの家に植えてあった木の名前だ。

 白くて可憐な花と、とげとげしてて当たると痛い葉っぱ。

 魔除けになるって聞いたし、守りの要にふさわしい名前だと思う。


 名前を気に入ってくれたのかな?

 人形サイズの鎧が小さく頷いた。



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