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伝説の英雄に召喚されたゴーレムマスターの伝説  作者: 三月 北斗
第十四章 穏やかな日々(?)
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2 ある朝の出来事

 私の名前はマイヤー・メイフィールド。ソウタ様の専属メイドです。

 専属メイドとしてこの屋敷で暮らすようになって三ヶ月ほど。

 何度かそれとなく伺ってみたのですが、少なくとも朝食に関しては、ソウタ様は毎日同じメニューが出てくるのを望まれているようです。


 軽くトーストした食パン。しっかり火を通した目玉焼き。

 ボイルしたソーセージ。サラダ。カットした果物。冷たい牛乳。

 サラダに使う野菜は日によって変わりますし、ソーセージがベーコンに変わったりもしますが、これがソウタ様の好まれる朝食です。


 ……何かあったのでしょうか?

 いつもと同じメニューなのに、今朝は食事の進みが遅いようです。

 バラギアン王国から帰ってきて三日ほど経ってますが、今頃になって疲れが出たのでしょうか?

 それとも、ベッドに入った後で何か思いついて、寝る間を惜しんで造っていたのでしょうか?


         ☆


「悪い夢でも見られましたか? 朝からお疲れのようですが」

「あー……。うん。朝からいろいろあってね……」

 状況から理由を察するのも優秀なメイドに必要な能力ですが、ソウタ様の周りでは信じられないような出来事が起きると学習しました。

 時間に余裕がある時は自分で判断せず、素直に聞くのが正解です。

 食後のコーヒーを出しながら、気になったことを聞いてみました。


「寝ていたところを綺麗なお姉さんに起こされたんだよ」

「ソウタ様の寝室に女性の侵入者が⁉ 屋敷に住む者でしょうか?」

 外部からの侵入に備えて、屋敷には夜も見張りをする者が居ます。

 その上、ソウタ様の部屋には侵入者に反応する結界を張ってあります。

 薄く張った結界は、ベテラン冒険者でも気付くのが難しいはずですが……。

 ……まさか、マーガレット様が?


「いや、そうじゃなくて……。秋の女神に依頼されて造った女神の像。マイヤーも知ってるよね?」

「はい。完成した時、私も見せていただきました」

 半日ほどで造ったとは思えないほど、素晴らしい物でした。

 大きな教会に飾られていても、誰も不思議に思わないでしょう。


「あの女神像に女神が降臨して、僕を起こしに来たんだよ」

 コーヒーを飲みながら、少し疲れた口調で答えてくださるソウタ様。

 その返事はいつものように、想定した範囲を超えていました。

「……念のためにお聞きしますが、ソウタ様が見た夢の話ではなくて、実際に起きた出来事なのですよね?」

「工作室の棚に飾ってた像が、今はベッドの横にあるから……。たぶん、夢じゃないと思う」

「ふみゃあぁ〜」

 ルビィさんの鳴き声も、ソウタ様の話を肯定しています。

 後で自分でも確認するつもりですが、これは本当の話なのでしょう。


 修行を積んだ巫女に女神が降臨して人々を助けるお話を、小さかった頃に絵本で読みました。

 大陸の西にある人間の国では有名な話だそうです。

 それと同じような話が、身近で起きるとは……。

 大規模な儀式も無しにそんなことが可能なのでしょうか?


「そういうことでしたか。……それでは、昼食は元気が出るように、ソウタ様のお好きな肉料理に致しましょうか。それとも胃に優しい料理が良いですか?」

「んー……。今は、がっつり肉料理が食べたい気分かな」

「わかりました。料理長に伝えておきますね」

「ありがとう、マイヤー」


         ☆


 “先祖返り”という言葉があります。

 魔族や人間と交わって血が薄くなった悪魔族の中で、私にだけ古い悪魔族の特徴が濃く出ているのは先祖返りが起きた結果だと、前にパーカー様から教えていただきました。

 そして、古い悪魔族は力が強いだけでなく、自分より強い者、自分より優れた者に仕えることを好む傾向にあるそうです。


 ……私がメイドの仕事を選んだことも、マルーン様の城にたどり着いたことも、先祖返りの影響でしょうか?

 はっきりしたことは自分でもわかりません。

 わかりませんが、ソウタ様の専属メイドになれたのは幸運だったと思います。


 異世界から来られたソウタ様。

 失礼ながら、見た目はどこにでも居る普通の人間ですが、そのお力は常識の範疇を遙かに超えています。

 ガーディアンをあっさり倒したオニキスさん。

 私たちを乗せて大空を飛ぶトパーズさん。

 大規模魔法を使いこなすリンドウさん。

 ミルクをおねだりする姿が可愛いルビィさん。

 連れている相棒の方々がとても強いだけでなく、ソウタ様は天使と普通にやりとりして、女神から依頼を受けてきます。

 私の知る限り、そんな人は大陸中を探しても他に居ないはずです。


 元々はマルーン様の命令でソウタ様の専属メイドになりましたが、今では自分の意思で、末永くお仕えしたいと思っています。

 ……本音を言うと、もっと私の料理を食べていただきたいのですが、屋敷で働いている料理人との兼ね合いもあって、あまり機会を増やせないのが不満です。

 ですが、そこは我慢しましょう。

 一番大事なのはソウタ様が、安心して暮らせることです。



 考え事をしながらソウタ様のベッドを整えていると、サイドテーブルに乗っている女神像が目に入りました。

 昨日まで工作室の棚に飾ってあった像です。

 ポーズが変わっているのは気のせいでしょうか?

 ……女神の侵入を検知するには、どのような結界を張れば良いのでしょう?

 ユーニスさんやマルーン様に相談しなければ……。



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