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2 伯爵からの依頼

 冬の城の模型を作って、秋の女神の像を作って、粘土で何か作りたい欲は治まった気がする。

 ……次は何をしよう?

 野良ゴーレム討伐の依頼を受けてから一ヶ月ぐらい経つし、そろそろ真面目に仕事をするべき?

 今度こそ冒険者ギルドに行って、僕でもできそうな依頼を探そうかな?


 マーガレットが帰ってきた日の翌日。

 工作室でルビィを撫でながらそんなことを考えていたところに、アラベスから声を掛けられた。

「お師匠様。冒険者ギルド経由で、バラギアン王国のルハンナ伯爵からメッセージが届きました。依頼したい仕事があるので、至急、城まで来てほしいとのことです」

「メッセージの内容はそれだけ? もうちょっと詳しい話は……」

「これだけです。……どうしましょう? 私の方から詳細を問い合わせてみましょうか?」

「ん〜……。ちょっと考えさせて」


 ちょうど仕事を探そうと思ったタイミングでメッセージが届いたのは、単なる偶然だろう。偶然だよね?

 わざわざ僕の活動を監視して、暇そうなタイミングを狙って依頼を出すようなことを、ルハンナ伯爵がやるとも思えない。

 これが普通の依頼だとして、今わかってることは……。急いで城に来てほしいってことだけか。


 前に野良ゴーレム討伐の依頼を受けた時は帰る途中で体調が悪くなって、ちゃんとした挨拶もせずに帰ったんだよね。

 あの時のことを謝りたいし、伯爵の城に行くのは問題ないだろう。

 仕事の内容がわからないのは不安だけど、詳しい話を聞いて、無理なようならその場で断れば……。

 もしかして、断れないような依頼かな? まぁ、なんとかなるだろう。


「とりあえず、話だけでも聞きに行こうか。至急って言われても今から行くのはさすがに急すぎるから、出発は明日の朝にして……。前と同じようにトパーズに乗せてもらって、向こうに着くのはお昼ぐらいかな?」

「了解しました。その予定で返事を出しておきます」

「アラベスとマイヤーには一緒に来てほしいんだけど大丈夫? 何か予定が入ってたりしない?」

「問題ありません。私もマイヤーもご一緒させていただきます」

 この場にマイヤーは居ないけど、アラベスは確信を持っているようだ。

 アラベスがそこまで言うのなら大丈夫だろう。


「念のため、ユーニスとマーガレットにも一緒に来るか聞いてもらえる? 黙っておいていったら、後で怒られそうな気がするし」

「マーガレット様は確実に同行されると思います。でも、ユーニスは……。そうですね。早めに確かめておきます」

 冬の城や浮島との移動ではずっとリンドウの転送魔法を使ってたし、明日はトパーズに乗せてもらうつもりなんだけど……。

 ユーニスの高所恐怖症は治ったのかな?

 どうしても駄目だったら先に僕たちだけトパーズで移動して、後から転送魔法でユーニスを連れにきても良いか。


         ☆


 翌日の朝。

 熱いシャワーを浴びて、いつもより早めに朝食を済ませて、ロック鳥の姿になったトパーズに乗って出発した。

 メンバーは僕とアラベスとマイヤーとユーニスとマーガレットの五人。

 トパーズが高く舞い上がっても、ユーニスは落ち着いていたけど……。

 こういう時のためにマーガレットにお願いして、高いところが平気な人格を作ってもらったそうだ。


 ……人格を作る?

 ちょっと聞いただけで危なそうなフレーズだけど、どうやら本当に危ない操作らしい。

 禁忌とされている魔法を使ったけど、ちゃんと条件を満たした時だけ発動するように設定しておいたと、マーガレットが自慢げに話してくれた。

 トパーズに乗って、バラギアン王国の南東地方に向かっている途中で。


 ……もっと安全で楽な方法はなかったのかな?

 えっ? 私の魔法は完璧? これはユーニスが望んだこと?

 マーガレットがそこまで言うのなら、問題ないのかな。

 二つ目の人格はユーノスって名前だけど、細かいことは気にしなくて良い?

 いや、そこは気になるから……。

 トパーズに乗ってる間は、ユーノスって呼べば良いんだね?


 上空からの景色を楽しんでくれているみたいだし、ここは素直にユーノスを受け入れておこう。

 なんだか嫌な予感がするけど、気のせいだよね?

 どうして、アラベスとマイヤーは視線を逸らすのかな?

 何か知ってるのなら、早めに教えてほしいんだけど……。



 トパーズに乗って快適な空の旅。

 三時間ちょっとでルハンナの街に到着した。

 コンパスで円を描いたような丸い湖と、中央に残された綺麗な城。

 湖を取り囲むように広がっている、活気あふれる街。

 良い機会なので、ユーノスとマーガレットに上空からの景色を堪能してもらってから、少し離れた森に下りてもらった。


 こんな時のために用意しておいたのが、仮初めの石像(テンポラリゴーレム)のアジサイブラック、アジサイホワイト、アジサイブラウン。

 三体の馬を出して背中に乗って、再び街へと向かう。

 小柄なアジサイブラウンに僕とマーガレットが乗って、普通サイズのアジサイホワイトにアラベスとユーニスが乗って、立派な体格のアジサイブラックにマイヤーが一人で乗って……。

 実際に馬に乗って移動してみると、これはこれで何か違う気がする。


 ユーニスとマーガレットにも馬を用意するべきだった?

 五人も居るのなら馬車にした方が良かった?

 何故か頭がうまく働かないし、屋敷に帰ってからじっくり考えよう。

 決して、マーガレットの前に乗せられてるのが恥ずかしいって話ではないんだけど。後頭部に当たる膨らみが気になるって話でもないんだけど。


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