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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十四章 穏やかな日々(?)
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3 穏やかな日々(前編)

 朝食を終えた僕は、いつものようにルビィを抱っこして工作室へ。

 綺麗なお姉さんに起こされて、びっくりした影響かな?

 机に向かっても、特にやりたいことが思いつかない。

 こんな日は、ルビィと遊んですごそうか……。


 ——カンッ! カンッカンッ!


 そう思ってたら、窓の外から大きな音が聞こえてきた。

 木と木が激しくぶつかる音。

 ルハンナの街の冒険者ギルドでも、似たような音を聞いたな。

 窓を開けて裏庭に目をやると、アラベスとマーガレットが木剣を手に向き合っていた。


 アラベスの練習にマーガレットが付き合ってるのかな?

 かなり本気でアラベスが打ち込んでいるように見えるけど、マーガレットは余裕の表情で受け止めたり、受け流したりしている。

「……マーガレットの職業は狩人(レンジャー)じゃなかったっけ?」

「ギルドの登録は狩人になっていますが、剣の腕前もすごいですよ」

「うわっ! びっくりした」

 なんとなく疑問を口にしたら、横から答えが返ってきた。

 いつの間に入ってきたのだろう? 気配を殺してたの?

 すぐ横にユーニスが立っていた。


「二人が裏庭で練習すると聞いて、ソウタさんが驚かないように説明しようと思って来たのですが……。もうはじまっているようですね」

「どちらかというと、ユーニスに驚かされたんだけど」

「今日ソウタさんを驚かせたのは、私が最初ではないのでしょう? マイヤーから聞きましたよ」

「あー、うん……。朝からいろいろあって……」

 水色の瞳。ピンクの唇。透き通るように白い肌。

 爽やかな光に照らされて、キラキラと輝く金色の髪。

 ユーニスの横顔を目にした瞬間、その美しさにも驚いてしまった。


「クスッ……」

 エルフのお姉さんの瞳がキラリと光った。

 前にもこの表情を見た覚えがある。なんだか嫌な予感がする。

「女神さまに起こされて驚いた話と……。他にもいろいろ、ソウタさんに聞きたいことが溜まっていたんです。良い機会ですから、今から質問させてもらっても良いですか?」

 話をしている間にもユーニスは、どこからともなくペンとノートを取り出していた。

「……わかりました。何でも聞いて下さい」

「では、女神の眷族の話から——」


         ☆


 春の女神から眷族の女神を紹介された話。

 秋の女神に依頼されて女神像を造った話。

 日食の魔法をリンドウが解呪した話。

 女神像に秋の女神が降臨して、僕を起こしに来た話。

 ユーニスにはいろいろとお世話になってるし、どこまで話して良いのかわからなかったので、全ての質問に素直に答えておいた。


 ついでに、僕からはブアウゾンビについて質問してみた。

 ブアウゾンビは生きている間に身に着けた技や魔法を使えるゾンビ。

 ユーニスの知識によると、死んでから一定の時間内に儀式を行わないと、ブアウゾンビは作れないそうだ。

 今回、死霊術師(ネクロマンサー)が何千年も前の遺体からブアウゾンビを作った方法には、まだ知られていない秘密があるはず。

 先代魔王の調査を楽しみにしている、と。

 こういう話をしている時のユーニスは、本当に楽しそうだなぁ。


 話をしながらバラギアン王国でやったことを振り返ってみると……。

 あれ? 僕がやったのは、リンドウに解呪の合図を出しただけ?

 もっと、こう……。冒険者らしい働きをするべき?

 このままの生活で良いのか、ちょっと気になる。



 話をしていたところにマイヤーが呼びに来たので、ユーニスと一緒にダイニングルームへ。

 昼ご飯はステーキだった。

 焼き加減は完璧で付け合わせの野菜やサラダも美味しかったんだけど、ちょっと量が多かったかな。

 お腹いっぱいになったので、腹ごなしを兼ねて午後の散歩。

 今日はアラベスが散歩に付き合ってくれた。


 のんびり森を歩きながら、屋敷の裏でやっていた練習について聞いてみた。

 職業こそ狩人になっているが、剣も魔法もマーガレットの方がアラベスよりずっと上手で実戦慣れしているそうだ。

 腕に差があるのに練習に付き合ってもらえるのはお師匠様のおかげだと、何故か感謝されてしまった。

 僕は何もしてないんだけど……。


 良い感じの太さと長さの枯れ枝を見つけて、自分でも振ってみた。

 これだけで、強くなったような気がするから不思議だ。

 根が単純に出来てるのかな?


 アラベスに聞いたところ、単純な素振りの稽古はやってないらしい。

 しっかり目標を見定めて、狙ったところに剣を当てるのが大事だと。

 そう言われて、枯れて倒れそうになっている太い木を枝で殴ってみた。

 ……ちゃんと狙ったところに当たったけど、思いっきり手がしびれて枝を落としてしまった。

 これがゲームの世界なら、冒険者になる前の村人って感じ?

 戦闘能力ゼロ……。剣の練習の前に身体を鍛えるべきか?


 ユーニスと二人っきりになると今でも少し緊張するけど、アラベスと二人で森を歩くのは気にならない。

 どことなくアラベスに、男友達っぽい雰囲気があるから?

 師匠と弟子っていう関係に慣れてきたのかな?

 僕が気を使わなくて良いように、わざとアラベスが話しやすい雰囲気を出してくれてる気もする。

 そのうちアラベスにも、ちゃんとお礼をしないといけないな。



 いつもより遠くまで散歩をして、屋敷に戻ってきた。

 お茶の準備が出来ているそうなので、そのまま喫茶室へ。

 今日は生クリームたっぷりのケーキ?

 マイヤーが気合いを入れて作ったの?

 僕が朝から疲れてたから、好きなおやつを作ってくれたんだね。

 すごく美味しそう。これは、気合いを入れて食べるしかないな。

 ちょっと、量が多い気がするけど……。



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